臓器移植法を問い直す市民ネットワーク

「脳死」は人の死ではありません。「脳死」からの臓器摘出に反対します。臓器移植以外の医療の研究・確立を求めます。

第11回市民講座の報告(2-1)

2017-07-02 08:30:58 | 集会・学習会の報告
第11回市民講座の報告(2-1)
 
 
 2017年3月4日、第11回市民講座を行いました。講師は大分市の医療法人財団天心堂の会長である松本文六医師、講演タイトルは「医療制度“改革”と、いのちの切り捨て」です。
 40名ほどの参加でしたが、会場は熱気でいっぱいでした。78コマもあるパワーポイント資料には、天心堂の理念や歩み、地域包括医療にかける思い、そして核心は2006年の医療制度「改革」から始まった「医療崩壊」と国民のいのちの切り捨てについての具体的な数字や状況が、提示されます。この膨大な内容を、力を込めて講演して頂きました。
 なおパワーポイント資料は抜粋して一部のみ掲載いたします。
 
 
 
講演録
 
 
脳死移植法を問い直す市民ネットワーク 第11回市民講座 2017年3月4日 東京
医療制度「改革」といのちの切り捨て
 
 
 始めたいと思います。
 医療制度改革、川見さんの提案では、「 」(括弧)がなかったのですが、改悪ですよね、それで括弧をつけました。いのちの切り捨て、医療制度改革といわれるものが全て、いのちの切り捨てに繋がっていると思います。
 皆さん方、医療制度についてはなかなか目に入らない、新聞報道でもよくわからないことがいっぱいあると思います。概略お話したいと思います。
 ここ10年間の医療制度「改革」、皆保険制度の大きな問題点、適正化などは、要するに医療費の抑制という意味です。本来ならば、社会保障制度はどうあるべきかということ。それから、“脳死”臓器移植と医療費の問題。最近、特に国の方から終末期医療をめぐってのいろいろな問題が出されております。又、尊厳死法案が出て、それが駄目になったわけですけれども、その当りについて触れたいと思っております。
 
 
Ⅰ 自己紹介
 
 病院と診療所と、老健、在宅総合ケアセンター(訪問看護・訪問介護)、健診センター、有料老人ホームをつくっています。職員数600名を超してます。
 これが現在の病院です。病院らしくない病院ですが、そういうつもりで造りました。右の写真は、最初の病院で、今診療所になっています。これは従来の病院と変わらないですね。私は新病院を造る時に、病院というのは収容所だなと思って、そうでないような病院にしたいということで、《病院らしくない病院》という建築コンセプトで造りました。
 左下が老健陽光苑、又右下の写真は、へつぎ病院から36キロぐらい離れた所の診療所と老健です。ここの地区に医者が少ないので、ぜひ来てくれと、町長・助役・収入役の3人が来て、診療所をつくってくれと要請されました。天心堂はお金がないからどうしようかと迷っていましたら、一人の医者が「俺がここでやってもいいよ」というのが出たので、役場の傍のタバコの乾燥場を取り壊すというので、そこを借りて診療所を始めました。だんだん雨漏りがするので止めようかということになっていたのですが、また一人、「やってもいいよ」という医者が出てきたので、2006年にここを改装して新しくしました。
 天心堂は社会医療法人です。医療法人というのは、要するに医療機関の会社組織です。日本全体の病院というのは、だいたい8500あります。1990年頃には1万ぐらいあったのですが、ずいぶん減りました。社会医療法人はより公益性の高い医療機関として認定され、現在全国で約300病院あります。私どもはすべてを地域に寄付しました。 
  
 大雑把に言いますと地域包括医療ケア、病院・外来・サテライト診療所・老健・在宅医療があるので保健医療福祉複合体の少なくともゆりかごから墓場まで診れる医療機関です。天心堂にかかっておれば、何とかなるだろうという安心感を地域に提供するということです。基本理念としては、患者さんのいのちと人権を尊重し、ぬくもりのある医療・介護・福祉を提供するということでやってきております。
 大分県大分市の南西、中心街から13キロにあります。患者さんの殆どはこの地域の方々で50%くらいを占めています。
 
