
田園都市線用9000系として平成の初めに登場し、平成末期に田園都市線から引退した2000系が、平成最後の年に9020系として生まれ変はり、大井町線専属となる。
車体はそのままに足回りだけを交換し、別形式として再登場させる東急のお家藝が遺憾なく発揮されたこの車両、遅ればせながらやっと出逢ふ。
2000系時代の特徴とも言へる、斜めに仕切りを入れた車内の貫通扉は、

9020系にもちゃんと受け継がれてゐるのが、まずは嬉しい。
だうせ田園都市線から引退して10両編成を崩すなら、せめて一編成だけでも東横線の各停か隔停(いづれも8両編成)に入ってくれたら……、なんて甘い願望が叶ふわけもなく、

もと東横線の9000系と並んだところを撮って、東急のまうひとつのお家藝、“地方鉄道への売り飛ばし”がなかったことを、とりあへず佳しとする。
それにしても、従来の車両を別形式として再登場させる技術があるのなら、他社線ソックリのつまらん新車など造る必要もないと思ふのだが……。
そんな東急線では、平成時代の出来事や現象を、車内の広告枠を使って振り返る車両を運行してゐる。
私がいちばん目を引ゐたのは、やはり東日本大震災のことである。

いちばんの平和は人の為せるわざよりも、
「何事も無いこと」であることを、
自然は私たちに厳しく教へたのである。