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迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

狭き大廣間の怪異?

2022-04-01 23:26:00 | 浮世見聞記
部屋に飾ってある模型が倒れてゐることに氣が付く。昨夜二十時五十分頃に發生した、震度三の地震によるものだらうと見當をつける。あの時はちゃうど入浴中で、いきなりグラリと揺れた浴室に、こんな時に地震はイヤだなぁと思ったが、そのままおさまったので、上がる時にはまう忘れてゐた。それから二十四時間以上が経過してから、廣くもない部屋に飾った模型が倒れてゐることに気付くとは、我ながらノンビリだと呆れる。しかし、こ . . . 本文を読む

影櫻抄(かけら) 3

2022-04-01 06:17:00 | 戯作
この町のアパートに引っ越して一年が経った春の一日、アパート裏の石垣の上に鎮座する神社で春季例大祭が行われていたので、休日でもあり出かけてみることにした。地域の人たちが露店で食べ物や生活リサイクル品を売ったり、また満開の桜の下では野点(のだて)が行われるなど、賑やかさと雅びやかさが一体となった楽しい空間が、そこには広がっていた。そんな一角に、古い写真をパネル仕立てにして展示したテントがあり、私は興味 . . . 本文を読む

影櫻抄(かけら) 2

2022-04-01 06:13:00 | 戯作
その後も向かい家の少女とは、門口で時間を問わず会った。いや、会った、というより、向こうから一方的に冷たい瞳で“刺して来た”、と言ったほうが当たっている。私はどう考えても、あの白いワンピース姿の少女から、そのような視線を向けられる覚えがなかった。一体何なのだろう……?私は一度、思い切って少女に問いかけようと試みたことがある。しかし少女は、門口からぱっと奥へ退(しさ)って、今度は樹木に囲 . . . 本文を読む

影櫻抄(かけら) 1

2022-04-01 06:12:00 | 戯作
私がその町の新築アパートに引っ越して、この春で一年になる。二階建て全八室のアパートの、二階角部屋が私の住まいだが、ベランダの外は高い石垣で、眺めはまったくよくない。しかし、深夜だろうがお構いなしに騒音をたてる隣人に辟易して前のアパートを引っ越した私にとって、“静かな生活”こそが求める全てであったので、窓からの景色は問題ではなかった。だから、私が引っ越して来てから間もなく満室となったこのアパートの、 . . . 本文を読む