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パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

物語の力とか記憶について

2025年05月30日 08時32分55秒 | あれこれ考えること

明治維新のイメージは司馬遼太郎の歴史感の影響が強いとされている
「竜馬が行く」の龍馬像は、実際の人間として捉えらていて
昔出かけた京都の坂本龍馬のお墓にはこのイメージを彷彿とされる文章が
書かれたもの(瓦)が並べられていた

一次資料などを読み込んでイメージするより
フィクションのほうが感情移入しやすいし個人の体験の一部になりやすいのは事実だ
だからこそ紫式部は「蛍」の帖で「物語論」とされるフィクションの意味を書き記している
(これは有名なところだが、情けないが自分が読んだ時は少しも気にならなかった) 

アラビアンナイト(千夜一夜物語)では残酷な王が、毎夜寝る前に物語を聞かされ続けた結果
眠っていた人間性を自覚する機会となったとしている
物語はこのように人にいい影響を与えうるものとしている
アンリ・ベルクソンは人には「作話する力」が備わっていて、それを活用する生き物としている

ただ物語の中には歴史的事実と全く異なる困った偽書の類も存在する(シオン賢者の議定書など)
どうも人は良いことも悪いことも自発的に作り出すようだ

ところで、物語がいっぱい詰まった千夜一夜物語は、それこそ物語の醍醐味を味わえるが
その中でオチだけは覚えている興味深い物語があった

なにかの才能が飛び抜けている若者は、その技術を高めるために名人とされる人物のものに赴いた
彼は師匠からよく覚えていないが日常の日課(掃除とか、技術には関係ないこと)を
行うようにアドバイスされた
それで彼は1年(?)ちかくそれを行った
だが、本当にこれで技術が高まるのか?
と不安になった男は、師匠にもうその日課は上手くできるようになったと報告すると
師匠は次に前とは違うが、やはり大したことのない作業をすることを命じた
この作業を行い、またしばらくの時間が過ぎた
彼は再び師匠に前回と同じように伝えると
師匠は「もうお前はその域に達している」と言った
「お前の技術はここに来るときから完成していた
 だが辛抱することだけが欠けていた
  そこでお前に辛抱する力を育むための作業を与えたのだ
 お前はそれを身につけた」

確かこんなようなオチだった
なんか、とても禅的な感じだな!と感じたものだから記憶に残っていた

こうした一種の解脱みたいな感覚は中島敦の「名人伝」とか
ヘッセのメルヘン「詩人」でも味わうことができる
表現方法は少し違っても、それなりの人の感じることは似ているものだ!と今は思う

とは言いつつも、自分の年令になると人生観が変わるほどの影響を
物語から得ることはない
もう身につけたものから取捨選択するだけのようになっている
だが、この取捨選択でも他人と同じ結論になるということはなかなか難しい
(そんなのは当たり前の話だが)

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