あるマーケティングプロデューサー日記

ビジネスを通じて出会った人々、新しい世界、成功事例などを日々綴っていきたいと思います。

リクルートの同期とポルトガル料理を食らう

2007-09-25 23:45:57 | グルメ
御世話になっているスウェーデン製自転車の輸入販売代理店会社の社長から教えて頂いた、四谷のポルトガル料理店。

なかなか行けずにずっと気になっていたある日、偶然四谷にある会計事務所にアポがあり、終わった後思わず電話してしまいました。

「今四谷駅のそばに来ているのですが、この間教えて頂いたポルトガル料理のお店は、確かこの辺でしたよね?」

「そうそう、上智の前だよ。新宿方面から向かってずっと行くと、左側に確か銀行があるから、その角を左に曲がったあたりだったと思うけど。確かポルトガルの国旗が掛かっているから、それが目印です」

そんな感じでやっと見つけた念願のポルトガル料理のお店、『カーサ・デ・ファド』。日商岩井出身のこの社長がオススメする都内のベスト3に入るお店ですから、一刻も早く行きたくてしょうがありませんでした。

そんな時に、リクルートの同期と久しぶりに飲もうかという話になったので、迷わずこのお店にしたわけです。

前回新大久保のタイ料理『クンメー』の美味しさで同期のNをノックダウンさせた実績のある私は、今回もノックダウンさせる自信はありました(笑)。

Nは今や住宅関連事業部の部長としてノリに乗っており、しかも彼の部下のH君は、私がベンチャー企業でフリーペーパーの編集長していた時の部下でもあります。

そんな偶然の結び付きがある男3人組が盛り上がらないわけがなく、コウイカのイカスミオイル煮やアジのマリネ港町セトゥーバル風、バカリャゥのグリルラガレイロ風など、最高に美味しい料理を次々と注文。

「すいません、クリスティアーノ・ロナウドが好きな料理を下さい」などと無理難題を店員さんにお願いしながらも、ポルトガル料理の特徴やワインのコルク生産世界一という事実にびっくりしながら、盛り上がっていきました。

一方では最近のビジネススタイルの潮流や人材採用、そのマネジメントについても深く議論し合いました。

強く感じたのは、「外部リソースの有効活用」というテーマです。企業としてはできるだけ人件費を安く押さえながら、常に新鮮な外部のノウハウを吸収し、内部留保していきたい。これだけ時代のスピードが早くなると、自前主義では追いつけないという現実が背景にあります。

そんな話をNに振ると、「まったくその通りで、うちでもそういった議論が事業部長クラスで議論になっているんだ」とのこと。

何はともあれ、今回は料理が来る前に店内の内装(屋根の高さと大理石張りの壁)でノックダウンしたNでした。

有力会計事務所が総結集し、課題を共有

2007-09-22 23:48:37 | プロジェクト
九州一大きな会計事務所に到着すると、盛大なお出迎えを受け、まずは事務所内の見学へ。

いろんな部屋を見てまわった後は、いよいよ本日のメイン会場へ。事務所内にバレーボールができるほどの大きなスペースがあることに驚きながら着席すると、コの字型になった机の上には、既に資料が整然と並んでいました。

13時30分。各会計事務所の所長とそのメンバーが全員着席し、いよいよスタートです。

事務所の人材採用の手法と課題、顧問料、所員のマネジメントなどについてのレポートをまとめた1冊の資料をベースに、発表と質疑応答が続きました。自分の発表時間は10分ほどでしたが、他では一切話の出なかったWebマーケティングの話もできたので、良かったと感じています。そして終了の17時30分には、少々ぐったり。

しかし、この後は地元の名門店で懇親会へ。地元の佐賀牛やタラバガニ、有明海のムツゴロウの甘露煮などを楽しみました。隣席は岐阜の会計事務所の女性常務だったので、岐阜エリアの事情についていろいろお聞きしました。

その後は、今回の幹事会計事務所のスタッフの完璧なエスコートにより、別のお店へ。そこでは、佐賀弁をかなりマスターしました。

ホテルに戻ってからも所長以外は部屋に集まり、本日の総括へ。会計事務所の経営環境は、これから更に大きく変ると思います。そしてその変化のうねりの中に、大きなビジネスチャンスが生まれると確信しています。

