小さな旅、大きな旅の写真物語(Virtual trips/travels)

京都や東京を本拠地として、自然の中や町を歩きながら、撮った写真をどんどん掲載します。いっしょに歩いているように。

New アート考察9 <金沢、富山の陶芸・ガラス工芸を追う> その2 能登島・国際ガラス展2022

2022-12-28 20:44:45 | 旅行
New アート考察9 <金沢、富山の陶芸・ガラス工芸を追う> その2 能登島・国際ガラス展2022

<金沢、富山の陶芸・ガラス工芸を追う>その2が一つも進みません。その理由はこの日の能登島・国際ガラス展2022の内容が、当方にとって異常に魅力的でなかったからどうしても筆が進まないでいるのです。

前回初めてこの展覧会に参加したのは2019年、大きなインパクトを受けて、その後の当方の陶芸活動に大きな影響を与えました。この展覧会は最初金沢で開催されて、次に能登島ガラス美術館に移動します。3年に一回開催ということで、国際ガラス展2022は久しぶりです。今回もタイミング的にまたもや能登島に出かけることになりました。
能登島ガラス美術館は、七尾線の七尾またはその先の加賀屋で有名な和倉温泉からバスで島に渡ります。今回も前回も七尾からバスで、金沢から鈍行で行くと全行程2時間ちょっとかかります。能登島の旅は苦になりません。能登半島の海が見られるからです。


能登島ガラス美術館





能登島ガラス美術館は内部も外の庭もそれなりに楽しめる場所です。和倉温泉に遊びに来たついでにこの美術館を訪ねるという方々が来館者の多くを占めるかもしれません(我々みたいに東京からこの美術館だけを目当てに来る人は珍しいかも)。




能登の海が見えます。



後ろに見える道の駅が開いているか閉まっているかで楽しみは雲泥の違い。ここの海鮮丼は美味しいらしい。我々は海鮮は金沢の最後の夜にとっておくので、ここでは食さず。



道の駅の裏にはガラス工房があります。当方が以前お世話になった自由が丘のガラス工房の先生、由水氏のお父さんが開いた工房だそうです。


ガラスショップが併設されています。

なかなか本題の国際ガラス展にはいりませんね。 さて頑張りましょう。

大賞、金賞、銀賞その他いくつかの入選作品を2022年と2019年を並列して載せてみます。この2つの展覧会が当方にとってあまりに印象がちがうのであえてそうします。 (以下参考文献から引用ですから小さい写真にしています、すみません)。


2019年大賞、胎動‘1-3 津守秀憲 セラミックとガラスの混合材料を使った混合焼成・キルンワーク(引用文献1)

ガラスに陶土を混ぜて作った作品。これは当方に大きなショックを与えました。津守さんは今年も入選しています。こういう新しい勇気のあるアプローチこそ大賞に値すると思います。


2022 大賞 切々、憧憬 田中里姫(引用文献2)

若手の作家さんで、先日訪れたギャラリーのガラスにも詳しい女性店主が東京で見たといって誉めていました。当方の感想はいいと思うのですが、見た目からだけいえば苦労してあえてガラスで作る必然性がありますかね?その辺のプラスチックを集合すれば簡単に同じ見た目に出来るのではないかと思ってしまう。


2019年金賞、散華 田上恵美子・拓 (引用文献1)

この写真では良さが分からないので田上恵美子さんの他の作品をネット情報で載せます。この方の美的センスはうれしい。拓さんは息子さん。


田上恵美子


2022年金賞 癒しの間 Jiang, Guimei (China) (引用文献2)
悪くはないが、当方にとって特にインパクトがあるわけではない。


2022年金賞 泉185469 磯谷晴弘(引用文献2)
理屈から出来上がった感じ、 よくできましたという感じ。


2019年銀賞、Natural Verse 塚田美登里 フュージング、サギング、コールドワーク
(引用文献1)

これは当方のやりたい方向。塚田さんの教室に弟子入りしようと思ったほど(遠いから無理)。


2019年銀賞、色がある壁、張慶南 (引用文献1)

これは意外性のある作品。大きめのガラスブロックをパートドベール風に窯で癒合させる時に境界に部分的に色づけするとこうなるのだろう。透明なバックにはっきりしたパターン、アイデアが面白い。


2022年銀賞 Waiting for the Rain Stoilova Desislova (France)
(引用文献2)
何が面白いのかわかりません。


2022年銀賞 明日にR2011 張 慶南(引用文献2)

よくあるフォルム物で陳腐と思うのですが。


2022年銀賞 植物の記憶/忘れじの庭 佐々木類
(引用文献2)

ガラスに実際の植物を閉じ込めたのかな?新しい流れとは思いますが、なんとなく
よくあるレジン作品のガラス版みたいだ。


2019年入選 Blue Fish, Klein Vladimir
(引用文献1)
チェコスロバキア生まれ


2019年入選 Sakura Leaf, Masitova Ivana
(引用文献1)
チェコスロバキア生まれ

当方が最も気に入ったアプローチ。完全透明なガラスブロックを削りによりアクセントをつけて行く。自分でもこの方向で、ガラスと陶器のクロスオーバー作品が作りたいと思っています。


2022年入選 箱舟 宮下真巳(引用文献2)