 

Ⅱ ここ10年間の医療制度「改革」の流れ
 
 日本の医療制度の最大の改悪の最初は小泉政権時代です。小泉政権が「骨太方針2005」を閣議決定して、具体的に2006年度より5年間に亘り医療費総額を1.1兆円圧縮するということをやりました。この頃までは自然増が年間1兆円ぐらいありました。それを5年間に1.1兆円、1年間に2,200億円に圧縮するという方針を出しました。
 これが医療界には大変な負担になってきて、医療崩壊を起こしました。基本的には医療費を抑制するということです。介護報酬は4.7%大幅に切り下げ、診療報酬は3.16%切り下げたわけです。健康保険制度ができて一番の大胆な切り下げです。こういうことで医療崩壊が起こったわけです。もちろん、医療崩壊の理由は他もありますけれども。
基本的には医療政策の朝令暮改的な、マスメディアの過度にして不正確な医療事故報道などによって、勤務の過酷さに耐えきれず、マイペースで私生活と診療が選択できる開業医へと。この年に2006、07、08年ぐらいに、勤務医を辞めて、開業した人が多かった。そのために、病院が一部閉鎖されたり、診療科の縮小、閉科が起こったわけです。これが全国的に起こった医療崩壊です。
 とりわけ地方の中小病院が一番打撃を受けたわけです。まず絶え間のない医療費の適正化政策、第二に医師数の制限でした。後者は1983年に厚労省の局長が言い始めて、それから医療制度の改悪が始まったと言っていいと思います。
 市場経済原理の導入というのは、骨太方針2005、2006で医療費を減らし、しかも診療報酬に市場原理を導入したということです。
 具体的には、入院一日当りの費用を看護師の数を基準に決められたことです。いわゆる7対1看護です。そのため大病院から中小病院の看護師の引き抜きがあって、看護師さんが現場からいなくなります。医者の過重労働が起ります。それで病院を辞めて、開業する。中小病院から医者がいなくなったのです。こういう形で医療崩壊が起こったことになります。
 地域の病院が閉鎖されると、地域の崩壊になります。現実的に少しずつ進行しました。
他方、卒業した医者の臨床研修制度が2004年から始まりましたが、このことも関連します。医学生は医者になりたいということで医学部に来ています。ところが約半世紀前から大学医学部は、研究至上主義なんです。具体的に言えば、インパクトファクターと言って、英語論文で、サイエンス、ランセット、ニューイングランドジャーナルメディスンといった有名な医学雑誌に載ると10点ぐらいあげるとすれば、日本語は1点しかやらないという形の教授選考システムです。教授になりたい人は、そういう論文が必要なのです。インパクトファクター、点数が高くなるのは、動物実験が中心ですね、臨床じゃなくて。そういうことが、40~50年続いています。私が学生の時、九大の一外科の教授選があって、新しい教授ができました。その教授は13年間手術をしたことがないと。それが外科の教授になるということです。そういう意味での学生の教育は本当にいい加減です。
 2004年の卒後臨床研修が始まった時に、大分大学は、大学で研修するのは100人のうち3割。弘前大学は11%だったです。これまでは、教授・助教授は若手に下請けの研究と臨床をさせるわけです。だから2年間の研修医がいなくなると、大学の診療が困るわけで、中小病院から医師を引き揚げるわけです。そうすると医師が偏在して、中小病院の診療科の閉科、偏在が起こってきたわけです。
 
