横スカッとジャンパーズ

徒然なる侭に、主にマリノスと日常をくっちゃべります。毒にも薬にもなりません!

月の人の思考回路はショート寸前♪

2007年03月08日 00時16分07秒 | アーチェリー
【合宿三日目】

最終日は東京マラソンが行われた日だった。
生憎の雨でアーチェリーはできなかった。仕方が無いので室内で弓具テストをした。その模様は、以前にも書いたとおり。

その後、室内トレーニングジム施設があると聞いたので、あくっまさんとKとMちゃんとSちゃんで向かった。
特にこの二人は驚くほど腹筋が弱い。Sちゃんに至っては一度も出来ない。
その代わりに恐ろしいほど背筋がある。
Mちゃんも最初の頃は一度も出来ず、最近になってようやく、連続で十五回出来るようになったぐらい。
その改善として、ピンポイントで鍛えようと思ったのだ。

普段からジムで鍛えているあくっまさんはお茶の子さいさい、昔取った杵柄のKはそれでも人より体力はある。しかし現役である二人は、トレーニングマシーンでは女性の最低負荷をひぃひぃこなした。
ここであくっまさんはSちゃん、KはMちゃんとトレーニングマシーン巡りをした。

Sちゃんというのは、殆ど話さない子だ。Mちゃんの一方的なお喋りに、静かに笑って頷いている。よく言えば大人しい、悪く言えば積極性の無い子だった。
しかし二泊三日の合宿で、彼女も大分あくっまさんに話しかけるようになってきた。
体力が無い事をマイナスと捉えないようにと、あくっまさんも昔話をした。
「今、こうやって自分は体力もあるし運動しているでしょ。でも、小学校の時の体育の成績は1だったんだよ」
「ええ!?そうは見えませんです」
「本当だよ。大学生になるまで、体育の成績が一番悪かったんだから」
そんな話をしながら、彼女の柔軟性や背筋のあることを褒め、バランス良く筋力をつけると腰痛防止などに役立つんだよと、一緒に体を動かしながら話した。
そうしながら、彼女は少しずつ積極的に、自分からより負荷を掛けるようになった。

ぐるりとマシーンを一周して、最後に腹筋だけ鍛えようかという話になった時、Kが「もう終わりで良いかな」と言ってきた。
Mちゃんが肩が痛いと言ってきたらしい。
それは仕方ない、止めようと全員でジムから更衣室へ引き返した。その間に、Kはこっそりあくっまさんに言った。


ここでKの説明を少しすると。
現役時代のKは、穏やかな顔でより過酷なほうへと部員を導く人間だった。
練習中にみぞれが降ってきて、周りが帰りたい雰囲気になっても笑顔で、
「このラウンドだけやろう」
クラブの方針で揉めて、もう誰もこれ以上話し合いたくないというオーラを発していても、ニッコリ笑って、
「練習終わったらミーティングしようね」
良くも悪くも、主将として厳しいほうへと追い込むタイプだった。



こんなKの性格が変わるわけではなく、Mちゃんが少しでも楽そうに見えたなら、彼女はニコニコ元気な声で「じゃあ、もっと頑張ろうよ!」とこの合宿でも言っていた。
そしてこのトレーニングマシーン巡りでも、KはMちゃんが楽そうに腕を鍛えるマシーンを動かしているのに気付き、もっと負荷を掛けようと声をかけた。
しかしMちゃんは「いや、いいです」と答えたそうだ。
だがそんなので引き下がるKではない。より元気な声で「そんな事を言わずに、もっと頑張ろうよ!」と話すと、Mちゃんは渋々負荷を上げた。
終わると、Mちゃんは肩に手を添えながら言ったそうだ。
「あーあ、肩痛めちゃった」



Kはポツンと言った。
「普通、OGの前でそういう事言うかなあ……」
昔からOGが過干渉気味だったうちのクラブで、常に現役部員とOGとの矢面に立っていたKには信じられなかったのだろう。
だが、一般常識的には指導者にこんな事を言う後輩はいないと思われる。
あくっまさんも、掛ける言葉が無かった。



そして二泊三日の合宿も無事終わった。
翌日OGは仕事があるので、昼ごはんが打ち上げパーティだった。
と言っても、合宿施設のレストランで、大皿のパーティ料理を頼む事ぐらいだったが。
それでも合宿を終えた二人は満足そうだった。
あくっまさんもこの合宿を振り返り、社会人から学生へ戻って過ごした三日間の大切さをしみじみ感じた。
体操、エール、声出し、タイマーコール、ミーティング……。
自分はアーチェリーという競技自体は続けている。だが、それ以外はどれもこれも大学時代でしか味わう事ができなかった。
それを、自分達が全て企画し、二人に『合宿とは何か』を伝える為にやる事が出来た。
勿論、現役のときの合宿は七泊八泊したので物足りなさもある、しかし学生時代に帰り、アーチェリーやクラブの事だけを純粋に体感し、考える事の出来る三日間は、充実していた。


