ぼくらのありのまま記

ぼくらは
こんな大人になりました。

一本810円の車海老を買った。

2017-09-25 10:14:08 | 東京日記
「海老好きな子が誕生日だから」とリクエストがあったので、一本810円の海老を20本買った。

「一本900円もした」と言ったけれど810円だった。
90円サバ読んでましたw




飲食店は仕入れ値の3がけ(3倍にして売る)と言われているので、
一貫2400円分の車海老。
前働いていた鮨屋は大トロ1500円。
中トロ900円だったので。
3貫で4800円ですね笑。
まぁ、でもすっごい良心的なお店で高いネタは2がけで売っていたから。
810円の車海老だったら1600円、もしくは、1400円くらいで売っていただろうなぁ。


1400円で売っても約590円は手元に残る。
例えば100円分のイワシを一貫握って、3がけで200円儲けるよりも、
2がけ以下でも、車海老を一貫握って600円手元に残した方が、
一貫で手元に残るお金は多い。

「一貫ずつの原価計算よりも、トータルで、
今月はいくら仕入れて、いくら儲かったのか。」
ざっくりとそんくらいの計算しかしていないけれど。
20年もお店を切り盛りして、今でも第一線で、
予約が取れない、素晴らしいお店だった。


車海老に話を戻そう。

この海老を買った場所は、夫婦でやっている車海老専門店。
4代目のご主人で、市場が日本橋にある時代からやっているお店。

「豊洲には移転するんですか?」

「もうここで終わり。こんなバカな仕事だれも継がないから」

この海老屋さんは生きている海老を競りで入札して、
小売で、飲食店相手に小売をしている。




その日仕入れた海老は、翌日まで売らないそうだ。
翌日まで元気でいられる、生命力の強い海老だけを選んで、売る。
そうでないものは、B品として売る。

B品とA品。どれだけの違いがあるのか、、、。
僕にはまだわからないけれど、何十年とそうやって選別をしながら、車海老なら◯◯さん。
という信用を得ている車海老屋さんだ。ここで商売を続けられている職人がそうやって選んでいるんだから、
それは勉強させてもらうしかないだろう。



そういうこだわりのおかげで、
いいものがちゃんと、届く。

その選別をもししなかったら、、、。
良いも悪いも混ぜて売ったら、
結局「悪い」に引っ張らられて、
良いも安く悪くなっていく。

10本買って2本がいまいち。
それで、その2本を食べたお客さんにとっては、
他の8本が良い海老だったことは関係なくなる。



高くしたくて、そうしているわけではなくて、
こだわった結果そうなってしまった。
という気持ちが810円になったということだ。


そんなことを、考えたら、やっぱり一本810円の車海老を買いたくなってしまうのだ。

おやっさんが「こんなバカな仕事はだれも継がないよ」と言った一言の
「バカさ加減」は狂気じみた職人気質だったり、
こだわりだったり、採算度外視な部分だったり、するんだろうな。

「あれ、この前も来たよね」

「そうなんです、最近、東京帰って来て」


「そうかい。今日は何本欲しいの?」

「20本です」

「キロ15000円で20本だと、、、だいたい15000円かな」

(まじか、、。海老だけで15000円かよ。。。)

「じゃあ、、、、10本ください。」


「はいよ。」

と10本買った。

選んでもらったエビがめちゃくちゃ、元気で。
あぁ、やっぱり、あの人にも食べさせたいなぁ。と思って。

「あ、やっぱり、もう10本ください。」

と予定通り、もう20本買った。

結果は、、、。まぁ、想像にお任せします。



来年、市場は豊洲に移転する。

今日、銀座の鮨屋で、誰かが食べた車海老の握りは、このおやっさんが選んだ車海老かもしれない。
食べている人が、誰も知らないまま、ひっそりと、いつのまにか、舞台から姿を消すのだろうね。

名前も知らないおやっさん、今日もありがとうございます。


このタイミングで東京にいるのも、何かの縁だろうから。
全国の産地にも通いたいけれど。
築地にもできるだけ、通い続けようと思う。


流通と、IT革命で、産地直送が流行っているけれど、
やっぱり築地で働くキュレーター機能への信用は、
なかなかのものだよ、本当。






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