イトーヨーカドー前橋店の閉店は8月15日予定、あと一月となりました。
昨日のイトーヨーカドー前橋店、「22年間のご愛顧ありがとうございました 閉店売りつくし」と書かれた大きな看板出して閉店セールをやっていました。
でも、お客さまの姿はちらほら、店内も、閉店セールポップと紅白の幔幕がエアコンの風に揺れているのですがすこぶる静かでした。
この建物の主たる所有者である曽我製粉株式会社は、今年の4月14日からホームページを「工事中」という理由で現在もまだ閉鎖しています。
2月12日の東京新聞の「イトーヨーカ堂8月にも閉店」という記事では、「不動産の大半を所有する曽我製粉(同市)は今秋から順次、店舗を専門店、福祉、教育、文化関連などの施設を入れた新形態の複合ビルに衣替えしていく方針を固めた」と企業方針を公開しました。
さらに、「曽我製粉の曽我隆一社長は「駅前の公共性と駅前整備との整合性を考慮し、地域社会に役立つ衣替えにしたい。単なるビルではなく『ニュータウン』のような新しいコンセプトを考えている。駅前なので早期に部分的にでもオープンさせ、順次テナントを入れていきたい」と意欲を見せている」と、企業代表者としての見解を公表しています。
でも、このとき以来、その後どうなったのか、何をしているのか、一切沈黙を守っています。
曽我製粉は、昨年の秋に製粉事業部門を栃木県の笠原産業に売却して一番大きな仕事であった製粉事業から撤退しました。
この件についても、県内の小麦生産や地粉の供給に大きな影響がでているはずなのですが、ヨーカドー問題と同じく沈黙です。
普通、企業が事業部門を売却したり、企業合同による再編成をした場合には、その後の対応方針をきちんと示すのが普通のことなのですが。
社長の曽我隆一さんは、現在でも群馬県食品工業協会会長、群馬県中小企業団体中央会顧問、雇用開発協会副理事長などの公職についておられるはずです。かつては、前橋市長選挙にも立候補された経歴をお持ちです。
沈黙は許されないと、ヒゲクマは思っています。
群馬県を代表する経営者の一人として、自らの事業展開についてはっきりした方針を示す義務があるはずだと思います。
イトーヨーカドー前橋店は、曽我製粉株式会社の不動産事業として存在してきました。ですから、その閉店も一義的には曽我製粉という企業の問題です。前橋市の行政や地域社会が手を出す前に、曽我製粉がまず自らの事業をどうして行くのか、製粉部門と同じように売り飛ばすのか、新たしいテナントを確保するのか、廃業するのか、方針を示して欲しいと思います。
駅前だから、「県都の顔」(?)だからとか言って、一企業の事業活動に対する地域社会や行政の取り組みを先に求めようとするのは間違いです。
まずは、曽我製粉の企業活動がどのようなものなのかが市民に公開されるべきです。
その上ではじめて、その企業活動を私たちが受け入れることのできるものであるかどうかの検討が始めることが可能になります。
支援や協力の議論は、その先の話です。きちんと筋を通して行かなくてはいけないと思います。
昨日の午前11時ごろの前橋駅前です。本当に人影が疎ら、通勤通学でJRを利用する皆さんがいる朝夕と全く違います。静かな駅です。
静かな田舎駅、優しい、きれいな田舎駅で良いではありませんか。
どこのまちにもあるようなざわめきがなくたって、鉄道から降り立ったとき、「前橋に着いた、来たんだ」ってしっかり思える駅前にすればよいのではないでしょうか。
でも、駅前通の数少ないお店、とりわけおいしい和菓子を作ってくれる新妻屋本店さんが困らないように、みんなで買い物に行きましょう。今は、「若鮎」がシーズン、本当にきれいで、おいしいですよ。贈り物にも使えます。
<でもさ、駅前はそれでいいとしても、まち中はどうなるの?>、千代田町の裏路地に暮らす猫は心配そうな顔をしています。
<まち猫さんのご心配に応えて、キキの考えを話すね…、ちゃんと起きて話すから、ちょっと待ってね…>
ほら、このシリーズの第1回、3月21日「百貨店の消えた街」でヒゲクマが朝日新聞の記事を引用して書いているでしょ。大事なことは大きなお店と中小の商店が手を携えてお互いに助けあって行くことだと思うのよ。
そして、市の行政は、それをしっかり支えてあげることよね。
例えばさ、熱血店舗開店支援事業は悪くはないけど、あまりに小さいよね、発想が。
