■銀座の歌舞伎座が数ヶ月前、公演が終了し、建て替えへ向かって動き出すようだ。建て替え計画については多くの人たちの間で既に話題にはなっていたようである。私は今年になるまで知らず、それも春先で頭も浮かれ始めた頃その計画を知ったのである。計画として背後に超高層が建つ、と聞いたのでなるほど、それくらいの資金はこのプロジェクト全体で動くのだな、と知れた。それでこう思ったのである。あの建物は補強してそのまま残すはずだ、と。どんな形であれそうするだろう、と。その後、モクモクと私の頭の中でよせばいいのに案が去来したのだったが・・・。(いつものごとく、寝られなくなってしまったわけです)
■その後、もう少し知ることとなる。建て替えの計画をする建築家が隈研吾だという。また、それに三菱地所も加わっているようで、どうもつまらぬ物になりそうだという予感があった。それで、最近になって計画案のパースその他を見る機会があって驚いた。ほんとにつまらないのだ。そして何より驚いたのは、今の建物を壊しての、形は踏襲するものの全面建て替えだ、という事である。まるで私が思い描いたものとは違うのだった。てっきり、現在の建物は残すものと思っていたのだ。私はこう思っていた。新たに超高層を建設するなら、その内部に演劇空間を今より大きく取って入れたらよい。そしてそれは超現代的に仕上げる。ここが重要。では今の老朽化した建物はどうするかというと、外観は補強、リニューアルし今の形、雰囲気を残す。内部も原形を残しつつ、事務所、トイレ、お土産物売り場、歌舞伎の歴史等の展示、待合のレストラン等の今より拡大した諸機能を新たに考えて入れ込むというもの。では、現在の客席も含む演劇空間はどう使うのかというと、私の案は恐るべきことに、これを巨大なエントラスの吹き抜け空間として使おうというものである。現在の建物全体が諸機能を含むエントランス空間となるのだ。ここから、超高層ビルの低層部に上手く接続された、新しい演劇空間へと人々は導かれる・・・というもの。これだと、空間的には大分、現案より贅沢に使う事になるが、そこは、国の誇る芸能ということで、国から追加予算をもぎとってでもやればよく、充分おつりは来るだろうということ。100億円ぐらい余分にとってもどうということ無いだろう。なんなら、官僚の使う諸経費の中の税金無駄遣い分をそれにあててもよい。楽に捻出できるはずだ。
■ところが・・・・、それが隈研吾、三菱地所の案はまるで建て替えなのである。パースではあるが見てみると、京都か奈良にありそうな「ナントカ閣」などといった名のついた、古いRCの比較的大きなホテルの1,2階のレストラン部分といった感じに見えてしまうのはどうした訳だろう。目の錯覚か、たぶんパースが下手くそなのだろう。実態もつまらないということだろうか? 恐ろしや。
■今の建物、古びてはいるがあのような雰囲気を醸し出す物体は、この東京にそうそうない。古びた現段階の雰囲気を固定したまま補強することぐらいは、現代の技術でできそうなものだと思う。