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DAZN観戦 2019年J2リーグ第21節 レノファ山口FCvsFC町田ゼルビア

2019-07-11 12:41:22 | サッカー視聴記(2020年以前)

※前回の山口の記事はこちら(13節・大宮戦)

前年はJ1ライセンスが無いにも拘わらずJ2優勝争いに加わった事で、J1昇格を目指すクラブはおろか、J1での残留争いに巻き込まれていたクラブからもその成績・試合結果が注目される現象を発生させた町田。
一方J2で史上初の降格を味わったクラブでもあり(2012年)、この時はJ3リーグが生まれる前だったので、JFLへと舞い戻る破目に。

現在監督を務める相馬直樹氏は、初めてJ2に参入する以前にも1年間町田の監督を務めていた経験があり(2010年)。この時もJFLで3位と成績面ではJ2参入条件を果たせたものの、ホームスタジアム・町田市立陸上競技場の規模面で基準を満たせず無念の参入断念。
その後相馬氏はこの時の成績に目をつけられたのか、翌年J1・川崎の監督に就任します。

典型的な監督の引き抜きという図式が想像でき、ここで相馬氏が川崎で結果を残していればその後の町田の運命はどうなっていたのか。
しかし現実には相馬・川崎の成績は伸び悩み、2年目序盤で監督解任の憂き目に。

2014年に再び町田の監督に就任した相馬氏。この間に町田はJ2入りを果たすも前述の通り降格し、2013年再びJFLで戦う事になるも、J3リーグ誕生とともに参入が決定し翌2014年のJ3リーグ初年度を戦うという状況でした。
ここから町田は上昇機運に乗り、相馬氏は町田の監督に籍を置いて6年になるというのだから運命の巡り合わせは誰にも解らない。

現在の町田を象徴するサッカーとして、ワンサイドアタックと呼ばれるものがあります。
守備面ではコンパクトな陣形を保ち、攻撃面ではワイドに幅と奥行きを使うというのが現代サッカーの基本的な原則です。

しかしこのワンサイドアタックでは、攻撃面でも陣形を狭く保つのが特徴で、左右どちらかのサイドに選手を集中させて攻めるのが特徴。
これにより常時選手間の距離が近くなり、攻守の切り替えを容易にし、攻撃面では速攻からのセカンドボールの回収が容易になる、守備面ではカウンター防止のプレスを掛けやすくなるといった効用が生まれるのが利点となります。
こうした特色がハッキリとしたサッカーで、前年は出色の成績を残し一躍注目を浴びた町田。
逆に選手間の距離が近すぎるためショートパスを繋いでいくのには弊害になりますが、アバウトな縦への放り込みでチャンスが掴める・仮にチャンスにならなくても守備への切り替えが容易に行えるのでデメリットは少なくて済みました。少なくとも去年は。

新規スポンサー(サイバーエージェント)も獲得し、将来のJ1昇格に向けての準備が進んでいっている町田。今季も前年と同程度かそれ以上の成績を……との期待が膨らみましたが、ここまでの成績は勝ち点25の15位と伸びず。
特に有力クラブにワンサイドアタックが対策されてしまっているな、というのが個人的な見立てでありますが、それが顕著だったのが開幕直後の3節・山形戦。
簡単に書くと、アバウトな縦へのボールが簡単に跳ね返され、それによりスローイン数が激増。
攻撃のリズムが全く掴めない試合展開となり、こうなると攻守一体の戦術を採っている町田は守備面でも崩れてしまいます。
前半で1失点、後半反撃に出た所2失点で結局0-3で敗北。

その後戦術をパワーアップさせようと相馬監督以下首脳陣・選手達は奮起しているらしいですが(繊細はこの記事)、この日はどうだったか。

前半立ち上がりの2分、山口が決定機。
山口が敵陣でボール奪取し、三幸→吉濱と繋いでからペナルティエリア右へのパス。
そこに右ウイングバックの高木が走り込みシュートを撃ちますが、ポストに直撃しノーゴール。
いきなり町田側が肝を冷やす場面に。

その後は両チームともスローインが多発。
山口は他クラブと同様に町田の縦パスを跳ね返すだけで無く、町田のセカンドボール狙いも悉く潰します。(3バックの左に入っていた菊池の活躍が目立った)
そして自身も速攻を目指すので、町田側も跳ね返し→山口のスローインが増えるという展開に。

町田側はスローイン後も狭いエリアで繋いで、同サイドでクロスを上げるのですが決定機にはなかなか結び付かず。
山口側は町田選手が同サイドに固まっているのを突き、頻繁にサイドチェンジを利用していました。

