※前回の大宮の記事はこちら(40節・山口戦、2-1)
※前回の長崎の記事はこちら(38節・横浜FC戦、0-2)
<前節からの変更>
大宮=11人とも変更無しと、整然とした組織力で最終戦を締める格好だ。
長崎=変更は4人、そのうちの1人はGKで笠原→富澤へと代える。後は右サイドバックが高橋→米田で、米田の居た左SBに加藤聖。ボランチの片割れがカイオ・セザール→加藤大で、エジガル・ジュニオがFWに入り植中と2トップを組む。そして右サイドハーフが澤田→大竹。
降格はしなかったものの、組織力の向上が見られないままリーグ終焉を迎えてしまうクラブも当然あり。
長崎がそれに当たり、目下6戦未勝利(1分5敗)で巻き返す気配が無いままとうとう最終節となりました。
それでも前節までプレーオフ圏入りの可能性があったという立場で、それだけにかえってこの不振は予想以上に応えたようであり。
仙台もそうだったように、負けが込む事で「昇格を狙えるほどのチーム力は無い」と自身で思い詰めてしまう心理的状態を強いられるのが何よりも辛いもの。
特に4連敗中の現在は、いずれも前半に先制点を与えてしまいそのまま敗戦と、一度リードを奪われれば跳ね返す力も気力も無く。
残された最後の試合、勝利云々以前に、それを払拭する姿勢をまず見せたい所。
前半1分に早くもチーム得点王(11点)のエジガルがシュートを放ち(枠外)、その気概を攻撃面で見せ付け。
しかしその後、大宮の右サイドからのセットプレー攻勢に押し込まれます。
スローイン→コーナーキック(クリアボールを栗本ミドルシュート・ブロック)→スローインと続き、奥を取ったのちの手前からの(岡庭の)クロスで目線を変え。
そして後方から走り込んで放たれた栗本のヘディングシュートがゴールネットを揺らし、圧力で押し切ったというような先制点を挙げた大宮。
その後も大宮の右サイド攻勢は続き、5分にパスワークでエリア内右を突き、こぼれ球を矢島慎也が中央からのシュートで締めるもGK富澤がキャッチ。
6分にも中野の右奥からのクロスを栗本がダイビングヘッドで合わせる(枠外)など、早くも長崎の「敗者のメンタリティ」が顔を覗かせる流れに。
長崎は、左SBの加藤聖が上がり目になるというのが攻撃時の基本形なので、それに従うかのように守備面でもそれを突かれていた感があり。
そんな弱点が相手からも露骨だったのか、普段は守備的な戦いを繰り広げる大宮も、グラウンダーでのパスの割合を多くして攻撃。
11分には最終ラインから右サイドで前進するビルドアップで労せず前進していくなど、長崎にとっては早くもドツボに嵌っていく感覚に襲われていたでしょうか。
何とかその流れを断ち切る長崎、自身も最終ラインから繋ぐビルドアップで反撃。
標的となっていた加藤聖も、マイボール時には前線に上がったうえで、下がって受ける左SHのクレイソンの攻撃力を引き出し。
そして21分、エリア内左角付近でのポゼッションから、クレイソンのパスを受けた鍬先が再度エリア内を窺わんとした所を大宮・小島に倒されて反則。
これで左ハーフレーン・エリアからすぐ手前という位置で直接フリーキックを得る絶好機となり、キッカーはクレイソン。
右足でゴール右を狙ったシュートで、GK志村の逆を突いて見事ネットに突き刺します。
前半のうちに追い付いた長崎、最初の課題である「リードされたらそのまま終わり」という意識を払拭する事に成功しました。
大宮はその後も右サイドから執拗に攻撃を仕掛けるも、柴山の突破力に依存したような形が目立ち、先制点のような良い形でのクロスは見られず。
また、曲がりなりにも攻撃が通じる状況を受け、長崎のビルドアップに対しても果敢に最終ラインにまでプレッシングにいく姿勢が目立ち。
普段のような強固な4-4-2ブロックが乱れる事となります。
35分にはパスワークで長らく攻撃を続ける長崎、一旦途切れるも大宮がパスミスという隙を見せた事で、加藤聖縦パス→エジガルポストプレイ→植中シュート(GK志村セーブ)と決定機。
続く右CKではグラウンダーでのクロスと変化を付け、ニアサイドで受けた米田がシュート(ブロック)と、揺さぶりを見せる精神的余裕も出てきたようであり。
その後も大宮のプレッシングを受けても屈せず、最終ラインからのビルドアップで敵陣へと運んでいき応戦。
ファビオ・カリーレ監督が普段から「ボールを地面に付けて攻める」と語るポゼッションの姿勢は、ここに来てようやく形になってきたようでありました。
スコアは1-1から動かずに前半を終え、泣いても笑っても残り45分の今シーズン。
後半2分、大宮は例に拠って右サイドから前進。
栗本縦パス→富山ポストプレイで叩かれたボールを小島がスルーし、中央で矢島慎が受けてキープするも奪われ。
逆に長崎は3分、加藤大縦パス→植中ポストプレイがディフェンスに阻まれるも、こぼれ球を大竹が拾ってドリブル。
そしてラストパスを受けたエジガルがエリア内に進入、そのままシュートを放ってゴール右へと突き刺し。