佐賀の吉野ヶ里歴史公園

2007-09-21 23:10:45 | プロジェクト
金曜日は朝早くから会計士ネットワーク活動の一環で、九州に出張しました。

21日(金)7時40分の羽田発の飛行機で、佐賀空港へ。東京の大手会計事務所の会長以下数名と私という構成です。

現地に着き、佐賀の有名な史跡『吉野ヶ里歴史公園』へ。この日は晴天に恵まれ真夏日に近い暑さで、この公園の広さが恨めしく思われるほどでした(笑)。

会長以下全員が現地特性の笠を被り(※これは日よけに絶大な効果を発揮しました!)、てくてくと歩きながら紀元前の史跡を見学しました。

写真は『物見櫓』と言われるもので、敵の見張りや集落の威容を示すシンボル的な役目を持つと考えられる高層の建物です。その造形美に少しの間見とれるほど、なかなか迫力がありました。

吉野ヶ里歴史公園を後にして、次は地元の名産の一つである鰻料理を堪能することに。お店の名前は忘れましたが、畳の和室に通され、非常に美味しい佐賀産の鰻料理を味わいました。

そして、いよいよ九州で一番大きな会計事務所へ。今回は、日本全国から有力会計事務所が集まり、共通の経営テーマに即した事前レポートの発表があるのです。

当然、自分の発表時間もあります。何しろ今回初めての参加だけに感覚が摑めず、緊張の連続でした。

つづく

ベンチャーキャピタル主催の勉強会

2007-09-19 23:24:51 | プロジェクト
本日は、某ベンチャーキャピタル企業が主催する勉強会に出席しました。

参加者は総勢25名位で、元東京証券取引所出身の方や、弁護士、会計事務所経営者などなど、多士済々なメンバー構成でした。

有楽町の居酒屋での懇親会では、お互いの現在の活動内容から人脈、最近の出来事などを明かし合い、非常に盛り上がりました。

特に旧住友銀行出身でこのベンチャーキャピタルの取締役の同期でもある弁護士の方は、芸能界の実情にかなり詳しく、お天気おねえさんのネットワークも持っていてそのリアルな会話に一同大興奮でした(笑)。

懇親会の後、幹事の方と私と会計士の方と新人担当者で、有楽町のガード下に流れました。

このスポットは、壁には昭和初期の日本映画のポスターがいたるところに張ってあり、その前には『まんぷく食堂』という赤ちょうちんスタイルの飲み屋があって、独特の雰囲気を醸し出していました。

日本情緒溢れるせいか、私達が入ったまんぷく食堂の中のお客さんは外国人が多く、初めての雰囲気でした。

なかなかマニアックな場所ではありましたが、結局終電まで語り合い、特に今動いている具体的な案件の相談を受けたことは大きな前進でした。

まだ具体的にどうなるかわかりませんが、飲みの場での情報交換は大事ですね。

ついに試作品が完成!

2007-09-14 23:04:47 | プロジェクト
月曜日にワインバーがオープンし盛り上がっている今週ですが、本日会長が新潟からお越しになり、ついにモチスウィーツの試作品を披露して頂きました。

新しい新潟の食品メーカーに試作をお願いしたものを事務所で開け、それぞれが実際に試食しました。

桃味やショコラ、杏など幅広い味とその食感をテストしながら、海外への輸送ルート、冷蔵精度、その国の食品検閲制度などについて検討していきます。

扱う商品が食品だけに、ナイーブな問題が伴うことはある程度予想はしていましたが、やはり実務として輸出を実行するとなると細かい手続きが必要となります。

こういった時はやはり経験者のノウハウが生き、私のような門外漢は全く歯が立ちません。

今回のプロジェクトは私にとっては生きた実践学習になっており、今までやったことのない領域での経験はとても刺激的です。

得意分野を持った人材を集めて強力なチームを作るということに以前から興味を持っているのですが、貿易実務という領域を改めて意識したMTGでした。

有名日本画家との出会い

2007-09-12 06:01:01 | 出会い
昨日のワインバーをオープンさせた社長は非常に人脈が広く、お知り合いでこの会社の役員も務められている方の中に元三井物産で活躍された方がいます。

この方が、ご自身の交友関係をベースに多士多才な方々が集まって運営されている交流会が月2回開催されており、本日はその開催日でした。

今回は三井化学出身の方のフランス在住時代の経験をベースにした、フランスの移民政策とその実情に関するものでした。

アルジェリア系移民のジダン、ハンガリー系ユダヤ人のサルコジなど、活躍するフランス人の中にも移民系の人物はたくさんいます。そういったかつてのアフリカにおけるフランスの植民地と移民政策、また国内における移民居住区の実情等かなり興味深い話を聞かせて頂きました。

