弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

営業秘密の保護 番外

2014-10-16 17:46:35 | 知財一般

先週2回続けて営業秘密に関する記事を書きましたが、今日は番外編で、シンポジウムの紹介をします。

ちなみに、営業秘密に関する記事は先週で終わりではなく、まだ続きますんで。

 

先日、医師等の個人情報を持ち出したとして、SEが不正競争防止法違反で警視庁に逮捕されました。

 「医師情報1万7000人分持ち出した疑い 警視庁 元SEを逮捕」(日本経済新聞)

ちょっと前にベネッセの事件があったばかりですから、企業から営業秘密が持ち出されることが相次いでます。

 

そうすると、企業にとっては、営業秘密の保護はとてもホットな関心事ですよね。

 

そういう事情もあってか、名城大学ロースクールでは、営業秘密を扱ったシンポジウムを開催するようです。

 

 第9回法科大学院教育シンポジウム

  「情報のリスク管理」 ~営業秘密の流出をいかに防ぐか~

 

参加費無料で誰でも参加可能なので、ご関心のある方はぜひ参加されてはいかがでしょうか?

 

僕も参加するつもりで申し込んだのですが、タイミング悪く、裁判所が実施する「新規破産管財人のガイダンス」とバッティングしてしまいました。

裁判所のガイダンスを優先しなければならないので、シンポジウムへの参加は時間的に厳しそうな感じです。

参加したかったのに…(T_T)

 

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知財高裁平成26年8月27日判決(平成25年(行ケ)10277号)

2014-10-14 18:55:22 | 特許

台風一過の今日名古屋は、透き通るような青い空。

風はまだ強いけど…

 

さて、先日、特許事務所内で定例となっている判例勉強会がありました。

特許事務所のホームページには、担当弁理士によるレジュメが掲載されていますが、このブログでも取り上げようと思います。

 

今回の題材は、知財高裁平成26年8月27日判決(平成25年(行ケ)10277号)です。

特許の要件である進歩性の判断が問題となりました。

 

本願発明は、フラックスレスろう付け用のろう材において、芯材となるアルミニウム合金製の帯材に関するもの。

アルミニウム合金にイットリウムを所定割合含有させることが特徴とされていましたが、先行技術文献でも、フラックスレスろう付け用のろう材において、同じ数値範囲でイットリウムを含むものが開示されていました。

先行技術文献との違いは、本願発明が「管理された窒素雰囲気下でのフラックスレスろう付け用のもの」であるのに対し、先行技術文献では「真空雰囲気下でのフラックスレスろう付け用のもの」である点。

審決では、フラックスレスろう付けには、「管理された窒素雰囲気下」で行う手法と「真空雰囲気下」で行う手法とがあると古くから知られていた以上、先行技術文献に記載のものを本願発明のように「管理された窒素雰囲気下」で使用することは容易だとして、進歩性を否定しました。

 

これに対し、知財高裁2部は、進歩性ありとして審決を取消してます。

まず、「真空雰囲気下でのろう付け法と,管理された窒素雰囲気下でのろう付け法が,いずれも同じフラックスレスろう付け法であるとしても,これらのろう付け法において使用されるろう材,芯材は,通常,区別されるものであるとされていた。」として、出願当時の技術常識を認定し、

そのうえで、

・先行技術の文献には、管理された窒素雰囲気下でのろう付けについて、何らの記載も示唆もない

・出願時には、ろう付け法ごとに、それぞれ特定の組成を持ったろう材や芯材が使用されることが技術常識

 → ろう付け法の違いを超えて、相互にろう材や芯材を容易に利用できるという技術的知見は認められない

として、真空雰囲気下でのろう付けに関する先行技術文献の内容を、管理された窒素雰囲気下でのろう付け法に適用するかどうかは試行錯誤が必要なので、進歩性ありというのが理由です。

 

出願当時の技術常識はどうであったかを丁寧に認定して、進歩性を判断してますね。

複数の手法がある中で、文献だけを見て判断していると、相互に適用可能だよなと安易に判断してしまいがちですが(特許庁がやったのはこれで、特許実務者もつい同じように判断してしまいがち)、技術的には全く別物とされていたという事情があれば進歩性を認める余地があるということなんだろうと思います。

 

ところで、裁判所が認定した上記の技術常識ですが、当事者からは特に主張されていません。

この点に関して、立証責任とかはどうなっているのかという話が勉強会で出ていたので、また別の機会に、ちょっと考えてみようかなと思います。

 

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母校にまつわる話題

2014-10-08 21:17:34 | その他

今日は、営業秘密とは関係ない話。

 

ちょうど昨日の記事を書いているあたりで、例のノーベル賞のニュースが飛び込んできました。

3人の物理学賞受賞者のうち、赤崎先生は、現在、名城大学の教授であることから、「名城大学」の名が全国に流れましたね。

 

僕は、この名城大学のロースクールで、2年間お世話になりました。

名古屋に数あるロースクールの中で、名城大学のロースクールを選んだのは、社会人のまま入学し、平日の夜と土曜日に授業を受けて卒業することができる唯一の学校だったから。

入学金や授業料の免除や、返済不要の奨学金といった金銭的な支援制度も充実していて、名城大学には大変お世話になりました。

 

というわけで、名城大学は母校の一つ。

今も、非常勤講師として、関係を持たせていただいてます。

そんな名城大学の卒業生としては、母校の名前が全国的に知れ渡るのは喜ばしいことですね。

最近は、ロースクールの入学者数も司法試験の合格者数も少なくなっていて、ちょっと残念な状況ではありますが、在校生のみなさんにはぜひ頑張ってもらいたいものです。

 

そのロースクールつながりで、本日、恩師である佐藤學先生から、著書(「体験的異議論」)が届きました!

