何年か前の話です。入試の終わった2月のこと。平日の昼間自宅にいると、電話がかかってきました。ぼくが出ると男の声がします。「加齢さんのお宅でしょうか」。ぼくが「はい」と答えると、男は少し驚いたようで「御飯さんのお父さんですか」と聞きます。このあたりからおかしいと思った。何故「御飯さんですか」と聞かないのか。平日の昼間にぼくが家にいるとは思わなかったのでしょう。不審に思ったぼくは、「御飯の父です。あなたこそどなたですか」と問い返します。男はぼくの勤務校の事務職員だと答えました。
大学からの電話ならナンバーディスプレイに代表番号が表示されますが、これは非通知になっている。「振り込め詐欺」の類だとぴんときました。ぼくが大学の教員だということを、この男は知っている。セクハラか何かの問題をお前の息子が起こした。だから金を所定の口座に振り込め…。そういうストーリーなのだろうな、と思いました。ぼくはこう尋ねました。「どちらの部署の方ですか」。相手は不快そうにいいました。「そんなことどうでもいいじゃないですか」。
ぼくは勝ち誇ってまくしたてます。「本当にあなたが、うちの大学の職員なら、まず自分の名前と所属を明かすはずです。そして事務職員が教員のことを『御飯さん』と呼ぶはずがない。いや、電話の主がたとえ学長であっても必ず私のことを『先生』と呼ぶでしょう」。
男は完全に狼狽してぼくに尋ねます。「なんでそんなこと、あなたが知っているんですか」。「それは私が加齢御飯、本人その人だからです!ずばりあなたは、振り込め詐欺の人でしょう!!」。ぼくの声は完全に裏返っていました。まるで「ちびまる子」ちゃんの丸尾末男です。
それにしても不思議です。この詐欺師は格別お粗末な輩だったのでしょうか。それともこういうお粗末な手口に世の善男善女はひっかかっているのでしょうか。男は、「大学の先生が嘘なんかついていいんですか」と捨て台詞を残して電話を切りました。
大学からの電話ならナンバーディスプレイに代表番号が表示されますが、これは非通知になっている。「振り込め詐欺」の類だとぴんときました。ぼくが大学の教員だということを、この男は知っている。セクハラか何かの問題をお前の息子が起こした。だから金を所定の口座に振り込め…。そういうストーリーなのだろうな、と思いました。ぼくはこう尋ねました。「どちらの部署の方ですか」。相手は不快そうにいいました。「そんなことどうでもいいじゃないですか」。
ぼくは勝ち誇ってまくしたてます。「本当にあなたが、うちの大学の職員なら、まず自分の名前と所属を明かすはずです。そして事務職員が教員のことを『御飯さん』と呼ぶはずがない。いや、電話の主がたとえ学長であっても必ず私のことを『先生』と呼ぶでしょう」。
男は完全に狼狽してぼくに尋ねます。「なんでそんなこと、あなたが知っているんですか」。「それは私が加齢御飯、本人その人だからです!ずばりあなたは、振り込め詐欺の人でしょう!!」。ぼくの声は完全に裏返っていました。まるで「ちびまる子」ちゃんの丸尾末男です。
それにしても不思議です。この詐欺師は格別お粗末な輩だったのでしょうか。それともこういうお粗末な手口に世の善男善女はひっかかっているのでしょうか。男は、「大学の先生が嘘なんかついていいんですか」と捨て台詞を残して電話を切りました。