
近頃、東京圏の鐵道ではワンマン運転化が進んでゐるらしい。
と云ふことはつまり、車掌は失職するわけである。
さうすると、今まで車掌だった人はどうなるのか……?
とんだ“人員削減(リストラ)策”もあったものだ。
ただ、長い編成の電車で事故が發生した場合、また車内で氣違ひが暴動を起こした場合、たった一人しかゐない乗務員(運転士)で果たして對処しきれるのだらうか、と云ふ疑問が強く残る。
私はこの國のあらゆる安全對策を信用してゐないので、余計に引っ掛かる。
一部の大企業では正社員の大量解雇を斷行云々。
大企業に勤める家庭持ちの若い男性が、ローンを組んで新築一戸建てを購入してから間もなく人災疫病禍となって収入が激減、ついに家を手放す羽目になったと云ふ、夢のマイホームが本當に夢で終った例も聞く。
しょせん今の時代、正規雇用など何の保障にもならないと云ふことだ。
私はカイシャと云ふ組織に組み込まれた薄給取りとなった經験がないので、仄聞と傍觀でしか、社會人たちの世界は知らない。
だが、朝なのに晩のやうな表情(かお)をして驛で電車を待つ人々を眺めれば、もはやそれ以上を知る必要もない。
私は、自分にあくまで正直な弱小庶民でゐ續たはうが、幸せでゐられる。