■6巻ってどんな話?
北斗の拳の6巻を読みました。ケンシロウが生き別れた兄トキを探す巻です。やさしかった兄が、いまや人体実験を繰り返す殺人鬼になっていた…!いったい、なぜ!?っていう。
ストーリーは、いまさら説明するまでもなく、みなさんよくご存知だと思います。
■悪役にも過去がある
武論尊さんの原作は、ほかの作品もそうですが、悪役にもそれなりの過去や思いがありますよね。ただの悪役ではなく、彼には彼なりの過去や思いがあって、今がある。別の巻に登場するサウザーやシンもそうです。ケンシロウの前に強敵として現れるあらゆる男に、過去があります。
その深みが、北斗の拳をいくつになっても面白く読める作品にしてくれています。だからこそ、読むたびに、なつかしさと新しい共感を覚えます。
■アミバのかっこ良さ
アミバは自信に満ちた男です。どんな拳法も、だれよりも早く習得することができる(自称)天才です。彼は言います。
「おれは天才だ。おれに不可能はない」
すばらしい自信です。自信を持つことは、悪いことではありませんよね。ここまで言い切ると、かっこ良いです。
でも、アミバは誰にも認められませんでした。
「だれもおれのことは、わかっちゃいねぇんだ」
「だれも認めん。だれも奥義を授けようとはせん」
「おれを認めなかったバカどもを、いずれおれの前で平伏させてやるわ」
「だれも認めん。だれも奥義を授けようとはせん」
「おれを認めなかったバカどもを、いずれおれの前で平伏させてやるわ」
こうしてアミバは、すねて、ゆがんでいきます。
■生きた証
アミバにとっては、自分を認めなかったバカどもを平伏させることが、自分の生きた証でした。
ではトキは?
死期をさとったトキは言います。
「おれはこの先、人の命を助ける。人間として生きる」
「もうすぐおれは死ぬ。それまでに何人の命を助けることができるか。それがおれの生きていたという証だ」
「もうすぐおれは死ぬ。それまでに何人の命を助けることができるか。それがおれの生きていたという証だ」
ぼくはですね、これを読んだとき、自分の仕事のことを考えました。ぼくの仕事は人さまの命を助けるというようなものではありません。でも、なんというか、仕事に対する、魂の置き場所のようなものを考えたんです。
どんな気持ちで仕事に(あるいは人生に)取り組むか。なぜ、なんのために、その仕事しているのか。魂は、まっすぐだろうか、と。そんなふうに考えました。
トキとアミバの最大のちがいは、この魂の置き場所だったんですね。