 92年に、私は4メールぐらい高い所から落ちて、事故に遭いました。その時に、もしかしたら開胸しなければいけないと大学病院へ送られました。そこで、肋骨数本と心臓周辺の血腫、左の膝蓋骨、右の踵骨を折って大学病院へ運ばれました。肋骨数本折っていますから、笑っても咳をしてもものすごく痛い。最初、酸素の血中濃度が半分くらい下がっていたので、酸素を入れながら行ったわけです。当然酸素濃度が上っていたわけです。しかし、着いたとたんに血中の酸素濃度をみて、抜いていいということになり、抜かれました。そうしたら次の日苦しくてしょうがない。看護師さんが来たので、酸素つないでくれませんか、と言ったら、「私どもにはそんな権限はありません」と。だって大学だから医師はいっぱいいるでしょ?と言ったら、「知らないんですか? 大学病院は無医村です」と。みんなアルバイトに出ていないと。笑うにも笑えないようなことを体験しました。
 研修医が大学から6~7割いなくなれば大学病院は困る訳です。江戸時代に農民が“逃散”したという言葉がありましたが、それと類したことがこの時起こったと思います。大都市に集中して若手が行ったということですね。そのため、中小病院に派遣していていた若手医師を引き揚げたために医療崩壊が起こった訳です。
 第二に絶え間ない医療費適正化政策です。つまり、社会保障費の圧縮、医療費の適正化政策が2005年、06年、07年に起こった。それ以前、2000年頃に、急性期特定加算というので、特別な条件が揃えば診療報酬をあげるというのがありました。ところが4年後ぐらいで、それがバサッと止められました。その途端に、天心堂へつぎ病院は年間5400万円マイナスです。それだけで。そういう乱暴なことが次々と現実的に起こっている。それが医療崩壊の基盤となっていたわけです。
 三つ目に医師数の制限。83年に厚生省がそういう方針を出しました。医師を増やさないという。結局地域の病院が疲弊してきたということで、2000年代になって医学部の定員増をしました。しかし、大学は臓器別医療が進んでいる。循環器の教授、腎臓内科の教授、というふうになっていますから。
 私どもの病院に若い医者が赴任した直後に救急を断るんです。なぜかというと、例えば腎臓内科の医師が大学からアルバイトに行くとすれば、腎臓に関係する所にしか行かないわけです。10年、15年経っても自分の専門領域は詳しいけれども、ちょっと外れると診れないということです。
 私どもは、いろいろなことを診てきて内科も小外科も整形外科も少々出来るようになったわけですが、今の若い医師は、専門領域しか診ようとしない。それが全国的に今、問題になっています。私は2400ぐらいの病院を組織している日本病院会の理事をしているのですが、理事会に出ればそういう話がたくさんあります。だから、病院の中で総合診療医を養成すべきだという意見が出されています。今、専門医制度が検討されていますが、どういう形になるのでしょうか? 地域医療が崩壊しない仕組みを組み込んで欲しいと思います。

 7対1看護という診療報酬制度ができました。一人の看護師が24時間の間に7人の患者を看護するということ。10対1は一人で10人。13対1は一人で13人。7対1だったら、10対1と比べると100床当り年間1億円ぐらい収入が変わります。そういうことで、これに最初に気づいたのは、東大、京大。一番激しかったのは東大で、全国1千ぐらいある看護学校の中で500ぐらい回って、東大に来ませんかと。北海道の田舎の看護学校に行って来ませんかと言ったら、北海道で看護学校に行っていますと、東京に行くことだってかなわない、あるいは公務員になることにもかなわないということですから、誘いに乗ってすっーと行くわけです。そういうわけで全国的に中小病院の看護師が少なくなった。新卒看護師の引き抜き合戦ですね。これはすさまじかったですね。
 
 私どもの一つの病棟の例です。ピンクのところが正看護師で、黄色のところが准看護師、ブルーのところが新卒看護師。7対1看護、看護師が何人いるかによって、一日の入院基本料が決まります。7対1が始まる前は、天心堂は全員正看護師だったんです。これが始まって看護師が大学とか、県立病院、大きな病院から引き抜かれました。しかも中堅クラスを引き抜かれた。だから、経験年数が少ないのがいっぱいです。指導クラスが引き抜かれたので、現場は混乱して、これから3年ぐらいは看護師の退職率は30%を超しました。

