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迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

いなりっこのねがうもの。

2016-10-02 17:48:49 | 浮世見聞記
神奈川県三浦市三崎、三崎漁港の一角にある三浦市民センターにて、子どもたちによる面神楽「いなりっこ」の発表会を見る。



いなりっことは、“稲荷講”が訛ったものと云われ、今回の演目のなかにも、それに因んでゐると思われる「天狐の舞」と云ふ神楽があった。



中指と薬指を親指と合わせ、人差し指と小指をピンと立てた両手を交互に前へ突きだしながら、大股で膝行する独特の型が面白い。




最後に出た「恵比寿の舞」は古へより大漁祈願をこめて舞われる演目ださうで、いかにも漁の町らしく、



島根県の美保神社―恵比寿様の総本宮を先月に旅行したことを、思ひ出した。



いなりっこの特徴と思われるものに、大勢が登場する時と退場する時、全員で輪になって賑々しく手振りを見せる型がある。



輪は“和”に通じる―


かつて山種美術館で、元禄の装ひの男女が輪になって踊ってゐる、「輪踊り図」といふ絵を見たことがある。

戦国の世が去り、ようやく訪れた平和を喜ぶ民衆たちを描いた、微笑を誘ふ美しい作品だ。


子どもたちの一生懸命に舞ふ姿と、

古への絵姿とがひとつに重なったとき、

いつの世も人々が本当に願ってゐるものはなんであるか、

わたしはその向かふに、

確かに見た。

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