DALAI_KUMA

いかに楽しく人生を過ごすか、これが生きるうえで、もっとも大切なことです。ただし、人に迷惑をかけないこと。

どうする(93)

2015-03-19 09:56:20 | ButsuButsu


筒井康隆は、1934年生まれだ。

ということは、80歳に近い。

小松左京、星新一らと並んでSF御三家と言われていたそうだが、今ではただひとり存命中だ。

「旅のラゴス」は1994年の作品だから、彼が60歳の時のものだ。

やっとパソコンが私たちとフレンドリーになり始めた頃だ。

それにしては、アイデアと精神の若さが溢れているよい作品だ。

一人で旅をする男、ラゴス。

奴隷になったり、王様になったり、教授になったりと、波乱万丈の人生を送るのだが、そこに祖先の宇宙船や空間転移とかが登場し、SFの妙味がうまく散りばめられている。

しかも、この本には、終わりがない。

オチがないのだ。

そこには、還暦を迎えた筒井康隆の、貪欲なまでの情念が見え隠れする。

彼がラゴスの口を借りて語る言葉は、案外、筒井自身の心を代弁しているのかもしれない。

***

わたしは、そもそもがひとっ処にとどまっていられる人間ではなかった。

だから旅を続けた。

それ故にこそいろんな経験を重ねた。

旅の目的はなんであってもよかったのかもしれない。

たとえ死であってもだ。

人生と同じようにね。

***

生きるということは、それ自体にはそんなに意味は持たない。

人は、生を得、恋をし、競争をし、そして死を迎える。

集団の中には、私の代わりをする人は多くいるのだろう。

ただ、個々の人生はその人のドラマであり、代替え性のあるものではない。

そのことを一冊の本にまとめ、語りものとする。

そこでは、空も飛べるし、壁さえくぐり抜けれる。

精神の自由さが、人間の超能力を可能にする。

小松左京ほど現実的ではなく、星新一ほどの軽いノリではなく、筒井康隆らしいファンタジーの世界に触れた気がする。
コメント
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