 こういうことを医療政策によってやられると地方の病院は大変です。収入を減りますし。最たるものが7対1入院基本料。今になって国は7対1を少なくしようとしています。

 介護保険にも市場原理が導入されました。入所者の食事費と居住費の自己負担。そしてマイナス評価する場合には10%の減算。要支援1・2、介護予防というところで、できるだけサービスを低下させろということが出たわけです。結論的には「軽度の傾斜化」、これは軽度の方にできるだけ介護認定をもっていけ、介護切りをするというのが、基本的な方針となったわけですが、審議会の中で大反対にあって、利用者目線の常識ある発言が国の決定を覆したそうです。
 
 2010年、民主党の政権の時に、政府与党社会保障改革検討本部というのをつくった。社会保障・税一体改革、社会保障制度改革推進法というのが、ここまで来ていた。ところが、この時に初めて、人の最終段階、終末期医療が初めて出てきました。それまでは終末期医療のことは審議会等ではほとんど問題にならなかった。というのは、審議会の先生方は大学の先生ばかりです。超高齢少子多死社会になっていることを理解できていないから。それで、一部の人からこの問題は大事だからしないといけないのではないかということで初めて、終末期医療の問題が2012年に出てきました。
 しかし、2012年12月から政権が代わりしました。そうすると民主党の時の社会保障・税一体改革が全く骨抜きになりました。そして2013年に社会保障制度改革国民会議報告書が出ました。内容としては、提供体制の改革。これは改悪ということですが。地域包括ケアシステムの構築。それから国保の都道府県化。都道府県で全部、今まで国がみていたのをやりなさいということになったわけです。

 その後、プログラム法、医療介護総合確保法ができました。プログラム法はほとんど説明のないまま来ていました。プログラム法は最初医療関係者もよくわからなかった。医療介護総合確保法というのができて、書いていることはまっとうなことを書いていますが、中身は改悪する方向です。
 それから2014年8月には、医療介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会ができて、医療機能別病床数の推計及び地域医療構想の策定、これが現在、去年、おととしから進んでおります。後で述べます。
 2015年6月30日は、経済・財政一体改革推進委員会がつくられました。これで完全に民主党の構想は骨抜きにされました。
 経済・財政諮問会議の議長は安倍首相です。経済・財政一体改革推進委員会の会長は新浪といってサントリーの社長。会長代理の伊藤元重は、東大経済学部の名誉教授。
 経済・財政一体改革推進委員会の中で4つのグループにわけて、社会保障ワーキングの主査は榊原定征といって経団連の会長。社会保障のところにこういう人を据えているということ自身が本質を現しています。経済・財政一体改革推進委員会の14名の委員の中で医者は一人です。松田晋哉さんは公衆衛生です。臨床家ではない。社会保障ワーキンググループは、経団連の会長、産業医科大学教授の松田さん。他には医者は入っていない。そういうところで医療を考えるというのは、見え見えですね。
 
 社会保障分野は、入院・外来医療、薬剤を検討することになっていますが。榊原主査は何と言っているかといいますと「2017年度予算の社会保障関係費の伸びは5000億円以内と抑制すべきである」と。これは去年の10月ですね。今、5000億円を、2016年から始まっている3年間、それぞれ1年間に5000億円を圧縮するという、3年間で1兆5000億円圧縮するということですね。これは小泉政権の1兆2000億に次いで大幅な社会保障費の圧縮。だいたい自然増は1兆円を毎年ちょっと超えていました。それを半分にするということですから、大変です。また医療崩壊が再来するのではないかという気がいたします。
 
 
 
