LONDON DIARY

ロンドン在住フローリスト、asuka のブログ。

Scarlet & Violet 

2010-10-22 11:31:25 | flower

ロンドンに花屋は多いけれど、大好きな花屋というのは数えるほどしかない。
この夏まで働いていた、今は無きDaylesfordで学んだことはいろいろあったけれど、
アンティークの花器に花を生けるおもしろさも、その一つ。
こういう、古いものに気軽に触れられるのは、ロンドンの花屋で働く醍醐味ではないかと思う。

さて、今回ぜひ紹介したいのは、ロンドン中心部からちょっと北に位置する
Kensal Riseにある花屋さん、Scarlet & Violet
この店には色とりどりの花が所狭しと並べられているのだけれど、
これでもかというほど、様々なアンティークの花器に挿してあって、
実に見事に調和している。


撮らせてくれたらいいなあと、ちょっと半分ドキドキしながら、カメラを見せて聞いてみたら、
~Ofcourse you can!~と快く撮影を許してくれた感じの良い店員さん。よかった~!
まずは大好きな白い花から…。


秋色の紫陽花は種類も豊富に揃っていた。
秋の紫陽花は長持ちするところも好き。リースにしても素敵かな。


作りたてのアレンジメント。スモーキーで微妙な色合わせ、さすがです。
バラが全然甘過ぎない。


日本人が敬遠しがちな菊の花も、こんな風にすると全く違う雰囲気。


撮りたいスポットが多すぎて困るほど。
買う人にも、上手に飾る参考になりそう。



ああ、こういう、世界のある花屋さん、好き好き!
ちょっと不便な場所だけど、固定ファンが多そうだった。
マーケットなどでこういう花器を探そうと思うのだけど、
大体そんなに頻繁に行けるわけでもないし、
行ったからといって必ず出会うわけでもない。
ここには、欲しいものがいくつかあって、売ってくれないかと聞いてみたけれど、
残念ながら、一点ものはすべてDisplayに使うので売れないとのこと。
それはそうよね。一つ一つ、きっと集めるのも一苦労だもの。
この素敵な花器に生けられた花に、時々また会いに来よう。

素敵だなと思う店が、どうか無くなりませんように。



さよなら The Garden

2010-10-21 23:38:38 | flower

7月の終わり、産休に入る前日、最後に作ったブーケ。
同じ会社の(フード部門)同僚の為のウエディングブーケ。
うちの店の花は、常に白い花のみで、それに様々なグリーンやハーブなどを添えてあることが多く
まさにこれぞ、"The Daylesford"という感じのブーケ。

最後の日に、心を込めてこのブーケを作らせてもらえたこと、本当に光栄だった。
今まで、星の数ほど(大袈裟?)のブーケを作ってきたけれど、
その中でも、いくつか忘れられないブーケというものがあるものだ。

そしてこれは、私のDaylesdordでの、本当に最後のブーケとなってしまった。
というのも、8月に店自体が閉店し、ついに幻の店となってしまったから。

そもそも、7月の終わりには産休に入ることにになっていたし
1年後に復帰するつもりはあまりなかったのだけれど、
それでも、産休に入る1週間前に、突然閉店の知らせを受けて、正直とても寂しくなってしまった。



この店を初めて訪れた時、一目で惚れ込んでしまい、思わず「働きたいんですけど、空きはないですか?」とその場で聞いてしまった私。私も私だけど、それを聞いて、特に募集もしていなかったのに、私の話を熱心に聞いてくれて、ポートフォリオを送ったその日に、インタビューの約束をしてくれた当時のマネージャーJ氏。

そして、その最初のインタビューで、かなりの時間をかけて、店の話をしてくれたJ氏。
この店で、これから何をしたいのか、何故この店が好きなのか、それにはどんな人が必要なのか…。
仕事のインタビューに行って、そんな話を1時間以上も延々されたことは初めてだった。
そんな彼女の情熱に私もつい熱くなり、興奮気味で、うんうん、と頷いて、夢を膨らませていった。
娘の学校の迎えの時間が来なかったら、きっと何時まででもそんな話をしていたに違いない。
それくらい、店のコンセプトへの共感は強かった。

