「本日も読書」

読書と映画の感想。ジャンル無関係、コミック多いけどたまに活字も。

敵こそ、我が友 戦犯クラウス・バルビーの3つの人生

2010年04月01日 | 映画
ナチスドイツの親衛隊が戦後、どのような形で生き延び、
アメリカや反共産主義、南米の軍部に影響を与え続けたか、
というのが描かれています。

彼に拷問されたもの、家族が殺されたもの、彼の家族、彼の弁護士、
彼を反共のために利用した者、彼を追い続けたナチハンター、
南米で共に働いたもの、彼のそばにいた将軍、傭兵、
さらには外務大臣などなど、そんな人々の証言を基につづる戦犯の戦後。
もしかしたらチェ・ゲバラの拘束の陰には彼がいたのか、といったところまで描く。

製作者側の立場としてはこの戦犯の男を糾弾しつつ、
戦犯を利用してきた者をも批判しているが、それだけでなく
さらにうがった見方までできてしまうフランスらしい作品。

私たちが心に持つ共産主義の脅威は、もしかしてこんな戦犯が生き延びるための
方便だったのか? そんな疑問もわくがもはや確認しようもない。

「敵こそ、我が友」とは誰のことを言っているのか。
見終われば、バルビーのことだけを指しているのではない、と気付く。
アメリカか、私たち西側か、独裁者のためか。
いやいや、それとも私たち人間は常に敵を必要としているのか。
そんな大きなことまで考えてしまう。
どこがどこまで真実なのか。
「レジスタンスは敵だった」
「なら?あの孤児院の子たちは」
「そんな命令は出していない」
「軍部、政治とは離れて生きてきた」
「彼が拷問を教えたんだ」
「彼はチェ・ゲバラを捕まえたのは俺の力と」

そんな言葉が思い浮かんでは消えていく。
何が起きたのか、真相はわからないまま、裁判で終身刑になり
彼は亡くなる。

虐殺は誰が起こしたのか、彼がこうなったのはヒトラーのせいなのか、
彼が逃げ延びれたのは反共を望んだ人のせいなのか、
同じようなテーマが繰り返し語られ、この中でも語られ、
そしてまたいろんな疑問が浮かんだまま解決策も浮かばない。

気にし始めたら止まらない。
だから誰も気にしない。
だから永遠にこのような問題は解決しない。
また起こるだろう。
そう、私たちは十分に愚か。

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