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迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

母親といふ薫風。

2019-03-08 23:49:41 | 浮世見聞記



駐車場で、若い母親が車から降りて、生後間もない赤ちゃんを両腕のなかであやしてゐた。


赤ちゃんを想ってだらう、母親は化粧をしていなかった。


我が子を見つめるその母親の表情は、とても優しく、嬉しさうで、綺麗だった。





いま、法律の権限が家庭内にまで及ばんとしてゐる。


しかし、社会をさうしてしまったのは、精神が未発達なまま体(がわ)ばかりが大きくなった、歪(いびつ)なオトナの存在である。


かうした結局はおのれしか愛せない人種に、人間としての幸せを享受する資格など無い。





やがて、用事を済ませて戻って来た若い夫と共に、彼女は赤ちゃんを抱ひたまま車に乗り込むと、駐車場をあとにした。



そこに、“親の愛”といふ麗しい香りを残して……。

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