鳥海山近郷夜話

最近、ちっとも登らなくなった鳥海山。そこでの出来事、出会った人々について書き残しておこうと思います。

澄郷沢

2022年07月06日 | 鳥海山

 先日、「清水大神」の読み方は何ですか?「しみずたいじん」でしょうかと問い合わせをいただいたのですが、これは「しみずおおかみ」です。「大神」を「おおかみ」と呼ぶのは明治期に書かれたものにも根拠がありますし、実際に耳にもします。神道の神様に関する名前は訓読みです。神社は音読みですが。その神社の祭神様(まつりがみさま)を音読みするのはありません。「天照大御神」「倉稲魂命」等は音読みしません。逆に仏教用語はその伝来の歴史から呉音で読むことが多いです。

 さて下の写真の「澄郷沢」この読み方は?

 どこを流れているかといえば、少し遠くに見えているのは河原宿の小屋。雪渓の雪融け水が流れています。澄郷沢はこの後白糸の滝として滝の小屋の前に流れ落ち、赤滝から流れ落ちる水もあつめて草津川となります。

 この「澄郷沢」、「ちょうごうざわ」ではなく、「すごうざわ」、「すみごうざわ」と呼ぶらしいのですが実際に何沢だと呼んでいるのをきいたことがないのです。河原宿の小屋に何日も居続けたって「おっ、水が増えた」くらいしか言わなかったので。漢字をそのまま読めば「ちょうごうざわ」、「すみごうざわ」と読めば百姓読みに近い読み方ということになります。百姓読みにつては解説がいっぱいありますのでそちらをどうぞ。

 ※この澄郷沢、増水すると今の河原宿小屋の基礎のあたりまで水量が増えます。もっと増えるのかもしれませんがそこは体験していないのでわかりませんが。逆に夏の終わりともなれば午前中は涸れ沢のようになります。午後になると突然のように水音がしてじわじわと水量が増えてきて沢になります。

 水の涸れた澄郷沢

 澄郷沢、ある夏の朝。なんだか「スゴソ」と読んだ方がぴったり来るような気もします。

 鳥海山に限らず、その地方の地名はその地方に昔から住む人が発音する通りに呼称すべきだと思います。鳥海山でいえば、「荒木沢」。これをよそから来た方は「あらきさわ」と呼称しますが地元の人は「あらきそ」と呼びます。「檜ノ沢」は「ひのそ」、そのほかにも沢の付く名前は「しらそ」、「びやそ」等色々あります。それでは沢とつくところはすべて「○○そ」なのかといえば、昔はそうだったのかもしれませんが生活のために山へ入る人も少なくなった今、沢の呼称も必要がなくなったのでしょう。わざわざ沢を呼称することはほぼ聞くことはありません。地図上に漢字で「○○沢」とあるのを見て「○○さわ」と読んでいるにすぎません。「ひのそ」の場合は今なお用水としてそこから水を引いていますし、用水の維持管理のため人も入るために昔からの呼び方が今なお続いているのでしょう。「しらそ」「びやそ」「あらきそ」と呼ぶのは昔からの地元の山登りする人が受け継いできているからとおもわれます。

 (檜ノ沢)

 鳥海山にはまだまだ面白い呼称がいっぱいあります。「南のコマイ(コメ)」などもそうですね。これらについても手元に先人の書いた資料がありますのでそのうち纏めてみましょう。もっともこんなことに興味があるのは自分だけかもしれませんが。ただただ登ったのは昔の話、その頃は何も考えて登ってはいなかったのですが、今になってこういうことを調べる面白さにはまっています。


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