楔のパスからの流れの差異が露わになり、36節(水戸戦・1-0)以来のリードを奪った長崎。
追い掛ける立場となった大宮。
それでも長崎のディフェンスは盤石では無く、長短のパスを絡めての攻撃で反撃体制を採ります。
しかし8分に長崎の攻撃、エジガルの左サイドのドリブルで奥を突いての戻しから、鍬先が中央へと流れミドルシュート。
これを大宮・袴田が頭部でのブロックで防ぎ、このガッツプレイで巻き返す機運が生まれたでしょうか。
12分に小島の縦パスを中央で受けた富山がエリア内を突き、こぼれた所を柴山が拾ってシュート。(GK富澤キャッチ)
13分には岡庭が右サイドをドリブルし、そのままサイドからエリア内右へと流れてシュート(ブロック)と立て続けに攻め立て。
その流れのままに迎えた16分、長崎のクリアボールを栗本がダイレクトで前方へ送り、左サイドで受けた中野が細かいタッチのドリブル。
エリア内左奥を突いて左CKを得ると、キッカー矢島慎のクロスをニアサイドで中野がフリックにいき、長崎・エジガルに当たるもかえって巧くファーサイドへ流れた所を袴田が合わせシュート。
攻勢をセットプレーで締め、同点に追い付きます。
なおも最終ラインからの組み立てで攻め込まんとする大宮。
長崎はやはり前線の守備という面はほとんど落とし込まれておらず、決してポゼッションに秀でている訳では無い大宮サイドのビルドアップを許す始末であり。
そして19分左サイドからパスを繋いだ末に、小島のスルーパスを左サイドで受けた矢島慎が、レーンチェンジでエリア内左を突き。
この動きを長崎・米田が後追いで倒してしまうと、反則の笛が鳴ってPKとなります。
キッカーは柴山が務め、落ち着いてゴール右へと蹴り込みGKの逆を突いてゴール。
これで3-2と、逆転を果たした大宮。
再び追う立場となった長崎。
当然反撃を仕掛けるもその攻撃は何処かぎこちなく、距離をとったグラウンダーのパス中心に大宮のブロックを揺さぶらんとするも中々実らず。
得たCKでも、ショートコーナー→戻しのパスでオフサイドとなるシーンを作る(27分)などチグハグな流れのなか、ベンチが動きます。
エジガル・大竹に代えて山崎・クリスティアーノを投入。(大宮も29分に矢島慎→大山へと交代)
エジガルに代わって植中が彼の役(降りてのポストワーク兼フィニッシャー)を務める事となりましたが、32分に加藤聖の斜めの縦パスを降りて受け、山崎を経由して右のクリスティアーノに展開と良い流れを創出。
このタイミングでさらにベンチは動き、クレイソン・鍬先→笠柳・五月田へと2枚替えを敢行します。
年齢的にもフレッシュな選手の投入で変化を加えると、直後の33分右サイド奥でのスローインからの攻撃で、米田がクロス。
これをファーサイドで植中が折り返し、山崎がヘディングで・五月田が足で詰めにいくもこぼれ、一旦拾われるも山崎が素早く奪い返してエリア内右奥からグラウンダーでクロス。
中央で植中が合わせて仕上げ、カオス状態のなか得点を奪って同点に追い付いた長崎。
尚も攻め立てる長崎、明らかに動きが良くなった植中・個人技溢れるクリスティアーノ・若さを押し出し推進していく笠柳らをフルに活かし、大宮ゴールに迫っていきます。
こうなると大宮にとっては苦しく、中々自分達のターンを作れず自陣で釘付け状態にされていく流れを強いられ。(これを簡単に打開できるのならば下位には居ない)
3失点目の場面で、エリア内でボールを拾った際にセーフティにクリアする意識が皆無だった事も悔やまれる状況で、残留決定後の消化試合・そしてこの日の撃ち合いの展開という要素もそんな意識の緩みに繋がっていたでしょうか。
その雰囲気に呑まれていたのか、カードを出し渋っていた相馬直樹監督も、38分という遅めの時間にようやく2度目の交代を敢行、富山・中野→河田・武田へと2枚替え。(同時に長崎も櫛引→カイケへと交代)
それでも自陣深めでクリスティアーノにボールカットされたり(41分)、CKから二次攻撃を仕掛けんとする所をバックパスを笠柳にカットされてカウンターを受けたり(42分)と、ミスを目立たせてピンチを招いてしまう大宮。
45分に奮闘していた柴山が負傷という形で交代を余儀なくされてしまう(泉澤と交代・同時に栗本→吉永へと交代)と、突入したアディショナルタイムは長崎のペースとなります。
グラウンダーでの前進に、カイケのロングボールとパワーも加わった長崎。
4点目を狙わんと果敢に何度もエリア内へボールを運んだものの、フィニッシュに繋げる事は出来ず。
最後は中盤からのFKで、GK富澤が放り込んだものの実らず、試合終了を告げる笛が鳴り響き。
ともに苦しいシーズンを締めるに相応しい、痛み分けという結果に終わりました。
長崎と大宮、順位は違えど2年連続で監督が途中交代という、奇しくも同じ流れを描いているクラブ。
フロントの迷走感も滲み出る中、果たして来季は同じ事を繰り返してしまうのか否か、今から気になってしまう所です。