それにね、ばらばら、出店したお店は孤立して、閉めちゃったりしてるじゃない…
だから、もっと思い切りの良い、大胆なコンセプトの仕事のほうがいいと思うの。
例えばさ、中心商業地の空き店舗を市の公社かなんかで借りちゃって、損してもいいからタダでスズランに貸して売り場にしてもらっちゃうことなんかできないかな。
そうして、うんと意欲があって柔らかい頭している若い人たちに、洒落たテナントをスズランが任せるの、企画はスズランの責任でやってもらうのね…
こないだおしゃれな浅漬鉢買ったハンプティー・ダンプティーだって、最初はスズラン脇のアクセサリーショップだったんだよね。
まちは、商業の揺りかご、昔からね、その揺りかごの中で新しい事業が生まれて育ってきたじゃない。
フレッセイだって、ヤマダ電機だって、みんな前橋のまちを揺りかごにして生まれた会社だよね。
だから、もういちど、スズラン百貨店中心に新しい揺りかごが作れないかなって思うんだ。
新しいお店を育てる揺りかごスズラン百貨店、素敵なイメージだよね。
新しいものが生み出せないまちって、ダメだと思うよ。守ってゆくのでは元気でないよ。
それから、ヒゲクマが山形市の「水の町屋 七日町御殿堰」を6月14日に紹介してたでしょ、読んだ?
この商業施設は、もともとここでお店をしていた老舗が共同出資して作った新会社が事業主体となった(8月30日まで「老舗と山形市が共同出資して作った第三セクターが事業主体となった」と記述しておりましたが、これは誤りです。お詫びして訂正いたします)小規模な都市再開発事業なんですよ。
今ね、全国で都市で、こういう地元の人たちと市が共同してやる事業が始まっているの。
大きな再開発事業がうまく行かないので、サイズを小さくして、小回りの利く、そして参加した商店の皆さんが自ら事業者としての思いっきりやれるようにしているの。
前橋だって、こういうお仕事できると思うんだな。
銀行やなんかも、こういうお仕事応援して、地域社会との新しい結びつきつくって欲しいな…
キキは思うんだ。曽我製粉だってイトーヨーカドーだってポリシーのある企業のはずなんだよね。だから、自分の事業展開のミステイクを地域社会や行政の責任に転嫁してしまうのは大きな間違いだと思うよ。
それと一緒にね、まち中 のことも、市で何とかしてくれないかって、仏頂面並べて待ってたってダメだよね。
さあ、元気出して、イトーヨーカドー前橋店が閉店したぐらいじゃこのまちゃ死なないから…
元気出してね、まちのみなさん…
これで、3月にはじめたこのシリーズを終わりにします。
まとめはキキに任せました。
読み続けてくださった読者の皆さんに感謝しています。ありがとう。
ヒゲクマは、ヨーカドーなんかどうなったって、駅前が少しぐらい静かになったってかまやしないんです。
大事なことは、まちの元気の源を「大手流通業者」に求めてきたことが間違いであったってことに気づかなくてはいけないと思っているのです。
「大きいことは良いことだ…」って時代は終わりますよ。
「小さくたって良いんだよ…」って時代の始まりの歌が、あちこちのまちで聞こえ始めているように感じています。
「活性化」とか、「再生」という言葉が使われるとき、中身の無さなさにむなしさを感じないようにしたいものです。
第1回は3月21日「百貨店の消えた街」、
「第2回は3月24日「前橋の中心はスズラン百貨店」、
第3回は3月28日「大手流通業者に食い荒らされた街」、
第4回は4月9日「たった23年のヨーカドー、まちには50年以上続く店がたくさんあるぞ」、
第5回は4月18日「前橋サティーの閉店」、
第6回は4月27日「熱血店舗開店支援事業をイトーヨーカドーが撤退した曽我のビルに適用するの?」です。
第7回は5月12日「市民を惑わす前橋街づくり協議会の「駅周辺再生」提案」
第8回は5月24日「イトーヨーカドー前橋店の後はドン・キホーテ??」
第9回は6月23日「ヨーカドーはいらないから、静かで美しい田舎駅がいいな」
第9回の補遺は6月30日「これが前橋駅前広場整備基本構想です…」
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次回の「ヒゲおじさん厨房に入る」(朝日新聞群馬県版)は、明日7月17日(土)に掲載予定です。野村たかあきさんはどんな挿絵を描いてくれるのかな?