フローベールの姪カロリーヌの回想 SOUVENIRS INTIMES de Caroline Commanville,
la nièce de Gustave Flaubertに、フローベールの少年時代を語ったところがある。主に彼が4歳の時から奉公した女中ジュリーからの聞き伝えだという。
ジュリーはルーアンに近い村 Fleury-sur-Andelle (写真)に生まれた。谷合に位置し、点在するお城、廃墟と化した修道院、周囲を囲む丘の森。魅惑の土地は恋の話、幽霊の話と、伝説を育む土壌となった。
ジュリーの家庭は父親が代々の御者で酒飲み、しかし娘にはお話の天分があった。
幼いギュスターヴはジュリーのそばに坐り、一日話を聞いていた。ジュリーは口承の伝説に、本で読んだお話を付け加えた。膝の痛みで一年間床に就いていた時、同じ階級の娘よりは多くの本を読んでいた。
フローベールの父はルーアンの病院オテル・デューl'Hôtel-Dieuの外科部長、病院の一角は現在「フローベール医学史博物館」に。フローベールの生まれた部屋(写真)
病院と通りを挟んだ小さな家に、ミニョMignotという老夫婦が住んでいた。ギュスターヴはミニョ爺さんのお話を聞きに行くようになる。爺さんの膝に坐り、何度でもおなじ話をせがんだ。爺さんは『ドン・キホーテ』も読んで聞かせた。セルバンテスに感嘆するフローベールの気持ちは、生涯変わらなかった。