ガラパゴス通信リターンズ

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勉強なさい 勉強なさい 大人は子どもに命令するよ♪

2008-12-16 09:47:32 | Weblog
 理数の学力の国際比較調査で、日本の成績に改善がみられたという報道がありました。「学力低下」と騒がれた前回03年のテストでさえ、世界のベスト10に入っている。1番にならないと許してもらえないのでしょうか。それでは日本の子どもがかわいそうすぎます。それにこうした報道の際には、「日本はOECD諸国中、教育予算のGDP比率が最低レベル」というコメントを付してもらいたいたいと思います。

 子どもの学力を国力と結びつけて考える発想が日本ではとても強い。だから、ゆとり教育がヒステリックな批判の的になったのではないでしょうか。「資源の乏しい日本は、優れた工業製品の輸出によって豊かな国になることができた。それを可能にしたのは日本人の秀でた理数系の学力であり、授業時間の大幅削減など国を滅ぼす愚行である」。学力低下論者の主張はこのように要約することができるでしょう。

 このニュースと同時にトヨタやキャンノンなど、日本の代表的企業での期間工の解雇が報じられています。正社員の削減を予定している超一流企業も少なくないようです。世界貿易の収縮によって、日本の輸出産業が壊滅的な痛手を受けていることのあらわれでしょう。「工業立国」・「輸出立国」という方向性がもはや成り立たなくなってしまった。そのなかで、高度経済成長期と同じような学力観が語られている現状に違和感を禁じえません。どんなに日本人が高い理数系の学力と技術力とを備えていて、優れた工業製品を造りだしたとしても、それを買ってくれる相手がいなければどうしようもないのですから。

 どうした教育を行うのか。子どもたちにどんな「学力」を求めるのか。これは国の進む方向性と切り離して考えることのできない問題です。「工業立国」・「貿易立国」は完全に過去のものとなりました。それに変わる「この国の形」を構想できない限り、教育論議の迷走が終わることはないでしょう。