毎回夕方6時に始まる講演会は約1時間程で、その後は軽い食事を交えた懇親会があります。ここではかつての旧交を温める人もいれば、名詞交換をして新しい出会いを求める人もいたりと、様々です。

私は元三井物産の機械部門出身の方で、日本の高度成長期にイギリス、ドイツ、アメリカなどの欧米から工作機械を輸入する仕事に従事されていた方とかなり話し込みました。

そしてその後は、二次会へ。大手町の落ち着いたバーに流れたのですが、ここでさる有名な女性日本画家の方とお話しました。この方の略歴は、凄いものでした。

◆国際展
モンテカルロ・ニューヨーク・ベルギー・仏・イタリア・ポルトガル・ブルガリア・スペイン・ロシア・ドイツ・ハバナ・トルコ・英国他51回 芸術名誉賞・大賞(5)・特選(3)・金賞(5)・銀賞一席(2)二席他多数

◆国内展
日仏現代美術展他31回 大賞・知事賞(2)・特選・朝日新聞社賞・他多数

◆収蔵
英国大英博物館・韓国全州大博美術館・ミャンマー国立美術館・モンゴル国立博物館・佐賀県立博美術館・国連大学

私の先祖は『麗子像』で有名な岸田劉生の先生だったこともあり、小さい頃から絵が好きだったので、水墨画を専門とされるこの方のお話には興味深々でした。

普通では絶対出会うことのできない高名な日本画家の方との出会い。この日は、人と人とのつながりの大切さを肌で感じた一日でした。

ついにワインバーがオープン

2007-09-11 22:51:20 | プロジェクト
9月10日(月)、ついにワインバーがオープンしました。

私がお手伝いしている飲食企業がプロデュースしたこのワインバーの名前は、『Double Bay』。

このネーミングは、社長の前職がオーストラリアワインの輸入販売会社の営業部長ということもあり、オーストラリアのお洒落なブティックや洗練されたレストランが集まるシドニー郊外の地ダブル・ベイにちなんだ名前とのこと。

この日はオープン日ということで、私も知っている社長の友人関係の方々が多数お見えになりました。

私も現在コンサルティングしている会社の女の子を二人連れて、お店に。このプロジェクトは最初から関わらせて頂いているだけに、完成した店舗に人が入り、談笑している風景を見るとちょっと感慨深いものがあります。

白ワインを飲みながら生ハムをつまみ、連れの女性にいろいろ聞いてみました。立地、初めて見た印象、メニューラインナップ、内装、価格、味、オペレーション…。

これら貴重なマーケティングデータは酔いながらも全て手帳にメモし、翌日社長にメールで報告しました(笑)。

飲食ビジネスは、“お客さんの視点”をどれだけ現場に反映できるかが勝負の分かれ目だと思います。そういう意味では、その反応がすぐ現れる面白いビジネスだと感じた夜でした。

広告の原体験8/新卒採用パンフレットを作る

2007-09-10 14:39:05 | クリエイティブ
スナックの求人広告が成功してしばらく経った時、同期の営業担当が頻繁にO社長の元に通っていると思ったら、どうやら大きな仕事が入ったとのこと。

現在元リクルートの人事部が独立して立ち上げた某企業の取締役として活躍している彼は、この時期いろんな工夫をしていました。

面白いエピソードがあります。

ある日彼は、O社長の経営するスーパーの競合の店舗に入り、値札や商品の並べ方を使い捨てカメラで隠れて撮影し、その現像した写真をもとにいろんな提案をしたというのです。

そういった通常の営業マンが思いもつかないような活動を通じて、経営者の信頼を摑んでいく彼のスタイルは、今も立派に生かされています。

普通のサラリーマン家庭に育った私にとってそのような発想はとても新鮮で、ある日彼にそのバックボーンを聞いたことがあります。その時、彼はこう答えました。

「うちの実家は、小さな電気工事屋をやっている。だから、オレはおやじがお金に苦労している背中を見て育った。リクルートの営業マンにとって、20万や30万なんて大した額じゃないが、小さな会社の社長にとってはとても大きなお金だということがよくわかるんだよ。それこそ、清水の舞台から飛び降りるくらいの決断なんだ。だからこそ、例え広告で失敗してもコイツは最後は帳尻を合わせてくれるという信頼感を持ってもらうことを、オレは大切にしたいんだ」

