一口に東北と言っても、大変広うござんす。
今年の甲子園大会で、宮城県代表の仙台育英が初優勝し、「白河の関を越えた!」と話題になりましたが、爆笑問題の太田さんが「こういう時こそ、じぇじぇじぇだろ!」と言ってましたが、
「じぇじぇじぇ」は岩手県久慈地域の極一部で使われている方言で、東北全土で使われているわけではありません。
今でこそ、『あまちゃん』のお陰で全国区になったものの、この言葉を普段使いしているのは、久慈地域の極一部の人達だけです。
ましてや仙台育英は宮城県代表、岩手県ですらない。
使うわけね―だろ!って話。
まあ、太田さんはあくまでネタで言ったのでしょうけど、中には本気に受け取った人達もいたことでしょうね。
じぇじぇじぇについては、今まで散々説明されてきたはずなのですが、誰も聞いていないのかな?日本人の見識は未だ
こんなもん?
さて、ですから私の言う「東北方言」とは、私の住む岩手県南から宮城県北にかけての言葉、決して東北全土ではないということを、
理解していただきたい。
前置きが長くなりましたが、私が紹介したい東北方言に
【かばねやみ】
という方言があります。
これは標準語で言うところの
「面倒くさがり」
という意味です。
「かばね」とは大和言葉で「身体、肉体」を指しており、「やみ」は「病み」ですから、つまり
まるで肉体が病で動けない、かの如くに
面倒くさがって動かない、という意味なのです。
面白いでしょ?ていうか、粋というか
雅、ですよね。
東北方言は田舎方言という印象が特に強い。
まあ確かにそうなのだけれども
その田舎言葉のル―ツには、雅な大和言葉があるのですよ。
【おしょしい】
これは「恥ずかしい」という意味です。
昔、とあるテレビ番組で、岩手県出身の歌手・新沼謙治さんがこの言葉を紹介したとき、同番組に出演していたおすぎさんだったかピ―コさんだったかが、「恥ずかしいをお小水って言うの―!?」とゲラゲラ笑い出した。
新沼さんは良い人ですから、否定もせずただ、困ったような表情を浮かべているだけでした。
ハッキリ言います。これは小便何かじゃありません。
武家言葉で「笑止」という言葉がありますよね。
「笑止な!」といえば「バカバカしい」とか「ふざけるな!」という意味になります。
この「笑止」に丁寧に「お」をつけて「お笑止」になり、これがなまって「おしょしい」になった。
ね、これもまた
「雅」な感じするでしょ?
決して、小便なんかじゃね―んだよ!
その他、目のことを「まなぐ」と言いますが、これは大和言葉の「まなこ」ですね。
顎のことは「あくど」これもまた大和言葉の「あぎと」がル―ツ。
横溝正史原作『八つ墓村』に「竜の顎(りゅうのあぎと)」が出てきますが、これは竜の顎の中、つまり竜の口の中の牙のように、鍾乳石が並んでいる場所という意味で、「あぎと」とは「あご」なんです。
この「あぎと」がさらになまって「あくど」になったわけです。
だから「仮面ライダーアギト」って、「仮面ライダーあご」って意味なんですよね。まあ、それはどうでもいい。
このように東北方言には、雅な大和言葉が元になっているものが多い。当たり前のことながら東北もまた
「日本」
なんだよねえ。