4分、右タッチラインからのスローインを受けた佐藤が左サイドへ展開→左WBの瀬川に渡りクロス(ミスキックでゴールライン割る)。
これを皮切りに、9分にも右からのスローインを山下→高井→三幸と繋いでから左サイド奥へロングパス。瀬川に渡ったものの、この場面も瀬川がクロスをミス。
20分にもスローインから空中戦を経てボールキープした三幸が右サイドへ展開(その後高木→前クロスも流れる)という様に、山口の狙いは明らかでした。

そしてその後は違う攻撃も生きてきます。
25分、センターバック楠本のロングパス一本(クリア?)でFW・山下がエリア内で収めてシュート。(町田GK増田がセーブ)
27分、左サイド奥からスローインされたボールを佐藤がダイレクトでエリア内に。このボールがこぼれてチャンスになりかけますが、高井が詰める前にクリア。

着実にダメージを受けつつある町田の守備、前半30分過ぎ辺りからはカウンターを連続で受ける事に。
33分、自陣からのクリアを受けた山下が右サイドへ展開し、ボールを受けた吉濱が中央へ。
そこから高井→山下へと繋ぎ、山下はワントラップを挟んでシュート。(DFがブロック)
何とか防いだものの、36分にも山口のカウンター。
ここでも吉濱→三幸→高井と右から左へのサイドチェンジが炸裂し、ボールを受けた高井は一気にエリア内までドリブルで進入。
町田DF・佐野をドリブルでかわしてそのままシュート、ゴールに突き刺さり山口が先制に成功。それはまさに町田守備の壁を粉砕したかのようでした。
その後の前半戦はクロスの応酬に終始し、1-0で終了。

リーグ序盤から下位でくすぶっていた山口ですが、ここに来て5戦3勝2分と好調期に突入。
その要因が3バック(3-4-2-1)へのフォーメーション変更と非常に解り易いですが、これにより選手起用にも迷いが無くなってきたという印象を受けます。

補強の目玉だったであろうFW・工藤(リーグ序盤は腕にギプス嵌めたまま出場を重ねてましたね)はこの所ベンチを温める日が続き、佐々木もベテラン・佐藤を休ませるような起用に落ち着いています。(この日は累積警告で出場停止)
田中パウロ淳一(以下パウロ)も含め補強した選手は苦境に陥っている状況ですが、やはりこのシステムだと前線にはボールが収まる選手は必須ですから仕方無い。
一方システム変更で菊池・瀬川といった選手が日の目を見て、山田→吉満というGK交代策も今の所は上手くいっている。

後半が開始し、立ち上がりペースを握ったのは町田。
サイドハーフの中島とFW・土居の位置を入れ替え(といっても町田の圧縮された陣形で初見では解りづらい)、前線の起点を増やすのが狙いだったでしょうか。ロングボールからチャンスを作る展開が目立ちました。
後半6分、奥山の左サイドへのフィードから富樫→下坂へと渡りクロス。山口GK・吉満がパンチングしたこぼれ球を奥山がミドルシュート。しかし戻った吉満に阻まれます。
10分には中島の縦パスが富樫に渡った後、左サイドで富樫→森村→下坂と繋ぎ、最後は下坂がカットインからシュート。(DFがブロック)

しかし山口もロングボールで応酬し結果を出します。
18分、ゴールキックを山下が落とし、吉濱がダイレクトで右サイド奥へパス。
受けた高木はグラウンダーで中に入れ、三幸→吉濱と渡りシュート、DFに当たって右からのコーナーキックへ。
キッカーの吉濱はニアにクロスを入れるとファーにこぼれ、ここにフリーで走り込むのは前。
シュートは町田ディフェンスのブロックを掻い潜り、GK増田が辛うじてさわるも見事にゴール右に突き刺さりました。

その後もカウンター中心に町田を脅かし続ける山口。
後半25分には瀬川のスルーパスで山下がGKと一対一の場面を作りますが、山下の町田GK・増田の横を抜くシュートはゴール左へと外れてしまい得点ならず。
一方の町田はジョンチュングン・戸高(それぞれ土居・富樫と交代)と攻撃的な選手を投入し攻勢へ。
しかし2点差なため守りを固める山口に対し、戸高のドリブルでエリア内進入を図るという「時既に遅し」な状況が目立ち、決定機は作れず。

逆に山口は後半41分、前のサイドチェンジを左サイドで受けたパウロ(吉濱と交代で出場)がクロス。
これが町田ディフェンスを越える格好で、綺麗にファーサイドの山下の頭に合わさる形に。
先程決定機を外した山下、名誉挽回のヘディングシュートで3点目、自身も3試合連続ゴールとなりました。

試合はそのまま3-0で山口の勝利。
町田側はちょっと行き詰まりを感じる敗戦となりましたが、折しもこの試合はリーグ前半の最後の試合という節目であり、新しい事を導入するには丁度良いともいえます。
ここから昨年後半の再現を果たす事は可能でしょうか。

コメント
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