金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【馬券の払戻金への課税問題①】 インスタントジョンソンのじゃい氏の嘆き!

2022-06-10 05:49:50 | 競馬

 本日は馬券の払戻金への課税問題をテーマにします。NET上で話題になった、タレントのインスタントジョンソンのじゃい氏が税務調査の結果、追徴課税を受けた件が本件記事のきっかけであります。

 

 この話を論じる前にまず、馬券の払戻金の仕組みについて復習しておきましょう。馬券の払戻金の原資は、当然ながら馬券の売上金となります。ただし、その売上金から、まず胴元であるJRAの取り分国庫納付金が差し引かれます。そのあとで、当り馬券の数に応じて分配されて支払われるのが払戻金になります。

 胴元の取り分10~20%国庫納付金10%。胴元の取り分の10~20%というのは、馬券の種類によって異なります。単勝や複勝は10%、WIN5は20%というように、一獲千金タイプの馬券の方が控除率が高くなる仕組みです。JRAは胴元取り分の中から、競馬の運営費や賞金などの支出を賄うことになります。

 ここで注目は、国庫納付金が10%も存在すること。ちなみに、2021年のJRA売上げは3兆1300億円ほどですので、国庫納付金は3130億円だったということ。皆さんが購入した馬券の10%が、当たろうが外れようが、まずは国庫納付金として国に納められていることになります。この国庫納付金は、畜産業振興や社会福祉に使われています。

 

 さて問題はここから。あらかじめ10%もの税金を源泉徴収されているにも関わらず、馬券が当たった場合には、その払戻金を一時所得と見做して課税されるのが、今の所得税法上の決まりであること。ただでさえ、20~30%の控除率のせいで、馬券で稼ぐことが難しいのに、たまに当たった馬券の年間合計額が、一時所得の申告不要制限の70万円を超えた場合は、この当たり馬券の金額に対して税金を納める必要があります。しかも、外れ馬券は費用とは見做されません

 これが今の所得税法であり、競馬ファンからすると、どう考えても納得できない内容のまま、この所得税法は改正される見込みが立っておりません

 

 そんな中で発生したのが、表題の「インスタントジョンソンのじゃい氏への追徴課税事件」

 じゃい氏は、自他ともに認める「競馬芸人」であり、馬券上手でも有名な方です。JRAや地方競馬の主なレースで馬券を買って、その話題でBSやCS放送、あるいはYouTubeなどでも活躍しているタレント。彼の場合、JRAのWIN5や、地方競馬の重賞レースで、数千万円レベルの馬券を何回か当てていて、それをYouTubeで公開したりしています。

 じゃい氏は、払戻金に関する税務訴訟についてもよく勉強しており、平成29年12月15日最高裁判決『馬券購入の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して、一時所得か雑所得に区分される』を根拠にして、毎年の確定申告において、当たり馬券-外れ馬券がプラス収支になった時には、きちんと『雑所得』として計上して税金を支払っていた模様。

 ところが、今般の税務署の判断は、この所得は『雑所得』ではなく『一時所得』であり、外れ馬券をコストとして差し引くことは許されないとの判断。すなわち、年間の当り馬券だけを足し上げて、その払戻金額に対して所得税を課したということ。

 

 う~ん‥。これは、税務署の方が酷い気が致します。だって、実際に儲けた金額を大幅に超える金額を、追徴課税として納めろと迫っているのですよ。じゃい氏からすれば全くの赤字になります。これは酷いと思います

 

 でも、税務署は税務署で理屈があるのです。すべては、今の所得税法の規程どおりに課税しただけ。理不尽と思うならば、裁判所に訴えるか、法律改正を行ってください、てな感じのスタンス。

 今の所得税法は、「競馬なんてやっても絶対に稼がせない。外れても、国庫納付金を頂くし、当たればその分税金を取って、絶対にプラスにはさせない」という内容。こんな理不尽な法律が、なぜまかり通っているのでしょうか?(続く)


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