シックス・ストリング・サムライ

 秋の夜長にぴったりかどうかはわからないし、人に勧めていいものかどうかもわからないけれど、SIX-STRING SAMURAI、私がもっとも愛する映画である。
 ネットの紹介文なんかを見ると、賛否両論ありながら、どちらも「馬鹿らしい映画」という評価である。その「馬鹿らしさ」が見た人の気に入るかどうかなのだけれど、ストーリーは馬鹿らしいといえば馬鹿らしい。ロシアの占領下に置かれたアメリカで、最後に残った唯一つの自由の砦がロスト・ベガス、そこで王として君臨していたエルビスが崩御し、全国から、新たな王の座を目指して、ギターを持ったつわものどもが集まるという話。
 もちろん、私はこの馬鹿らしさが好きなのだけれど、この映画を語るのに、馬鹿らしいだけでは終わらない。映像が、恐ろしく美しいのである。
 例えば、映画の始まり。背の高い秋の色の草むらに、綿毛のついた草の種が、鳥の羽毛のように舞って、山吹色の陽光を受けきらきらと光っている。そこに、主人公のバディが刀を頭の上に振りかざしながら飛び込んできて、光の舞う中、スローモーションで敵を次々と倒す。アクションでありながら、美しい絵を見るようなのである。
 映画の一場面一場面が、シューレアリスムの要素を含んだ、一枚の美しい絵なのである。まっすぐ荒野に伸びていく道路の上を転がるタンブルウィード。錆びきった車のドアからこぼれ落ちる、カラフルなチューインガム。
 そう考えてみると、SIX-STRING SAMURAIの透明な映像は、澄みきった秋の夜にはぴったりかもしれない。もう何度も見たけれど、最近はしばらく見ていないから、この秋、もう一度見てみたい。
(トラックバック練習板:テーマ「秋の夜におすすめの映画は?」)


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