電車に乗ってゐて、前々からひとつ疑問に思ってゐることがある。
車内には車椅子用の場所が設けてあるにもかかはらず、實際に車椅子利用者が使用してゐるのを、まず見ないことだ。

たまに乳母車置き場になってゐるのを見るくらゐで、車椅子の場合、そのほとんどが扉前(出入口)の真ん中に、鎮座ましましてゐる。

おそらく、その扉が下車驛でエレベーター近くに當ってゐて、便利なためだらう。
しかし、出入り口にあれだけの寸法の物がデンと置かれてゐたら、物理的な問題として、通り路(みち)の邪魔である。

せっかく座席を撤去してまで設けた空間を──新型車は初めから設けられてゐるが──、肝心の該當者が利用しないことについて、いろいろ言ひ訳もあるところだらうが、私には“御理解いただき”難いことである。
當世流行りの“バリアフリー”とやらも、しょせんはお題目と云ふことか。