
夕方の西の空に、不思議な形の雲が浮いてゐるのを氣にしつつ、隣町の八幡神社の祭禮で、やはり三年ぶりに奉納された江戸里神樂を觀る。

演目は「天の岩戸」──
亂暴者の須佐之男命(すさのおのみこと)に怒って天の岩戸に閉じ籠もった天照大御神(あまてらすおおみかみ)を再び外へ誘ひ出さうと、

天宇受賣命(あめのうずめのみこと)は後に神樂の起源となる賑やかな舞を舞ひ、

さらに天手力男命(あめのたぢからおのみこと)が呼び出され、

見事に岩戸を投げ飛ばすと天照大御神は再びお出ましになり、

それまで闇夜だった世界はやうやく明るくなり、めでたしめでたし。

舞臺進行の段取りがいまいち飲み込めてゐない神サマたちのやうで、ときおり囃子方から叱聲(ダメ)が飛ぶ不思議な神話を覗いたところで、街灯が照らす夜道を帰りけり。