Ⅲ 皆保険制度の大きな問題点
 
 これが、一人当たりの医療費が国保の中でもこんなに違う。一人当たりの保険料も高いところと低いところが4.8倍もある。医療費は3.6倍。国民健康保険は地域によって違うので格差が出ている。
 国保は、2008年のデータで、2000万世帯の20%が滞納世帯、5分の1が。だから、ちょっとした風邪では市販薬で済ませると。資格証明書世帯と短期被保険者証世帯。にっちもさっちもつかなくて肺炎がひどくなったという時に、資格証明書をもらうと、後で払い戻しがある。だから、滞納世帯が20%もあります。その中の人たちは生計が苦しい世帯なんです。
2001年から10年の間に給与所得が下がってきています。国保には、非正規とか無職とか高齢者が入ってくる。1965年度と2012年度を比べると無職・高齢者が増える、非正規も増えてくる。だから国保が破綻しつつあることは間違いない。収入が非常に少ないですから。そういう問題があります。
 大企業の健保組合をみますと、保険料率はこんなにばらつきがあります。私は、応能制にして、給与が同じであれば保険料率を一緒にすればいい。こういうところは企業も金を出さない。だから、そういうことも含めて健康保険制度全般を見直さないと。だけど、こういうことが病院団体で話されることはほとんどない。私はシンポジウムでこういう問題を出すのですが、ほとんど、他の理事さんは知らない人が多いですね。
 保険料率、下位10組合と上位10組合をみますと、被保険者の負担分、平均総報酬額、こういうふうに保険料率が低いところは、給料が高いと。こういう格差が歴然としている。
 2014年のデータで、国保の保険料は8万3千円ですけれど、一人当たりの医療費は31万円。協会けんぽの一人当りの医療費は16万円で、健保組合と共済組合のそれは14万円で、国保の一人当りの医療費の半分以下です。後期高齢者医療制度は、高齢化でいろいろな病気が出てきますけれど、約92万円です。保険料は6万7千円ですが。こういうバラツキが非常に大きい。これは社会保障の基本的な考え方が、小手先でいろいろなことをやっているからこういうことが起こってきています。
 協会けんぽは中小企業ですね。組合健保というのはトヨタとか日産とかそういうところですね。2003年頃は賃金格差が約150万円もあるが、保険料率は高い。2011年の時も給与の差がある。保険料率も1.5%も違う。したがって、中小企業の人は保険料をたくさん払っているということになります。
 
 日本の患者負担率が先進国で一番高い。むしろアメリカの方が低い。アメリカは公的保険で、低所得者と高齢者に、そこに公的保険が投入されている。アメリカの状態というのは「シッコ」という映画があるのですが、観るとよくわかります。普通の人たちは民間の保険です。保険料がAからZまであるとすると、Zの人は入院3日で追い出される。「シッコ」では、カリフォルニア州立病院に入ったお年よりが強制退院で、行き先がどこかといいますと、慈善団体の前で降ろされるというような状態です。「シッコ」を観るとアメリカの医療の実態が非常によくわかります。
 それから国民負担率、税と社会保障の負担割合ですね。資産とか全部足したものを先進国で比べると、アメリカは民間保険が中心ですから比較しようがないですが、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンを比べると圧倒的に少ない。資産課税、法人所得課税、個人所得課税は、先進国に比べて非常に低いですね。民主党の時は、所得税の累進課税を見直すという方針が出ていましたが、2012年の安倍政権になって、とたんに抹消された。
 それから、消費税の本質は低所得者ほど負担が大きいわけです。消費税を社会保障の目的税にすること自身は、貧乏人が貧乏人をみるシステムにつくっているのと変わらないと思います。
 1989年に消費税が導入され、1997年に5%上った。ところが他方で法人税と所得税の率を下げたわけです。消費税の税収は、法人税と所得税の減税に全部使われてしまったということです。からくりとしてはそうなっています。現在もそうなっている。この間消費税が8%に上がって、法人税は下げられました。大企業重視ですね。そういう意味では、私は消費税を社会保障目的税とすることは凍結して、所得の再分配を行い、持続可能な制度を創造することが必要だろうと思います。
 それから、同一賃金、同一保険料にしないと破綻しますね、皆保険といわれるものが。国民負担率をEU諸国とフランス、イギリス、スウェーデン、ドイツと同じレベルにする必要があるのではないかと思います。
 
