goo blog サービス終了のお知らせ 

川端康成と東山魁夷

 川端康成と東山魁夷。二人の美の探究者のあいだに交わされた往復書簡や言葉をもとに、魁夷の作品を見つめなおすというユニークな展覧会が、京都文化博物館で開催されている。
 東山魁夷の展覧会はだいぶ昔に一度見たことがあるけれど、その頃はまだ子供だったためか、彼独特の青い絵や白い馬のみが、鮮烈に印象に残っていた。だから、今回の展覧会に出されていた魁夷の「青くない」作品は、まず自分にとって新鮮であった。
 それから、魁夷の画面の切り取り方にはっとさせられた。たとえば、「京洛四季」という京都を描いた連作があるのだけれど、大徳寺では寺の塀、桂離宮では敷石というように、素人が思い描くようなその名所の特徴的な風景というよりはむしろ、何気ない一こまが切り取られ、描かれている。そして、その一こまがどれも美しい。魁夷の目が捕らえたその小さな一部分に名刹や離宮の美が凝縮されているかのようである。
 川端康成と親しく交流していた魁夷が、康成の文化勲章のお祝いに贈った「冬の花」という北山杉を描いた作品も展示されていた。私には、杉ばかりが植えられて何の面白味もないように見える北山の風景が、魁夷の目を通せば、こんなにも美しいモザイクの文様のような絵になるのだと思った。
 上の「京洛四季」は、「京都は今描いといていただかないとなくなります」という康成の提言を受けて、魁夷が描いたのだという。山が見えなくなった京都は京都ではない、ということも康成は言っていた。今の京都は、醜い建物が好き勝手に立ち並んで、もはや康成が書き、魁夷が描いた京都ではない。彼らの愛した古都の風情がこの街に戻る日が来ればいいと思う。


にほんブログ村 猫ブログ 猫絵・猫漫画へ ←1クリックよろしくにゃ~
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )