紫陽花記

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別館★写真と俳句「めいちゃところ」

山吹の明かり

2021-01-01 11:43:19 | 風に乗って(おばば)


 どうやら道に迷ったらしい。
 行けども行けども、杉林が続く。薄暗い中に山吹の花が咲いていた。細いくねった道が、とぎれとぎれに延びている。
 行き止まりに祠があって、その前に若い女が跪いていた。
「……を宜しくお願いします。それに……は、どうしても、……まで、手に入りますように」
 女が、お婆の近づくのも気づかずに、祈り続けている。合わせた両手の指先に力が入って、赤く染まっている。
 お婆は、一心に祈る姿に見とれていた。
 女が、お婆の気配に気づいて顔を上げた。
「あら、お参りになるのでしょう。どうぞ」
 少し体をずらし、祠の前を空けた。
 お婆は、女と並んで跪いた。
「なむなむなむ、あぁあ、なむなむなむ」
 女が、祈っている姿勢のまま目を開けた。
「おばばさん、なむなむなむだけじゃ、お地蔵様が困るでしょう。ちゃんと、お願い事を言わなけりゃあ」
「なに、お地蔵様にも都合があるってものよ。だから、なむなむなむ、あぁ、なむなむなむ」
「そんなお願いの仕方なら、幸せになれなくってよ。お地蔵様だって、しっかりお祈りする人は放ってはおかないわ」
「それであんたは、何をお願いしたのだい」
「それは、ひ・み・つ」
 女が、もう一度丁寧に手を合わせると、去っていった。

 お婆は、あれこれお願いしようと思ったが、どっちにしても、欲にはキリがない。
「南無なむなむっ、なむなむなむ」
「でっかい声だな」
 祠から地蔵の声がした。

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「おばばシリーズ第二部」
旅に出たおばば・・・どのような出会いがあるのか?
そして 最後はどうなるのか?
この時点では作者自身も?の状態です。
お読みいただけると嬉しいです。

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