そんなある日、会社のフロアで彼が嬉しそうな顔をしながら近寄って来て、こう言いました。

「O社長のところで、新卒採用のためのパンフレットを作ることになった。この仕事は面白いぞ。予算は800万!社長の魅力を存分に出し切った、スゴイヤツを作ってくれ!」

800万!スナックの広告とはスケールの全く違う仕事を、同期の営業が取ってきてくれたのです。絶対失敗するわけにはいきません。

その日から、このパンフレットの制作と格闘する日々がスタートしました。

広告の原体験7/過去最高の応募、そして2人の採用へ

2007-09-09 00:27:22 | クリエイティブ
新聞の折込チラシが配布された当日、スーバーのオーナーから会社に電話がかかってきました。

「さっきママから連絡があった。凄いよ、問い合わせがどんどん来ているらしい」

電話越しの社長の声が、上ずっていました。

「ようし、やった!」

何とも言えない達成感が、全身を駆け抜けました。と同時に、広告の怖さを肌で感じました。

「広告は、表現一つで効果が全く変わる。大きなお金をかけても、成功するとは限らないし、その逆もありだ」

私は当時まだ1年目で、担当する会社もそんなに大きくはありませんでした。もちろん、出稿金額もあまりなく、広告スペースも大きくありません。同じ媒体でも、カラーではなくてモノクロ、スペースも比較的小さいものばかりです。

しかし、広告はやりようによっては、小さなスペースが大きなスペースに勝つこともできるのです。

戦車大隊に勝つには、夜襲を仕掛けるしかありません。沼地に誘い込むしかありません。私は、“砂漠の狐ロンメル”になって闘うヤリガイを感じていました。

スナックの採用活動は、応募総数35人、採用結果2人という今までにない結果を残しました。立地、労働条件に優位性がなかっただけに、これは実質クリエイティブの勝利でした。

後日スナックで祝賀会を開いて頂き、スーパーのオーナーとママ、同期の営業とで乾杯をしました。

そしてこの結果が、次の大きな仕事が舞い込む伏線になっていきます。

つづく

広告の原体験6/他の広告に勝つインパクト

2007-09-08 14:48:45 | クリエイティブ
広告は、“ケンカ”です。

そのケンカの重要性を、コピーライターの仲畑貴志氏はこう語っています。

「マーケティングやターゲットがズレてても、広告表現に勢いがあれば、そんなもの押しつぶす。逆に言えば、マーケットリサーチ、データ分析、ブレーンストーミング、会議…と延々やっても、最後の表現が下手だったらそこで転んじゃう。そこを表現のうまいやつがどんどん踏み越えて行っちゃうよね。結局僕たちはアンカーだから、これが立派に走らなきゃ勝負にならない。やっぱりデータを作ってるより、いい表現した方が早いと思うね」

仕事というものは何でもフィニッシュが大変ですが、広告も同じです。最後の“表現”が、勝負の分かれ目なのです。

特に今回の広告は、A4チラシの中の縦5センチ×横8センチ程度の小スペースではありますが、このスーパーのオーナーとの信頼関係がかかっているだけに、自分にとっては“大勝負”でした。

成功事例を調べ、ママへの取材も終わった今、いよいよこれからどう料理するかだけです。

ぱっとチラシを見た時、すぐ目に飛び込んでくるようなインパクト。しかも、ママの個性とスナックの雰囲気が伝わるようなもの。

私は、白黒のやわらかいタッチのイラストで表現しようと考えていました。

その広告を見た時、クスっと笑ってもらえて、でもスナックの室内感を感じさせるものにしたいと考えていました。

その結果生まれたキャッチコピーが、これです。

「岡山生まれの肉じゃがの得意なママが、アナタを待っています」

リードコピーは、こんな感じです。

「帰省する時には、愛車のマークⅡで140キロで飛ばして帰る。そんなお茶目なママですが、一緒に働いてくれる人を大募集!」

カウンターの前には、中年の男性が背中を丸めて一人静かにウィスキーの水割りを飲んでいる。その向こうには、カーリーヘアーのママが肉じゃがを作っている。静かに時が流れるアットホームなスナック…。そんなトーンのモノクロのイラストです。文字部分は、雰囲気が伝わるように手書きにしました。

