ガラパゴス通信リターンズ

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防人の歌

2008-12-13 08:12:19 | Weblog
 4年前のことです。甥っ子のうなぎ君が防衛大学に入ったので、大学祭をみにいきました。学年の代表が旗をもって行進します。その時、出身高校が紹介されます。それを聞いて驚きました。リベラルな都会の進学校や、さるやんごとなき方の母校までありました。

 うなぎ君の話では、防衛大は給料が出て将来も保証されるのでここに進学したという若者が圧倒的多数だということでした。女子のばあい、男女差別の少ない、有望なキャリアという期待もあるようです。右翼的観念の持ち主や国粋主義者はいるかと聞くと、そんなことは考えたこともない人たちがほとんどではないかといっていました。

 昔は防衛大学に多く生徒を送る高校といえば、九州の剣道や剣道でも有名な、文武両道の学校と相場がきまっていました。「愛国青年」というとばでくくられる若者が多くを占めていたはずです。ところがいまの防大生の政治意識を尋ねれば、「そんなことは考えたこともない」という答えが返ってくる。

 自衛隊は軍隊です。その幹部を養成する学校の若者たちのなかに、国家意識が希薄になっている。これは、よいことのように思えます。しかし、軍人の職務は戦争の遂行です。死と背中合わせの仕事です。自分のなかに「身捨つるほどの」国家に対する大義をもつことなく、続けていくことのできる安易な仕事だとは思えません。

 自衛隊が政治意識という面からは、烏合の衆の集団になってしまった。しかも自衛隊に大きな緊張感を与えてきたソ連という仮想敵もいまはありません。田母神問題で表面化した、自衛隊の過剰で偏向した「政治教育」も、冷戦終結によってもたらされた思想的空洞と幹部自衛官のサラリーマン化に対する上層部の焦燥が生み出したもののようにもみえます。現在の自衛隊の迷走は、大義なき国に軍隊が維持できるのかという問いを投げかけているように思えてなりません。