私が生まれて初めて買った銅版画は山本容子さんの『向日葵』という作品でした。確か今から10年近く前だったかなぁと記憶しています。そもそもこの作品は辻邦生さんの小説「花のレクイエム」の挿画として制作されたようです。十二ヶ月の季節の花に導かれて綴られた十二編の短編集中、八月に登場する『向日葵』を見た瞬間にすっかり心を奪われてしまったのです。
あいにく写真でご紹介できないのが残念ですが、気になる方がいらっしゃいましたら新潮文庫から発刊されてる「花のレクイエム」をご覧になってみて下さいね。
それ以来、時折自分への日頃のご褒美として、銀座の画廊「ガレリアグラフィカ」にて一点づつ買い増し、今では六点ほど所有するに至ったのです。鉛筆を使った軽いタッチのソフトグランド作品(今ほど著名になる前の初期の頃のもの)から、色鮮やかに手彩色された作品(『向日葵』もこのタイプに属する)まで、その時々の彼女の作風が反映された作品たちです。最近5年ほどは新しい作品を購入するほどの余裕もなく過ごしてきたのですが、リビングに6枚並べて飾られた彼女の作品を眺める度に、どこか心が落ち着き、ホッとした安堵感に浸れたりするわけです。
そして、いつしか彼女の作品に浸っている間に、自分でも版画を作ってみたい衝動が芽生え始め、浜口陽三さんのカラーメゾチント作品の感動が引き金となって版画を制作する決心をしたのです。そんな意味でも、山本容子さんの『向日葵』は銅版画や陶芸といった趣味の芸術活動を始める原点の作品と言っても過言ではないのかも知れません。
ちなみに、上段の写真は、『Forever DALI』というタイトルの1989年の作品。私が所有する作品ではないのだけど、私が好きなアーティストの一人 サルバドール・ダリをモチーフにした作品がちょうど見つかったのでご紹介してみました。その他多数の山本容子作品をアートギャラリーミューズにてお買い求めいただけます。
今晩も帰宅したら今一度じっくりと『向日葵』を眺めてみようっと(^^)