他の並びの広告は、写植で打ったよくある広告。このイラストが枠に入った時のインパクトを、自分の頭の中でイメージングしました。

「絶対勝てる」

そう確信していました。社長から印刷会社の担当者の連絡先を聞き、広告スペースと同じサイズで描いたイラストを宅急便で送りました。

チラシが出る日まで数日ありましたが、精神的に落ち着きのない日々でした。プレッシャーが全くなかったかと言えば、嘘になります。

そしてついに、全て自作の広告が掲載された新聞の折込チラシが大量に配布される日がやってきました。

つづく

広告の原体験5/スナックのママへの取材

2007-09-07 23:15:07 | クリエイティブ
今でも、鮮烈に覚えています。

スナックのある最寄り駅を降り、昼間のスナックの扉を開けた時のあの緊張感。

昼間のママは、夜の妖艶さとはまた違った雰囲気を漂わせていました。

当時は、まだ入社1年目。取材の経験も十分に積んでいない状態でしたが、「ママという人間をとことんさらけ出してみよう」という好奇心は満々でした。

このスタンスは、今も同じです。

取材の本質は、インタビューのテクニックではなく、“人間というものへの好奇心”だと思います。

そんな好奇心と緊張感の中、取材は始まりました。

「ママのご出身はどちらですか~」
「私、岡山なのよ。岡山の田舎。だから、帰省は大変よ。いつも愛車のマークⅡで、140キロで飛ばして帰るんだから」
「…。」

質問に対する答えが、それぞれインパクトあり過ぎです。

得意な料理や手伝ってくれる女の子へのメッセージなどをお聞きし、この日は取材ノートにびっしり書いて、スナックを後にしました。

当時住んでいたリクルート中野寮の部屋に戻り、そのノートをもう一度読み返しながら、この内容を5センチ×8センチの小さなスペースでどう伝えるかを考えました。

広告制作は、ある意味“削る”作業です。

何でも伝えようとすると、何にも伝わりません。ターゲットの顔を想像しながら、他との差別化ポイントに絞り、いかに早く届く表現にできるか。

そのインパクトある表現イメージを一晩中、考えていました。そして、あるアイディアが閃きました。

つづく

広告の原体験4/見えてきた成功イメージ

2007-09-06 17:42:30 | クリエイティブ
成功事例を丹念に調べていくうちに、だんだん成功イメージが見えてきました。

それは、飲食などの現場採用で成功している広告アプローチは、“いかに情感に訴えるか”が重要だということです。

私は過去の飲食関係の募集成功事例を集めると同時に、社長にお願いしてそのスナックのチラシ原稿をFAXで送ってもらいました。(※この時は着信と同時に受け取れるよう、コピー機の前で待機していました(笑))

そのチラシの表現は、時給1,200円という文字だけが斜体で大きく出ていて、しかもその金額は相場よりも安いというハンディを抱えていました。

「このスナックは、待遇面でのアプローチでは勝てない」

立地、メニュー、客層他、潜在応募層が気になりそうなあらゆるポイントを洗い出しましたが、ことごとく相場に負けています。そのうち、私はあることに気付きました。

「このスナックのキラーコンテンツは、ママだ」

そう、林家ペー似のママこそが、良い意味でも悪い意味でもこのスナックのシンボルなのです。「ジャクソンファイブかよっ」と突っ込みを入れたくなるほどの大きな茶髪のカーリーヘアー、厚さ2cmの厚化粧、周囲を圧倒するファッション…。

このママを気に入るかどうか、そしてうまくやっていけるかどうか。そこが、ベストマッチングの大きなポイントです。本質は、中小企業の採用と全く同じなのです。

そう決意すると、早速社長にお願いし、ママへの取材を設定して頂きました。

この頃になると、スナックのママに取材するというよりは、中小企業のオーナーにインタビューするという感覚でした。

そして、いよいよ取材の日がやってきました。

つづく

広告の原体験3/成功事例を調べる

2007-09-05 06:59:11 | クリエイティブ
「ひょっとしたら、これは結構難しい仕事かも知れない」

一旦社長の依頼を受けたものの、日に日にそんな不安は大きくなってきました。

「効果ゼロだけは、絶対避けたい。出来るだけ成功する確率を高めるには、どうしたらいいのだろう?」

もうそのことで、頭が一杯でした。学生時代油絵を描いたり、編集の真似事をしていたお陰で、いっぱしのラフはそこそこ書ける自信はありました。

しかし、今回の話はデッサンの優劣ではありません。

主観で判断されるものでもありません。

数字結果がはっきり現れるのです。「応募○名」という形で。

しばらくして私は同じ部署の先輩や研修を受けたマネージャーに、電話をかけて相談しました。すると、私の所属した事業部とは違う事業部の媒体で、似たような事例があることが判明しました。