だから、トライアルデー(一日実際に働いてみて、スタッフとして正式に雇われるかどうかが決まる。言わばテストのようなもの)に無事にパスして、この仕事が決まった時は、最初の店の仕事が決まった時と、同じくらいうれしかったものだ。



この店のスタッフはとにかく細かい。
とにかく、美しくないものは、店で使ってはならない。
例えば花がオランダや国内の市場から運ばれてくる時、プラスチックのバケツや箱に入っているものなのだが、そういうものは、数分たりとも店頭に置いておく事は許されない。
「物を置く時には、常にどうしたら一番美しく見えるか考えて…」店員全員の口癖だった。
これは、花を美しく生ける云々以前の問題。
だけど、こういったことすべてが、創るものの美しさにも反映する。



それと、もうひとつ、私が他の店と違うと思ったことは、
花材、プランツ、すべてのものを、大切に、大切に扱っていること。
もちろんどこの店にもそういう人はいると思うけれど…。
花を売り物として扱うだけでなく、生き物として扱っている、そんな店だった。



そもそも、うちの会社はオーガニックの食材や食品を売るのがメイン。
あくまでも、オーガニックフードの会社。
Gloucestershireの田舎で、最初は自分の家族の為に安全な食品を作ることから始めた農場、そこからビジネスを拡大していって、今の、何でも揃うオーガニックショップに発展していったのだった。
そしてそのオーガニックライフを、都会のロンドンの暮らしにも…ということで、
まずは食品の店舗がオープンして、その後に、花やプランツ、長く使えるクオリティーの高い雑貨を扱う"The Garden"がオープンする運びとなったらしい。
店全体は、カントリー風のようで、それでいて、田舎を歩いて探してもどこにもないような、徹底したテイストで統一されている。~風、というのは好きではないし、そんな風に括ってしまうと陳腐になってしまうから、そもそもそんな定義をするのはおかしいのだけれど…。



だから、私も、店に置かれているアンティークの家具や雑貨ひとつひとつにもとても思い入れがあり、毎日掃除をして、並べているうちに、自分の物のように錯覚してしまうくらいのものもあったくらいだ。
それでも、もともとあまり細かくない性格の私は、ちょっとしたことで同僚によく注意されたものだったけれど…。言われ続けた割には、まだまだ全然ダメな私…。性格的な問題なのか…。つくづく、花の仕事には向いていないのだなあ…と落ち込むこともあったけれど、それでも、続けてこられたのは、そんな直向で徹底した完璧主義の同僚に、少しでも近づきたい、私もいつか、あんな風になりたいな、という思いがあったから。
そんな風に思わせてくれた同僚、特にM氏には、本当に感謝している。彼と仕事をしながら、花の話をすると、いつも盛り上がって止まらなくなるのだった。(でも彼はテキパキと次々に仕事をこなす、その辺が私と違うんだなあ…)


これがM氏。真剣な眼差し。

店を閉めるに当たって、本当に多くのお客さんが惜しんでくれて、中には泣き出すような人もいた。
実際うちの店は、わざわざ見る為に遠くからやってくる人も少なくなく、かなりの人に、この上ないお褒めの言葉を頂いた。でも、実際に店として続けていけるかというと、それは全く別な話…。
私が好きだなと思うものは、大体あまりお金にならない、ビジネスとしては大成しないことばかり…。
何故なんだろう…。経済などに全く疎い私にとって、その問いはいくら考えても答えは出ず…
それでも、まあいいか…なるようになる!と大雑把に考えてしまう、楽観的な性格の私…。

心を込めて、人の為に美しい花を作る、そんな仕事を続けていくことができたら、それで良い。
そんな思いは、大好きなDaylesfordがなくなっても、この店を通して私の中刻まれた、大切な思い。

