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憧れのヨーロッパ陶磁

 国立博物館の前で母と待ち合わせた。乗り物が大好きな息子の手を引いて、母が乗ってくるはずのバスが博物館前の停留所に止まるのを待っていたが、約束の時間になってもちっとも現れない。今度こそおばあちゃんが乗っているかなと言いつつ何台もやり過ごして、おかしいなと思っていたら、自分が時間を一時間間違えていたことに気がついた。
 昼間はだいぶ気温が上がるというので、もうダウンのコートはやめて、薄手のジャケットを着て行ったが、日が差すと暖かいけど風はまだ冷たい。あたりが少し暗くなって日が陰ると、寒くてからだが引き締まる。見上げると、青空に浮かんだ小さなちぎれ雲にちょうど日が入っていて、すぐにまた顔を出すかと思ったら、意外に雲の端っこのあたりでぐずぐずしている。
 開催中の特別展覧会の内容は、日本とヨーロッパ各国とのあいだで修好通商条約が結ばれてから150年であるのを記念して、近代の日本人が出会ったヨーロッパの陶磁器と、それに合わせて、ヨーロッパ陶磁に影響を受けた日本と中国の陶磁器である。
 ヨーロッパの陶磁器、特に真っ白な磁器というのは中国の磁器に影響を受けたものであるというから、そのヨーロッパ陶磁から影響を受けた東洋の陶磁器というのは、何かの縁のような感じである。そうして見ると、西洋的なデザインの中にも、どこかしら東洋の要素が含まれているような気がする。陶磁器というひとつの形態の中に、遠くはなれた東洋と西洋の文化が融合していると考えると興味深い。
 面白いと思ったのは、ミントンとかウェッジウッドとかマイセンとか、ヨーロッパ製の陶磁器のどれにも、純日本的な名称が付けられていることである。ミントン社のリスが描かれた色鮮やかな皿は「金彩色絵栗鼠文皿」、マイセン社の勿忘草が浮き出た砂糖入れは「色絵勿忘草飾合子」。日本人が持ち帰ったり、ヨーロッパから寄贈された作品には、みな日本で日本の名前が付けられたらしい。非常に西洋的な図柄の作品に和名は何となく違和感があるような気もするけれど、現在の、外国語の名前をそのままカタカナ表記したような名称より面白くていい。
 会場には、贅を尽くしたマイセン磁器のテーブルセッティングも展示されていたが、あんなに美しくて高価な食器では、自分のような小市民は落ち着いて食事が出来ないだろうと思う。まさに、展覧会の名前どおり、「憧れのヨーロッパ陶磁」なのだろう。


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