 

Ⅳ 最近の医療・介護費 適正化(抑制!)の具体例
 
 とにかく、抑制、抑制、抑制になっています。悪名高い7対1をみてみます。
 左端が平成16年です。2004年です。病床はこうなっています。平成18年の改定率を計算する際に、暫定的に病床の転換、7対1が導入されました。10対1から7対1になれば、100床当たり年収1億プラスになるということが、あちこちで検討された。特に東大なんかの大学病院や大病院で7対1が増えた。そうしますと、平成22年、2010年の急性期病床はぐんと増え、受け皿病院の病床数は、ここのところがぐっと細くなりました。ワイングラス。受け皿病床が急減して、急性期の病院だけが増えています。7対1であれば、看護師を増やして人件費を払っても利益が出ます。一気に急性期病床が急増しました。急性期はこんなに要らない。
 だから、「単に診療報酬の配分によって対応するということでは行き過ぎた医療提供体制の変化をもたらす可能性があり、まず、医療法改正による病床の適切な区分の設定などによる実効的な規制手法を講じることが不可欠。」であるというのが財政制度審議会、2013年にそうなった。
 7対1が増えた。だから減らそうということになった。それで出てきたのは、地域医療ビジョンということですね。
 
 
 これは大分県のケースです。大分県は18,855床あるわけです。それを2025年は14,568床に減らせというのが、新しく地域医療ビジョンということで、法律でそういうことを出してきたわけです。そうすると高度急性期はこれくらいで、急性期、回復期というのはリハビリとかですね。特に大腿骨頚部骨折とか、整形外科、あるいは脳卒中のリハビリ。そういう意味で現在大分県でも回復期が少ない。7対1で病床が増えたというのは、それで利益を上げるために、急性期が増えた。現実的にはそこまで要らないだろう、これくらいでいいだろうと、国の方針で計算するとこれくらいになりますよということなんです。だから4200くらい削れということです。これは大変な数字になりますね。これは大分県だけでなくて。全国的に病床数を減らすということになっています。
 それで国は在宅医療の方にもっていこうとしています。在宅は税金をあまり使わなくていい、医療費が安く済むということで、そういう方向にもっていこうとしています。だから、2014年から10年の間に4,200床も減らせといっても、地域の病院というのは200床以下が多い。地域の200床以下の病院は全体の病院の7割を占める。審議会は大学の先生ばかりで地方のことを全く知らない人の中で議論をしていますから、こういうことが簡単に出てくる。
 これからの高齢社会とは、ということで、急性期医療を必要とする患者が増えて、がん、脳神経疾患、心臓病に対する、急性期病院においては何らかの確立が必要だと、そして、継続的な医療を必要とする患者、生活習慣病、看護ケア、リハケア、ADLケア、日常生活動作ですね、必要とする患者が増えると。在宅ケアを支える仕組みが重要となるということで、方針がガラッと変わったということですね。
2017年2月、介護保険関連法改正案が閣議決定されました。つい最近ですね。大企業の人はもうちょっと金を出していいのではないかということで、高くなります。年収340万円以上の高齢者の自己負担を、今2割ですか、それを3割にすると、それを完全にすると。2020年度には1300万人が対象となるということです。そういうふうに閣議決定に大幅に変わってきます。私どもは追いつかない、こういうのが次々と出てきて。
 療養病床の受け皿施設を新設、これはどういうことかというと、有床診療所を療養病床にしようということですね。そういうような新しい動きが出ています。
 
 
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