ブリの森づくりプロジェクト  

~森の再生からブリの来るまちへ~  小田原市無尽蔵・環境(エコ)シティ  ブリの森づくりプロジェクト 

ブリはどこへいった?(ブリの回遊様式)

2012-04-17 09:44:42 | ブリ海コーナー

阪地英男・久野正博・梶 達也・青野怜史・福田博文(2010)2.太平洋における成長段階別の回遊様式の把握.(1)年齢別回遊群について.水研センター研報,(30),35−104.
http://www.fra.affrc.go.jp/bulletin/bull/bull30/30-2-1.pdf

 不明の多かった太平洋沿岸のブリの回遊生態が解明されてきました。
本研究によると、相模湾のブリ成魚は太平洋沿岸において遠州灘-四国南西岸回遊群、紀伊水道-薩南回遊群、豊後水道-薩南回遊群に大きく分けられた中の遠州灘-四国南西岸回遊群に属します。また、東北海域と外房との間の未成魚の季節的南北回遊が確認され、成魚になって遠州灘-四国南西岸回遊群に吸収され、再び東北海域に戻ることは少ないと推定されました。なお、ブリ成魚の回遊は年代とともに変化しており、戦前では東北から熊野灘および熊野灘から四国・九州、1960年代では東北から相模湾および相模湾から四国・九州に回遊していたという報告が引用されています。また、根付き群の存在が足摺岬周辺において確認され、3つの異なる回遊群および例外的な回遊群と合わせ、時に回遊群または根付き群の乗換えが起きると考えられたとのことです。

 では、「Fig.2-41. 遠州灘-四国南西岸回遊群に属するブリの回遊様式」を使ってさらに詳細に説明します。なお、放流魚の年齢は、イナダを0歳、ワラサを1歳、80 cm未満のブリを2歳、80 cm以上のブリを3歳以上としたとのことです。
・遠州灘-四国南西岸回遊群の生息範囲である外房から熊野灘の0、1歳は大きな移動はしません。
・2歳の小型個体(東北海域の未成魚が成魚となって)は、熊野灘で産卵しそのまま翌年の冬まで滞留します。
・2歳の大型個体は、2~3月に初めて移動して四国南東岸(室戸岬)で産卵し、その後5~6月頃に遠州灘から外房の元の海域に戻り、3歳の冬まで滞留します。
・3歳の2~3月に再び移動して多くは四国南西岸(足髄岬)で産卵し、その後5~6月頃に元の海域に戻り、4歳の冬まで滞留します。
・4歳の2~3月には四国南西岸(足摺岬)、または薩南で産卵し、また元の海域に戻ります。

 漁獲されたブリに、アーカイバルタグ(記録型標識)を装着して再放流し、再捕獲されたら、記録されたデータを解析し、得られた成果です。照度・水温・水深を記録でき、照度から経度を推定し、水温・水深を人工衛星などの海況情報と照合することにより、ブリの回遊生態が推定されるのです。もちろん照度・水温・水深によって遊泳生態が分かります。アーカイバルタグ(記録型標識)を装着したブリの標識放流の調査状況は三重県水産研究所のHP(http://www.mpstpc.pref.mie.lg.jp/SUI/shigen/buri/buri.htm)で公開されていますので参照ください。神奈川県での調査で2011年11月21~24日ブリ成魚6尾を三崎市城ヶ島沖で放流したとのことです。

 相模湾には戻ってきています。ただし、回遊中に漁獲されることはあります。たとえば、静岡県での調査で2011年3月3日ブリ成魚10尾を伊東市川奈沖で放流し、5尾が再捕獲されています。再捕獲された日時と場所は、2011年3月7日(4日目)伊東市、2011年4月13日(41日目)尾鷲市、2011年4月24日(52日目)室戸市、2011年10月18日(229日目)河津町、2012年3月6日(369日目)室戸市です。4日目に再捕獲されたブリを除くと、半分が漁獲されないで戻ってきて、漁獲できたのはさらにその半分(結果1/4)ということになります。
 そうであってもブリの漁獲がはるかに少ないように思えるのです。
【寄稿:ブリ森サポーター 小貝】