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師走の模型屋


趣味人( シュミット )のブログへ、ようこそいらっしゃいました。

十数年前、私のお気に入りの模型屋は、その当時勤めたいた職場から、わずか200メートル程の距離にあった。
仕事帰りに毎日のように、寄せてもらっていた。

一部三階建ての店舗付き住宅で、一階は店舗とドアひとつ隔てた向こう側に、一段上がった居住スペースと分け合っていた。

五坪ある無しの小さな店の四方の壁には、びっしりと模型が積まれ、ジャンル別に整然と分けられていた。

奥の居間と繋がるまさに猫の額ほどの、老夫婦がやっと二人立てるスペースに、小さな机が売り場との境を成し、その上には電源が入ってない釣り銭入れの箱と化した壊れたままのレジスター、机の辺に寸分違わず平行に置かれた包装紙は素早く包めるよう裏返しにされ、1センチほどの高さに積まれていた。、セロテープホルダー、空き缶に立てた文房具、手脂で飴色になった算盤が脇に控え、いつ訪れてもどれもが定位置にスタンバイしていた。

客が購入しようとカウンター?に持ってきたら、まず店主のこだわりの儀式が始まる。
蓋を開けるとその裏には店主により鉛筆書きれた取り説の固有記号番号を確認する。パーツが入っている袋はすべて箱にホチキス留めされ、ほかの似たようなキットと入れ替わりがないように事前処理してあった。

陳列棚は天井から大人の腰の辺りまでで、そこから下は備品/在庫が保管してある地袋が設けてあり、ちょっと腰掛けてキットを見ることが出来るよう、せり出していた。

まだ模型の何たるやも分からない(やかましく考えない。だからこそ楽しい模型なのだ!)小学生たちは、その腰掛けに棚から二つ三つと引っ張り出してきた商品を、蓋と中味を間違えて棚に戻すことが間々あるので、蓋の裏攻略はそのためにあった。

蓋と中味が一致したら、ここで売った商品とチェック出来るよう、取り説の隅にハンコを押す。ヨンパチサイズの箱なら、パーツの袋はガッチリ留めてあるので、ビン入り接着剤や塗料の5~6本はやすやすと入った。

客の要望でそれらを放り込み(丁寧に)、飛行機、戦車、艦船、車、バイクが一定のパターンで印刷された包装紙を、必要最小限の粘着テープでシワひとつ出さぬよう留め、儀式の終わりを迎える。

大人でもだが、小さな子供は買って帰る間に、蓋が外れないとは限らない。帯紙ではなく、全包装は購入した証と家に帰るまでの安全安心のサービスである。
一連の儀式が終わると、お買い上げとなる。

時間帯、時期によっては 店主は店に顔を出さない。隣りの居間でテレビにかじりついて、テコでも動かない。
何を観ているかというと、相撲、あるいは時代劇である。
そんな主人にブツブツ文句を言いながらも、裏返しの包装紙の上に新聞を広げ、老眼鏡にシニアグラスを重ね着させて、その日の記事の中で面白そうなものを拾い上げ、ニュースキャスターよろしく、一部すっ飛ばしながら読み上げ 論評する。得意とする分野は、政治家への批判だった。面白いおばちゃんだった。


一昔前失われた十年と日本自体が揶揄されたが、私自身もずいぶんと失ってきた。完全に模型を断ち切り、資料、キットを手放し、単身 故郷を離れた。
その間、この老夫婦の営む模型屋を始め、お世話になっていた他の店も都合4軒、畳まれていた。皆さん どうしておられるのか…




大分県日田市で開催された『天領プラモデル大会』通称《天プラ》から、はやひと月が経とうとしている。
地元の模型屋を営む若い経営者に懇親会で言葉を交わすことが出来た。

「どぉ?お店、繁盛してる?中坊とか万引きしない?もしそういう子供がいたら、よく話しを聞いてあげてよ。その子にはその子の理由があるから。大事にしてやってネッ!」

青年経営者 曰く 「 オレその話しになると、涙が出そうで…….。いくらでもあるんです。」

「よろしくお願いネッ!」

これ以上は何も聞かなかった。
喋るのを遮断するために、ビールを注いであげた。
やっぱり商売にはつきものの心配事のひとつとして、嫌な思いを経験しているんだなあと。


明日は冬至、最後の祝日/天皇誕生日、クリスマス、紅白歌合戦、ゆく年くる年、元旦と続く。

師匠も走るから、師走!

モデラーも走った、走った!

万引きを捕まえるために!

元ラガーマンが走って走って捕まえたやつは、、、?!

次回に続くε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘

(画像と本文は関係ありません)



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