医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

枯山水の美感9

2007年11月30日 06時26分00秒 | Weblog
 縮景(しゅくけい)に続いては、借景(しゃっけい)です。

 日本庭園内は、縮景として自然の山水をモデルとし、自然の材料で人為的に風景をつくりましたが、立地場所によっては「園外の風景を積極的にとりこむ」ことをしたそうです。

 この手法を「借景(しゃっけい)」といい、時代の閉塞(へいそく)感をやぶろうとしたのか借景庭園は近世にもっとも盛んにつくられた、とのこと。

 庭園の中から園外への「眺望」を工夫するのは、世界共通の造園技法なんだそうです。

 しかし、日本の借景はたんなる眺望とはちがう、と専門家は言います。

 日本では庭園から遠望される山や塔などの借景対象を、その庭園の主景として生けどるのだそうです。

 そのためには、近景である園内の造作は主景を生かすために最小限に抑制すると。

 たとえば青々とした山を主景とする場合、園内には樹木をうえず白砂敷のみとする・・・なるほど。

 白砂とのコントラストで園外の青山が主景にひきたてられるのであるそう・・うん、うん。

 また、生け垣による見切りをつくり、額縁効果(フレーミング、トリミング)をねらう・・なるほど。

 生け垣や立木によって主景となるべき山や塔以外をすべてかくすのである、と。

 このように、日本式庭園の伝統には、自然本体を加工することもなく注連縄1本で神格化してしまうとか、みずからの庭園の造作を抑制することで近傍の山を園景の主人公にしてしまうという「自然共生型景観演出手法」が内在しているのである、ということでした。

 勉強になりますね。