元刑事裁判官であり、すでに名城大学も退官されたのですが、在学当時は、僕の担当指導教官でした。

とても指導熱心で、多くのことを学ばせていただきました。

一線を退いた今も、精力的に論文作成に取り組まれています。

さっそくお礼の手紙を書かなければ!

 

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営業秘密の保護2

2014-10-07 20:50:42 | 法律一般

営業秘密に関して第2回目。

昨日は、概要と、不競法によって保護される「営業秘密」の要件まで書きました。

今日は、個々の要件を検討する前に、会社が有する情報をどうやって保護していくかについて書こうかなと。

 

そもそも、会社にはいろいろな情報があふれています。

例えば、

自社の経営に関する情報(経営計画や経営戦略など)

営業に関する情報(顧客情報、仕入価格、市場調査情報など)

技術に関する情報(試験研究の成果、技術ノウハウ、製造技術、新商品に関する情報・図面など)

その他、いろいろです。

どれも、不正競争防止法上の「営業秘密」となり得ます。

 

ただ、技術に関する情報については、ちょっと別の観点からの検討が必要です。

 

新製品というのは、販売すると、その外観デザインは外部にさらされ、通常、誰でも手に入れることが可能となります。

そうすると、そのデザインを真似しようと思えば可能となるし、中身の技術情報を得たいと思えば、どこかから購入してきて分解し、中の構造や仕組みがどうなっているのか調べれば、同じものを作ることが可能です。

後者のように、分解してどういう構造・仕組みになっているか調べるのは、リバースエンジニアリングといって、どの会社でも普通にやることです。

したがって、当たり前のことですが、新製品が発売されれば、それに関する情報は「営業秘密」ではなくなってしまいます。

 

じゃあ、それをどうやって保護するかというと、特許権や意匠(デザイン)権です。

発売によって世間にさらされる情報というのは、事前に、特許や意匠(デザイン)の出願をしておき、情報を保護する必要があります。

 

もっとも、製造技術などのように、新製品をいくら分解しても到底わかり得ない情報というのも、製品によってはあるわけです。

そういうものまで特許出願してしまうと、出願内容が後で公開され、独占期間を過ぎれば誰でも利用できることになるので、自社の優位性が失われてしまいます。

 

そのため、技術に関する情報については、特許や意匠出願して保護するのか、営業秘密として保護するのか、その見極めが必要です。

まあ、大企業であれば、そんなこと言われんでもやっとるわ、というような話ですけどね。

 

 

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営業秘密の保護1

2014-10-06 20:43:36 | 知財一般

今日の名古屋、午後は台風一過で快晴でした!(風が強かったけど)

これから1週間くらい、名古屋では、いい天気が続くようですね。

 

さて、先日、経済産業省で、営業秘密に関する委員会が立ち上がったことを書きました。

それを受けて、このブログでも「営業秘密」について、少しずつですが、書いていこうかなあと思います。

 

最初の1回目となる今日は、概要について。

 

まず、「営業秘密」が対象となる法律は、不正競争防止法という名前の法律。

この法律によって「営業秘密」は保護されます。

保護されるというのは具体的にどういうことかというと、大きくは民事的な保護と刑事的な保護の2つに分けることができます。

 

(民事的保護) 

 「営業秘密」を不正取得・使用・開示した相手に対し、差止請求や損害賠償請求等が認められる。

・差止請求(不競法3条)

 例えば、営業秘密に該当する情報を使うなとか、その情報を使って製造された製品を廃棄せよといった請求

・損害賠償請求(4条)

 例えば、営業秘密を不正に開示されたことにより被った損害を賠償せよといった請求

 

(刑事的保護)

 「営業秘密」を侵害する行為は、犯罪として、10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金(その両方もあり)が科されます。

 

では、そもそも、「営業秘密」というのは、社内にあふれている様々な情報のうち、どういった情報のことをいうのでしょうか?

 

それは、不正競争防止法に定義されています(2条6項)。

「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。」とある。

そこで、不正競争防止法によって保護される「営業秘密」といえるには、3つの要件を満たすことが必要とされています。

 

・秘密として管理されていること(秘密管理性)

・有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)

・公然と知られていないこと(非公知性)

 

このうち、裁判において一番問題となり、否定される場合も多いのが、最初の秘密管理性の要件です。

秘密管理性については、また改めて検討します。

 

 

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