「じゃあ、打ち上げ始めようか」
M先輩はそう言うと、グラスを掲げた。あくっまさん達四人もそれに続いた。
しかし、M先輩はその時不意に動きを止めた。
「あれ、合宿打ち上げの時って、誰が乾杯の音頭を取ったんだっけ?」

M先輩は卒業して八年、あくっまさんとKも卒業して五年経つ。一瞬三人で考え込んだが、あくっまさんは答えた。
「確か、下級生にお疲れ様という意味で、上級生が全部打ち上げの準備をしたんですよね。それで、主将が『一年生お疲れ様~」と言って乾杯をしたような気がします」
「そうだったっけ、本当に色々忘れちゃったー!」
残念ながらあくっまさんの記憶も、実は大分ぼやけていた。全員で笑いながら、一呼吸間があった。
それは、KとM先輩が二人で目配せをした瞬間だったと思われた。二人とも主将経験者だったからだ。
あくっまさんはM先輩が自分より若いKに、乾杯の音頭を譲ったような気配を感じた。





しかし。
この時動いたのは。










Mちゃんだった。









彼女は一段とグラスを掲げて言った。









「それでは、『仮主将』として乾杯を取らせていただきます。先輩方ご指導ありがとうございました、Sちゃんお疲れ様でした……」















はぁああああ~~!?!?!?!?



な、なんだよ『仮主将』って?
てか、なんでお前が乾杯の音頭やろうと思うんだよ!?







「かんぱ~い♪」
「か……か、かんぱーぃ…」
ぎこちない「乾杯」が、Mちゃんの後に続いた。





先輩はその時のあくっまさんの顔を、こう語った。
「物凄く……面白い表情だった」と。
幸いな事に、mMちゃんは真横に並んだあくっまさんの表情の変化には、気付かなかったようだった。









この後、表面的には和やかな打ち上げパーティが始まった。
しかし、この打ち上げで二人は大きな決断を下さねばならなかった。
それは、「クラブを続けるか否か」だ。
もしこの非公認同好会という、過酷な状況を許してくれるのなら。我々は新歓を精一杯手伝う。
だがこの合宿やミーティングでクラブの厳しい環境を知った上で、続けないという結論を出したなら。
それはもはや当然だと思う、この打ち上げパーティが解散パーティになるだけだった。
M先輩は二人に聞いた。

「合宿最終日に結論を出してもらうというのは、この合宿中にも何度も言ったけど。二人の答えを聞かせてくれるかしら」

まずはSちゃんが答えた。
「初めて運動系のクラブに入って、最初は大変だと思ったけど、先輩達と一緒にいられて本当に楽しかった。だからクラブを続けたい」


その答えは、本当に嬉しかった。Mちゃんが続けた。

「私も今までこうやって先輩方とクラブを続けて来れて、楽しかったです。アーチェリーという競技もとても楽しいですし、新歓まで頑張っていこうと思います」



Mちゃんの言葉に、あくっまさんの中のMちゃん像がすっかり変わった。
人の進歩はそれこそ十人十色。
たとえどんなに手が掛かっても、それでも成長していく。
思えば4月の時より彼女はこれでも大分変わった。
あれだけ自分の時と比べないように戒めていたが、あくっまさん達は無意識のうちに比較していたのではなかったのか。




OG三人でニコニコ笑いあいながらお互いの顔を見やる。やはり、クラブが続くのは嬉しかった。
Kは相変わらずの笑顔のまま聞いた。
「ところで二人はどんな風に、続けるって事を話し合ったのかな」
Mちゃんは答えた。


「いえ、特に話し合っていませんけど」











はぁあああああああああーーーーー!?!?










その後のことは詳しく覚えていない。
楽しくご飯を食べ、合宿の感想を一人ずつ言ったときに、あくっまさんは非常に熱血宣言をしたらしい。
だが、自分の言葉があまり思い出せない。
パーティ終了。









合宿翌日、KからM先輩とあくっまさんへ、メールが来た。





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合宿おつかれさまでした。M先輩とあくっまちゃんは三日間でかなりのお疲れだったと思います
昨日の帰りMちゃんと中央線がいっしょでした。で、そのときのやりとりを少しお知らせします。

K「Sちゃんとは続けることについてやっぱり特に話し合いをしなかったの?」
M『ええ。合宿楽しそうでしたから聞くまでもないかなと思って。それに学生課にいったあとも練習きていましたし』
K「…(めちゃくちゃ一方的な思い込みだよ)。これからは二人でクラブを運営してくんだから、私たちとしては、このことについても二人でちゃんと話し合ってほしかったな」
M「ああ…そうですね』
K「そういえば、合宿中にSちゃんの新しい一面はなにか発見できた?」
M『ええ』
K「おお、そうなんだ!どういうところ?」
M『彼女、意外と読書家なんですよ。マリーアントワネット読んでました』
K「え、そうなんだ。(聞きたかったのはそういうことじゃないんだけど…)ちなみにMちゃんはそのとき何してたの?」
M『エンタの神様とニュースみてました』
K「…」
この二人、不安で仕方ないです。

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あくっまさんも、不安で仕方が無いです。

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