幸ひ昼過ぎに今日の用件が片付いたので、折から雨がパラつきだしたこともあり、すぐ帰路につく。
地元の驛に着くと、いつもなら閑散としてゐる時間帯のはずなのに、上りも下りもやたら人が多く流れてゐる。
それらの風体は、ほとんどが勤労者のそれではない。
沿線のどこかで、大規模な催しでもあるのだらうか。
それにしても……。
私はすっかり氣味が惡くなり、我が城へ逃げ込む。
落ち着いてから、この「今までに経験したことのない」國難下でどう生活するべきなのかを真剣に考へた昨春を思ひ返して、あれからまだ一年しか経ってゐないことに今さらながら気が付き、顔が固まる。
この人災疫病の真實(ほんたう)の症状とは、
もっともっと、
別のところにある。
だから、
クスリの効果が上がらないのだ──