この仕事を通じて出会ったすべての人々に、感謝して…。
ありがとう。さようなら。







グリさんの帽子

2010-10-21 01:44:56 | shops

「その帽子、どこで買ったの?」と何度この夏聞かれたことか。
それ程いつもいつも、とにかくよく被っていた。

その度に、「これはねえ…グリさんの帽子と言って…」とこの帽子を買った経緯を話す私…。

グリさん、というのは、内山グリさんといって、東京、千駄木で手作りの帽子を作っているデザイナーの方。去年の夏、ふと何かで彼女の記事を見つけて、一時帰国していた、栃木の実家から暑い暑い日に、わざわざその為に、当時4歳だった娘と二人で、電車を乗り継いで行ったグリさんのお店。



棚にはまだ夏の帽子が並んでいたけれど、もう秋冬ものの注文が中心となっていて、今からオーダーしても、最低1ヶ月はかかるので、その夏に被るのはもう無理だとのこと。とっても素敵だったから、本当はすぐにでも被りたかったのだけれど、ロンドンに戻るまでにはどうしても間に合わない。それでも、次の年には被れるのだから、と楽しみを先に延ばしてオーダーすることに…。

帽子を選ぶ際には、私の顔に似合う形、(グリさん曰く、どんな人にも似合う帽子はあるとのこと。)雰囲気などを、的確にアドバイスしてくれて、迷いなく、オーダーをすることができた。


私はこの帽子のリボンの色だけ、紫色に変えてもらうことにした。
同じ紫色にもいろいろあって、リボンの見本を見ているだけでも楽しい!

グリさんの帽子は、形の美しさは然る事ながら、色使いが絶妙。
日本では、千駄木のお店の他、バーニーズや伊勢丹などでも扱われているとのこと。
ロンドンから来たという話をしたら、ロンドン帽子デザイナーのフィリップトレイシーの店に行かれた話など、楽しそうに話してくれたグリさん。グリさんのブログには、帽子のお話以外にも、食べ物やアートのお話など、ちょっとした小話がいつも盛り込まれていて、いつも、ああ覗いてみてよかった!と思う。

この日も、近所のおいしいお店などを聞いたら、(やっぱり食いしん坊の私にとって、千駄木辺りでは、食ベる楽しみは不可欠!)快くいろいろと教えてくれた。


娘が「おそばが食べたい!」と言うので、おそばの「鷹匠」へ。


千駄木名物!?アイスもなか。

この夏は行けなかったけれど、今度帰国したら、またもうひとつ、とっておきの帽子を手に入れたい。
去年の夏から始まった、この夏の思い出…、グリさんの帽子。
(私の物だけど、娘の方が似合う?)

Summer Blue Flower

2010-10-20 23:48:36 | flower


「何色の花が好き?」
そう聞かれると、迷ってしまうけれど、
夏は断然青い花!青い花にばかり目が行きます。

紫陽花の深く鮮やかな青、アザミの濃い青、ちょっと紫がかったアーティチョーク、
そしてデルフィニウム、繊細な花弁はドキッとするくらい鮮やかに、限りなく限りなく澄んで…
ナイジェラ(日本だと二ゲラ)、スカビオザ、コーンフラワー…。


花弁一枚一枚の青が重なり合って、全体の色に深みが出るのか…。




青い花に、ユーカリの葉を合わせると、柔かさを加えてくれるのが好き。
コンテイナーもシルバーのZincでユーカリのシルバーグリーンを演出。

もっとはっきりとした、黄緑色のグリーンを合わせても、青の透明度が高く見えるかな?
黄緑色、PittoMiniなどが加わると、一気に花の表情が明るくなります。
ポピーシードなど、実ものも可愛らしく…。




一本の紫陽花には、一体いくつの花弁が付いているのでしょう。
それだけでも、まるで大きく束ねたブーケのよう。

青い花が好きな人は、結婚するなら絶対に夏ですね。
それとも結婚が夏に決まったら、青い花が好きになるのか?
青い花だけのウエディング、いつか手掛けてみたいなあ…。