早速事例集を社内便で取り寄せ、その広告の企業規模、背景、意図、表現手法、効果などの項目を読み漁りました。

ただ事例は全て企業で、小さな場末のスナックという事例はあるわけがありません(笑)。しかし、成功事例を丹念に調べていくうちに、ある共通するヒントがだんだん見えてきたのです。

つづく

広告の原体験2/降りかかってきた難題

2007-09-04 02:54:29 | クリエイティブ
昨日の続きです。

会社にかかってきた、スーパーの社長からの依頼電話。

その内容は、通常の業務範囲をはるかに超えたものでした。

「この間行ったスナックが、人が採れなくて困っているんだ。何とかしてあげて欲しいんだよ」

企業の人材採用のお手伝いをするつもりで会社に入った1年目に、まさかスナックの人材採用のお手伝いをするとは思いませんでした。

しかもよく聞くと、スナックのママが毎週出している新聞のチラシ広告の効果が悪いので、何とかして欲しいとのこと。

要はチラシ広告を作りかえることで、スナックの女の子の募集を成功させて欲しいということです。

これは、実はかなり大きなプレッシャーでした。

というのも、リクルートの制作マンが制作する媒体は既にリクルートのブランド力があり、個々人の力量によって差はあるものの、ある程度の効果があることはわかっていたからです。

今回はカモメのマークのない、新聞の折込チラシ。しかもよく聞くと、縦5センチ×横8センチくらいの極小スペースであることも判明しました(泣)。

「そもそも、折込チラシの媒体力がないのかも知れない。こんな小さなスペースだと、無理なのかも知れない。でも結局効果が出ないと、クリエイティブ力のない新人だと思われる」

正直、迷いました。断ることもできました。

でも、結局この話を引き受けることにしました。

「リクルートブランドのないところで勝負できる力こそ、本当の力だ。失敗しても死ぬわけじゃない。やってやろう」

自分の力を試したい好奇心の方が、不安より勝ったのです。

広告の原体験1/あるスーパーオーナーとの出会い

2007-09-03 15:54:59 | クリエイティブ
こんにちは。

本日から、私の社会人生活における広告の原体験について綴っていきたいと思います。

リクルートに入社して1年目、私は埼玉に本社を構える某スーパーを担当することになりました。

この会社のオーナーは、子供の頃ゴルフ場の場外に落ちているゴルフボールを拾ってはそれを売ることで商売の醍醐味を覚え、一代でスーパー網を築いた方です。

ある日社長と会食をすることになり、営業担当の同期と嬉々として出かけました。

一次会が終わり、二次会は社長お気に入りのスナックへ。

そのスナックは、まさに異次元ワールドでした。幽霊が出そうなかなりクラシックなデザイン。そしてそのカウンターの向こうには鬼気迫る、いや熟女の魅力たっぷりのママが立っています。

その様相が、かなりキテます。林家ペーばりのカーリーヘア。八代亜紀顔負けの圧化粧。スナックの古びたデザインとママの組み合わせは、ホーンテッドマンション以外の何物でもありません。

しかし、我々はそんなことは全くお構いなしでした。取って頂いた極上のうな重をぺろっとたいらげ、マッチの『ギンギンラギンにさりげなく』(古い…)を熱唱し終わった時、重厚な造りの社長の顔がそっと近くに忍び寄ってきました。

小声で社長がこう囁きました。

「実は一つ頼みがあるんだけど、いいかな?」

何やらちょっと秘密めいた匂いがします。しかも、お腹は満腹、水割りを飲んでほろ酔い状態の体に「No」の選択肢はありません。

「いいですよ」
「じゃあ、詳しくは明日会社に連絡入れるから」
「わかりました」

翌日お昼過ぎ、会社にO社長から直々に電話がかかってきました。その内容は、想像をはるかに超えた驚愕の内容でした。

つづく