横浜の司法書士安西雅史のブログ

2011-01-23湘南国際マラソンで初のフルマラソンに挑戦しました。

遺言の執行いろいろ

2011-08-19 | 実務ノート

月刊誌登記情報(第597号)の「判決速報」の中に、司法書士立会の下に作成された公正証書遺言が認知症により遺言能力を欠き無効であるとした東京高裁の判決がコメント付で紹介されています。実務上、非常に興味深い判決ですが、その解説中、参考文献として「月報司法書士2010.7月号」が取り上げられていたので、本棚から探して再読してみたら、これが実務に役立つ有益情報満載の内容でした(^^

本号は「死後の法律問題」を題材にして様々な考察を加えていますが、専門家が公正証書遺言の作成や執行に関与する場合の留意点や、実際に司法書士が遺言執行者に就任した場合に立ちはだかる諸問題とその対処方法等がケース毎に掲げられています。

たとえば、遺言執行の前に相続人から遺留分減殺請求を受けた場合の遺言執行者の対処方法として選択肢は以下の3つが考えられるとあります。

1.遺留分の争いが解決するのを待って、執行する。

2.遺留分侵害額を算定し、遺産から遺留分権者に遺留分相当分を渡して、残りを受遺者に引渡す。

3.遺言どおりに受遺者に遺産を取得させ、あとは、当事者全員の問題とする。

実際に自分が執行者となりこのケース ―実務ではこれが一番大変とあります。― に当たったら、どう対応すべきか、悩ましいところです。

また、いわゆる「清算型遺贈」では、相続登記の際に戦災等で戸籍類が焼失している場合の扱い(cf:相続人から登記手続の協力が得られない場合)や、相続登記後の売買における法定相続人への譲渡益の課税の問題など、現在、自分が扱っている身近な業務として非常に参考になる内容でした。

以上。


参考

「月報司法書士2010.7」

・公証人からみる遺言と司法書士からみる遺言(公証人加地誠先生)
・遺言執行(司法書士松井秀樹先生)
・他