この手のアプローチはチェコのVladimirやIvanaの日本版と見えます。作品としては立派なものだが、コンセプトとしてはこれまでの流れに乗ったもので斬新とは思わない。



2019年入選 The Rising Sun, Borkovics Peter
(引用文献1)
この作品の作り方には感服しました。海外礼賛ではないですが、こういうぶっ飛んだ斬新さが日本人にもあるといいのですが。


2022年審査員特別賞 Windows to the World Borkovics, Peter (Hungary)(引用文献2)

作り方がよくわからないですが、方向としては面白いと思います。この作品には一票いれます。


2022年奨励賞 息を織る April 2021 小曽川瑠那(引用文献2)

写真とガラスのクロスオーバー作品。日付順にレーヤーされた記録写真が組み込まれているそうだ。当方はこういう能書きの多い方向は好きでない。


2022年奨励賞 Vestige 藤掛幸智(引用文献2)

このような、細密なガラス集合体による不定形なホルムを売りとする作品がなんと7点も入選しています。 一つ一つのいい悪いというよりは同じようなコンセプト作品がこれほど多いとはいったいどうしたのだろうか?


2022年奨励賞 Vestige 藤掛幸智(引用文献2)


2022年入選 R-VX II 大木春菜(引用文献2)


2022年審査員特別賞 Interface 12 佐藤静恵
(引用文献2)


2022年入選 Transition-442 武岡健輔(引用文献2)


2022年入選 Drop 朴 Park Youngho (Republic Korea)
(引用文献2


2022年入選 Metamorphosis Shilling Cathryn (United Kingdom)
(引用文献2)


2022年奨励賞 変貌 西野瑠華(引用文献2)

同様に極限まで細密なガラス細工が入選しています。


2022年入選 Tender Flower 岡崎彩香(引用文献2)

これなんて、ただの超絶技巧作品と思ってしまう。


2022年審査員特別賞 ゆりかご 木下結衣(引用文献2)

今回で、数少ない変わったアプローチの作品。 この入選作品は当方の海物カテゴリーですから見逃せません。サンゴのミミック。この方向なら、この方向でいいのですが、海物の専門家としていわせてもらえば、ただのゴタマゼでもう少し何とかならないのか?

以上、今回の国際ガラス展は異常です。3年後も同じような傾向なら、訪れる必要は無いと思っています。この異常の原因は、コロナ禍で選考を選考委員が一同に介さずに精密写真で
ネット上で行われたこと、ロシア・プーチンの異常行動の影響で、海外からの応募に障害があったかもしれないこと。作家さんがコロナで家にとじこもったから、心のダイナミズム、心の生命力が消滅し、頭で作品を作った為の3点が考えられます。選考委員はネット選考でもうまくいったと自画自賛していますが、当方の感覚からではアートの壊滅的崩壊と思われます。一言でいえば<心が無い>。選考会の為に、選考に勝つために作られた作品に結果が集中した。家内いわく、<技巧を競う展示会だ>。 写真では心は伝わらない、技巧ばかりが全面に出る。写真ですむならわざわざ展示会に足を運ぶ必要はないことになります。

この展覧会に多摩美客員教授 武田厚氏が<美しいガラスあるいは美しくないガラス>という寄稿をしていますが、どちらでもいいから<心>が必要だと思うのです(当方個人の本心としては工芸とは美しくなければ面白くもなんともないと思っています。) 当方は作品を作るときにはいつも<作品は見た目だ、見た目だ、見た目さえよければいい>と唱えながら作っています。ごたごたした理屈や能書きはどうでもいい、見た目が魅力的でなければ意味ないと呪文をとなえているのです。


国際ガラス展金沢2019はちょうどコロナ禍が始まったタイミング、それから世界中の創作活動は大変だっただろうと思います。やっと開いた国際ガラス展金沢2022をただ非難するのは申し訳ないとは思います。しかし、ダイナミックだったガラス工芸が、陶芸みたいに硬直してしまったら困るのです。

現代アートは絵画、彫刻、写真いずれも美しいというより、いかにコレクターの注意を引くかが目的になっています。京都国際写真展のブログでグレイン・ペリーの<みんなの現代アート>という本をご紹介した時にこれを議論しました。工芸は特にガラス工芸は、素材の持つ美しさに感動することから始まったと思うのです。武田厚氏の寄稿<美しいガラスあるいは美しくないガラス>でガラス工芸が近年美しくないガラスへ変貌することが書かれています。ガラス工芸が現代アートに飲み込まれているのです。最後の砦と思っていたガラス工芸が美しくないアートになってゆくのは悲しい。
人は人、当方は<作品は見た目だ、見た目だ、見た目が魅力的でなければ意味ない>と言いながら作品を作ります。

気分を変えるために、常設展示のピカソとシャガールが手がけたガラス作品を載せておきます。


魚―かご エディオ・コンスタチーニ(パブロ・ピカソのデザインに基づいて) (引用文献3)


新郎新婦―アンフォラ エディオ・コンスタチーニ(マルク・シャガールのデザインに基づいて) (引用文献3)

引用文献1:The international Exhibition of Glass KANAZAWA 2019
引用文献2:The international Exhibition of Glass KANAZAWA 2022
引用文献3:石川県能登島ガラス美術館 Postcard



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