あるマーケティングプロデューサー日記

ビジネスを通じて出会った人々、新しい世界、成功事例などを日々綴っていきたいと思います。

グアルディオラの涙

2009-12-30 06:31:43 | サッカーネタ
サッカークラブ世界一決定戦で、見事バルセロナが優勝しました。

今年6冠を達成した、名将グアルディオラの実像を教えてくれる良い記事を見つけました。

偉業を成し遂げるには、必ずその裏には人並み外れた努力と英知があることを伺わせてくれます。

それにしても最近のWEBの記事は、本当にクオリティが高くなりましたね。


バルサ優勝を支えた知られざる「映像」。
~ぺップが決勝前に施した秘策~

ローマで行われた決勝戦の2日後、バルセロナを中心に発行される新聞の全てに「グラディエーター」の文字が見られた。リドリー・スコットが監督し、ラッセル・クロウが主演した映画のことだ。27日のキックオフ前、グアルディオラはこの作品の一部を使ったビデオを選手に見せ、モチベーションを刺激したという。

なるほど、それで腑に落ちた。

試合前のウォーミングアップがいつもより短かったのはそのせいか。


◆「僕を助けてくれ」──グアルディオラからのメール

実際に映像を編集したカタルーニャ最大のテレビ局"TV3"のサンティ・パドローによると、事の始まりは5月の初めに届いた一通のメール。

「お願いがあるんだ、サンティ。僕のヨーロッパ制覇を助けてくれないか」

驚いたパドローはすぐグアルディオラに会いに行った。すると、次のように言われたそうだ。

「決勝戦のためにチームを焚き付けるビデオが欲しい。好きなように作ってくれて構わないが、ひとつだけ注文がある。選手24人を全員出してくれ」

大変な仕事を頼まれたパドローはグアルディオラの弟ペラに相談したところ、やはりローマを舞台とする「グラディエーター」の使用を勧められた。素材はTV3の同僚の協力でなんとか集まった。だが、ビデオが完成したのは試合の2日前。ギリギリである。


◆選手に感動の涙を流させた映像の内容とは?

それはともかく、このことを知っていたのはグアルディオラに近しい者数人だけだったらしい。

だから、マンチェスター・ユナイテッドの選手が身体を温め続ける中、ロッカールームに戻るよう言われた選手たちはそこに大きなスクリーンが張られているのを見て驚いた。プロジェクターと一緒にバルセロナから持ち込んだものだ。スタッフも、これから何が起こるのか知らなかった。

故障者や出場停止でスタンドに座らざるを得ない者を含むチームの全員が揃ったのを見た監督は、部屋の電気を消した。

スクリーンに映し出されたのは、まず「グラディエーター」のワンシーン。次に体を張って敵のシュートを止めるビクトル・バルデス、ピント、ジョルケラ。そして、ちょうど1年前に手術した膝のリハビリに取り組むミリト。数週間前に負傷しながら、この試合に間に合うようにと必死にトレーニングするイニエスタ、アンリ。ドリブルするフレブ、シウビーニョ。ゴールを決めるグジョンセン、ブスケッツ、アウベス……。

レアル・マドリーに6点決めるシーンが続く。間には映画のシーンが差し挟まれながら……。

BGMは映画のサウンドトラックから、パバロッティが歌うオペラ「トゥーランドット」のアリア「誰も寝てはならぬ」に変わった。歌詞の最後は「夜明けと共にわたしは勝つ、わたしは勝つ」である。

7分10秒が経ち、部屋に灯りがつくと、選手数人が涙を流していた。

パドローは、「選手の心の琴線に触れるものが欲しかった」というグアルディオラの要望に完璧に応えたのだ。もっとも、彼自身は序盤、マンチェスター・ユナイテッドに押し込まれるバルセロナを見て、自分の仕事の効果を疑っていたらしいが。


◆ビジュアルの力を熟知しているグアルディオラ監督

この話を聞いて、そういえばと思い出した。

グアルディオラは以前にもビデオを使って選手のモチベーションを高めたことがある。昨シーズン、バルサBが2部Bへの昇格を懸けてプレイオフを戦っていたときのことだ。

まずは一回戦の数日前。ビデオルームに集まった選手は対戦相手カスティーヨを研究するつもりでいたが、流したのは1998年のワールドカップで優勝したフランス代表を追いかけるドキュメンタリーだった。

二回戦のときはもっと刺激的。60歳になる父親が脳性麻痺で身体に障害を抱える息子と一緒に“アイアンマン”レースに挑むビデオを、今回同様キックオフ前に見せたのだ。

選手の1人は、後にこう語っている。

「目に涙を溜めたままピッチに出たよ。あの父親は息子のためにあんなことまでしている。俺たちに出来ないことがあるかって思いながら」

その日バルサBは昇格を決めた。レフェリーが笛を吹くと同時に前へ出て、対戦相手バルバストロの激しい当たりに怯むことなく攻め続けて。

このときのビデオを編集したのもパドローである。1年後、自分がチャンピオンズリーグ優勝に多少なりとも貢献するなんて、夢にも思わなかっただろう。


世界のトップレベルのマネジメントを、垣間見た気がします。

現場の近い場所にいないと、テレビや新聞だけではなかなか流れない情報ですね。

“スポーツジャーナリズム”をコンセプトとする、Numberならではの記事だと思います。


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