弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

審決取消訴訟における技術常識の主張・立証責任

2014-10-22 20:12:03 | 法律一般

今日の話題は、先日の事務所内の勉強会で、裁判所が認定した技術常識について立証責任はどうなっているの?という疑問が出されたことについて。

 

さて、ここでの疑問には、おそらく次のような問題意識があるのだと思います。

つまり、被告の特許庁は、出願当時の技術がどうだったかについて主張していましたが、原告の特許出願人はその点について特に何も反論していませんでした。

それなのに、裁判所が特許庁すら主張していない技術常識を認定したけど、それっていいの?ってことだと思います。

 

結論を言っちゃいますと、そもそも何が技術常識かは間接事実なので、裁判所は自己の判断で認定しちゃってOKってことになります。

つまり、技術常識については、訴訟当事者の誰も主張・立証責任を負わない。

 

このあたりは、理由を説明しようとすると、民事訴訟法の理解が必要です。

審決取消訴訟は行政訴訟ですが、行政訴訟も基本的には民事訴訟法が適用されるので(行訴法7条)、民事訴訟の理論によるからです。

間接事実とは?、主張事実とは?、弁論主義とは?、主張責任とは?証明責任(立証責任)とは?といった概念の理解が必要となるのですが、つまらないと思うので説明省略。

 

もっとも、何が技術常識かは裁判所が勝手に判断できるからといって、何の証拠もなく認定するわけではなく、職権で文献を探すこともしません。

あくまで当事者が提出した証拠をもとに技術常識を認定します。

この場合、認定の基礎となる文献は、原告・被告のどちらが提出した証拠でも構いません(証拠共通の原則といいます。)。

 

今回の勉強会で扱った事案では、特許庁側が出した証拠をもとに、出願人側に有利な技術常識を裁判所が認定してくれました。

結果としてラッキーだったわけですが、本来ならば、出願人自らが、証拠を出しつつ自己に有利な技術常識が何かを主張できるようにするのがあるべき訴訟活動でしょうね。

 

なお、審決取消訴訟において、技術常識等に関する当業者の知見を主張するために、審判段階で出してなかった証拠を新たに提出することは問題ありません(最判昭和55年1月24日判決)。

 

今日はこんなところで。

 

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