鳥海山近郷夜話

最近、ちっとも登らなくなった鳥海山。そこでの出来事、出会った人々について書き残しておこうと思います。

康さんの鳥海山日記、再々再読

2019年11月03日 | 鳥海山

写真は今の祓川ヒュッテ、昔の祓川ヒュッテは木造で、太い丸太が建物を三方から斜めに支えていました。

日記の中の一日、すべてが伝わってきます。

九月十二日(曇り、のち雨)
 あいかわらず雨風だ。せっかく集めた枯れ柴も、風に吹き飛ばされてみるかげもない。
 風がピタリとやむと、赤滝の音がごうごうと耳にはいる。
 風が雨戸を叩きつけてガタガタと響く。
 きょうも、だれひとりきてくれぬ。あすはきてくれるだろうか。あすも相変わらず雨風だかもしれない。それにしても、あすは、なにを食ったらよかろう。あるのは、ただ鯨と塩ホッケだけだ。汁は、野菜がないので食えない。酒があるわけでなし……。
 ああ、これも我慢のしどころとあきらめて床にはいる。雨は遠慮もせず、ザアザア降りつける。そのたび、ガラス戸がガタガタともの淋しく鳴り響く。カレンダーは、すきま風に吹かれ、一枚一枚、音を立てて落ちる。九月とはいえ、時がくれば夜になる。外は真暗だ。ランプは、ただまわりだけがうすぼんやり照らして影を流している。
 まっくらな風呂場あたりで、ネズミがジイジイ叫びながら走り去る。

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