マンタマンタに告ぐ

映画・政治経済・日常生活などの観察日記。

●渋谷61

2008-06-03 20:51:55 | Weblog
上空

 弟彗星は、丸くなって滞空している兄彗星の横を、かすめて天に向かった。目指すは、母彗星のいる大宇宙だ。

弟彗星は、巨大な尾を引いている。大気圏、成層圏を越えて、宇宙へと飛び出した。地球から飛び去った。

それでも、弟彗星の尾は、まだ渋谷の交差点の地下から放たれている。簡単には、短時間では消え去りそうもない。

短くても、30分くらいは、かかりそうだ。それだけ、長い尾を引いているようだ。

派出所内
 ミュージックMが、終わる。

 博恵は、ボーっとしながら、窓腰から外を見ている。白い世界を、じっと見つめている。

アフター・ビートたちの姿が、見えているつもりのようだ。

携帯電話で、文字を打っている宏。

携帯電話の画面には、「料金は10万円かかります。1、Yes。2、No」と表示された。

宏は、その料金の高さに驚いた。顔面が蒼白した。そんな、お金はない。迷いに迷った。勇気が出ない。手が震えている。

でも、奇跡を起こしたい。奇跡を起こすのは、神ではない。彗星でもない。自分の強い意志だ。

奇跡を起こすのは、「1歩、踏み出す勇気だ」。

宏は、勇気を振り絞って、「1」のスイッチを押した。

あー、やってしまったー。もう、後悔できない。一瞬にして、10万円が、吹っ飛んだー。

 博恵、毅然と宏の面前に立っている。頬を膨らませている。

 博恵の背後にあるドアの窓には、白く光り輝く微粒子物質に覆われている。外の景色が、全く見えない。

 だが、その白く光る微粒子物質は、派出所内にまで入り込んできた。博恵や宏の足元を、ただよっている。徐々に、充満して行く。

 宏だけには、その白く光る微粒子物質は見えている。

博恵には、見えていないようだ。














●渋谷60

2008-06-03 07:21:45 | Weblog
全員が踊っている。女性たちの膝元まで、白く光る微粒子物質が覆っている。

 お立ち台で踊っているリーダー。足元まで、包まれている。

 その後、白く光る微粒子物質が大量にあふれてくると、女性たちのひざ、太ももにまで達した。

それは、リーダーと同じ高さにまでなった。

 長い髪をなびかせて踊る、女性0。
 踊っている女性たちの手。

 白く光る微粒子物質は、女性たちの腰まで覆った。
 セクシーに色っぽく踊っている、女性P。

 顔は正面、身体は左に向き、両手を交互に上下に動かしている女性Q。白く光る微粒子物質は、胸元にまで達した。

 さらに白く光る微粒子物質は、ダンサー100人の首元まで覆った。不気味な微粒子物質が、渋谷を覆っている。

 お立ち台で踊っているリーダー。その彼女の全身が、白く光る微粒子物質に覆われた。

 101人全員が、とうとう白く光る微粒子物質に覆い隠されてしまった。リーダーの全身が、見えないほどの高さに達した。

交差点周辺が、白く光る微粒子物質で覆われた。白く光り輝く微粒子物質は、交差点の中央付近から山のように盛り上がった。

 その山は、5メートル、10メートル、20メートルと次第に高くなって行く。

白く光る微粒子物質は、まるで生き物のように、高層ビルの壁を伝って登った。

モニタービルAの壁も、伝って行った。モニターの画面が、白く光る微粒子物質に隠された。

白く光る微粒子物質は、50メートルまでの高さにまで達した。そこまでが、限界だった。それは、弟彗星の直径と同じ大きさだ。

膨れ上がった白く光る微粒子物質は、突然、上空に向けて、巨大な光りの柱となって放出された。

直径50メートル。巨大な光りは、天高く伸びた。兄彗星に向かって、伸び続けた。

猛スピードで上空に向かう、巨大な白く光り輝く微粒子物質。

巨大な光りの柱が、上空を目指している。