湖のほとりから。

花と空と心模様を写真と詩と文に託して。

イチョウの木の下の思い出

2019-10-16 18:19:00 | コラム
昨日、今日の肌寒さ
一気に
イチョウの木も色を変えていく

そう言えば
遠い昔のことを思い出す  

あれが
青春の1ページってやつかしら



学校の放課後のこと
言われるままに
自転車の後ろに乗り込む


少し長い
紺色のスカートが邪魔だけど
横乗りしか思い浮かばない


だから
白いシャツの
腰あたりに
手を回すのは
なかなか勇気のいること


けれど
振り落とされないように
最初はシャツの端っこを持ちながら
徐々に身を寄せて
しがみつこうとしてる


あなたの背中と私の胸元の距離が
気にはなるけど
スピードの怖さには
そんなこと
仕方のないことだって
あなたは背中でどう感じてる? 


大胆だなーって思われはしない?


交差点を幾つも超えて
見知らぬ公園ちかくになったとき


『目を閉じて』って言われたけど
この横乗りの怖さの上に
いったいどうしろというの?


自転車を降りても
目を閉じたままでって
言われるがまま
手を引かれて歩き出す


手に伝わる温もりだけでも
私の体温があがりそうなのに
どうしたらいいの?
顔も赤らんでいく


足元の靴底がカサカサだったり
フワフワだったり
きゃーきゃー
声を上げながら


このサプライズであろう出来事を
楽しむことに専念することにしたの


歩みが止まって
持たれていた両手を
捕まえられたまま
くるりと身をひるがえされた


手を離されたと同時に
『目を開けてもいいよ』って。


合図とともに広がる黄色一色の風景に
何事かと
思わず後ろを振り返ったならば
大きな大きなイチョウの木
 

わぁ、大きい木だー


その途端に
大量の黄色の葉っぱが降ってきた


膝ほどまでにすっぽりと
舞い落ちる隙間に見えた、あなたの笑い顔


わたしは『わぁー』って言って
両手を広げたまま
イチョウの葉っぱで覆われた


覚えているのは
そのイチョウの木と


自転車に乗った時に
後ろからみた
あなたの制服のボタンダウンのシャツ

きっと、あれからよね。
男性のシャツの襟元から
肩の線をなどるように見る癖は。


シャツの色
ボタンの色
ボタンホールの色


それと
イチョウの木の黄色い色


そして何より
あなたの微笑んだ顔


高校2年の秋のこと








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