コンサルティング会社に「ブランド化」の相談をするとまず、必ず「ロゴマーク」や「商品サービスのネーミング」がテーマになります。それはそれで大切な事項なので、話題にすることはけして間違ってはいないのですが、「優先順位」が違っていると思います。
ブランドの源泉は、「品質へのこだわり」に尽きると考えています。
「Gucci」や「Louis Vuitton」の商品がブランド品と呼ばれるようになるには、そのデザイン性はもちろんのことではありますが、個々の商品に関する「細かな品質のこだわり」の積重ねが根底にありました。
バッグであれば、革を繋ぎ合わせる部分の裁縫技術、金具ひとつひとつの安全性、見えない部分であるバッグ内部の使いやすさや手触り感など、他社製品に比べて、子細な品質の差別化を追い求め続けて、真似をされても、さらにその上をいく「品質へのこだわり」の継続があってこそ、「ブランド品」と呼ばれる存在になっていくのです。その品質の高さがあるからこそ、「Gucci」や「Louis Vuitton」の商品マークが「価値を示す標」となった訳です。最初から、あのマークに価値があった訳ではありません。
サービスのブランドも全く同様です。
航空会社を選ぶ際に、ANAやJALを選択する理由は、何も日本語サービスだけではありません。米国の航空会社に比べて、細かなサービスレベルの違いがあるからこそ、料金の高さを超えて選択している訳であります。ひとつひとつの違いは子細なことではありますが、この違いが5つあれば「差別化」、20もあると「ブランド」と呼べるレベルになります。
以上のように、商品サービスの「ブランド化」というのは、絶え間なく「品質へのこだわり」を継続することと同義であると思います。そういう努力を続けた商品サービスには、競争のために「値下げ」の必要はありません。堂々と希望価格で提供することができるのです。
どうして急にこのような話をしたかと言うと、「サマンサタバサ」というファッションブランドが競争力を失くして、8年連続で赤字が続いているというたニュースが流れてきたからです。ビジネスモデルとしては既に崩壊していると言わざるを得ません。
一時期、有名モデルと米国の富豪姉妹をCMに使って、奇抜で派手なデザインを武器に一世を風靡したファッションブランドでありましたが、高価格の割にそもそも製品の品質が宜しくなく、実際手に取ってみると「安っぽい」などの悪評が立つと、当初の人気は瞬く間に消えていきました。ブランドとは単なる見せかけではなく、「品質へのこだわり」こそが源であることを示す、悪い事例となりました。
ちなみに、「商品のブランド化」以上に、「サービスのブランド化」というのは時間がかかる上に、その地位から落ちるのは速いもの。サービスそのものが担い手の人間の育成に懸かっているが故に、サービス品質の継承が難しいことが理由。高級ホテルの従業員や航空会社の客室乗務員、そして富裕層ビジネス向け営業職員などが代表的な事例です。
短い時間で一気に垂直立ち上げなど、以ての外であり、それでは崩壊も早く訪れるというもの。
自戒したいと思います。