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『アラビアンナイトの殺人』を面白く読む 1

2017年08月16日 | JDカー
『アラビアンナイトの殺人』については
「つまらない」「冗長」「謎がしょぼい」などと言われているようですが、
なんとかしてその『アラビアンナイトの殺人』をおもしろく読むには、と考えてみました。

フェル博士ものは、1933年の『魔女の隠れ家』から1936年の『アラビアンナイトの殺人』まで
毎年コンスタントに書かれています。

●表1
1933年『魔女の隠れ家』
1933年『帽子収集狂事件』
1934年『剣の八』
1934年『盲目の理髪師』
1935年『死時計』
1936年『アラビアンナイトの殺人』
※1935年『三つの棺』は書かれたいきさつから、フェル博士ものから外した。

1937年はフェル博士ものが書かれていないかわりに、
『火刑法廷』『四つの兇器』『孔雀の羽根』『第三の銃弾』が発表されています。
HM卿もの、バンコランもの、ノンシリーズ2作を含め傑作から佳作までそろい、
1934年ほどではないですがカーの創作意欲は落ちてはいません。
なのに、なぜフェル博士ものを書いていないのか。
HM卿ものが金のため、ノンシリーズものはマーケット開拓のためのアドバルーンみたいなもの、ならば、
フェル博士ものはカーが考えるミステリの実験作品群ではなかったか(金のためでもあります)と思うのです。

『剣の八』から『盲目の理髪師』『アラビアンナイトの殺人』の3作品の共通点、
言い換えるならば『剣の八』~『盲目の理髪師』~『アラビアンナイトの殺人』と、
ある趣向が使用、拡大されています。
『剣の八』の前半にあるポルターガイスト騒動部分を、
最初から最後まで一人の語り手で展開させたのが『盲目の理髪師』、
そして語り手を3人に拡張したのが『アラビアンナイトの殺人』。

高校生のころに古本屋で入手した『アラビアンナイトの殺人』。
書皮をはがしてみたら、帯・パラフィン付きの初版でした。
ただし古本屋の書票を剥がした跡あり。
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