坂道を、何か黒いものが動いてゐるのでよく見たら、尺取り虫らしき近隣(?)住民なり。

健氣にも映るその動きに、「あなた、踏み潰されないやうに、氣をつけてね」と、つひ聲をかける。
實際、この坂道はヒトや、ヒトが動かす大きな物がちょくちょく通り過ぎて行く。
ヒトには平穏に映るこの住宅地も、この小さな生き物の目線で見たら、あちこちにキケンの潜む地帯ではないか。
いや、ヒトとても同じはずなのだが──同じ生き物ゆゑ──、ヒトはオメデタく出来てゐるので、そこまで氣が回らないのだ。
もしこの小さな生き物からの視線で浮世を見たら、私などはとてもやっていけないだらう……。