臓器移植法を問い直す市民ネットワーク

「脳死」は人の死ではありません。「脳死」からの臓器摘出に反対します。臓器移植以外の医療の研究・確立を求めます。

第5回市民講座(2014年2月2日)の報告

2014-04-01 00:08:39 | 集会・学習会の報告

第5回市民講座(2014年2月2日)講演録
死体とされた人からの臓器摘出に、なぜ麻酔や筋弛緩剤を使うのか?

 

 2014年2月2日、≪死体とされた人からの臓器摘出に、なぜ麻酔や筋弛緩剤を使うのか?≫のタイトルでジャーナリストの守田憲二さんに講演していただきました。資料を調べつくした講演の内容は圧巻でした。以下に講演録を掲載いたします(資料からの引用は斜体にしてあります。講演時とは表現を変えた部分があります)。

 

会場写真はじめに
 通常の全身麻酔をかける手術の際に、麻酔と筋弛緩剤を投与します。麻酔をかけないと、手術を受ける人が痛がって動く。動かれるとメスを安全に使うことはできないし、痛みが強すぎると手術で改善が期待できるメリットを台無しにする。激痛で血圧が上がりすぎたり下がり過ぎたりすると、脳や臓器に悪影響を与えるからです。麻酔だけで、体が動かないようにすることもできますが、そのためには大量に麻酔をかけなければなりません。大量に麻酔をかけると、回復が遅くなったり全身状態を悪化させることがあるから、筋肉が動かないようにするための筋弛緩剤と麻酔を併用することが、普通の手術時に行われています。では臓器提供者を「死体」とする臓器摘出の際はどうか。

 

臓器移植法(1997年)以前
 1997年の臓器移植法以前から、「死体」からの臓器摘出に際して、麻酔と筋弛緩剤が投与されてきました。
 1968年の和田心臓移植事件の時に、臓器提供者とされた山口義政氏は1968年8月7日正午頃に溺水事故、高圧酸素療法適応として札幌医大に転院し8月7日午後8時5分山口氏を乗せた救急車は札幌医大に到着した。和田心臓移植事件に対する日本弁護士連合会の調査報告書は、「和田外科では、同日午後8時15分頃、麻酔科に対して、イソヅール(静脈麻酔薬)とレラキシン(筋弛緩剤)を貸してくれと申入れこれを借受けたが、イソヅールやレラキシンを必要とするのは患者が生きている証拠である。死んでいる者や死にかかっている者には無用の薬である。このうちレラキシンは人工蘇生器の管を気道に挿入するときに必要なこともあり得るが、イソツールを使用するというのは理解に苦しむ」と報告しています(『日本弁護士連合会 人権事件 警告・要望例集』明石書店、1996年)。

 1995年には、名古屋大学医学部第二外科の横山逸男講師が著書(「希望は星の数だけ―臓器移植のより良い理解のために」、メディカルブックサービス)で、こう書いています。「実際臓器提供の現場では、臓器を摘出する時は、提供者が脳死状態になった時点で、すでに臓器摘出の準備が始まっているのである。したがって、心停止下での臓器提供と言っても、脳死の診断は行なわれるわけであり、それに携わる医師やスタッフにとっても、実務面に関しては、脳死下の臓器提供の環境とほとんど差はないと思われる。脳死になった死体から臓器を摘出する場合、まず死体を手術室に運ぶ。もちろん心臓は動いているわけで、人工呼吸器を動かしながら、手術の準備をする。死体であるから、反射も痛みもないわけだが、組織を切る時に、筋肉や脊髄神経が反射的に動くことがあるので、麻酔医による全身麻酔を必要とする。したがって、実際にはほとんど通常の外科手術と同じようなことをするわけである」。

 横山講師は「死体であるから、反射も痛みもないわけだが、組織を切る時に、筋肉や脊髄神経が反射的に動くことがあるので、麻酔医による全身麻酔を必要とする」としました。
 これは「脳死判定には間違いがないから、脳死ドナーには脊髄反射しか起こらない、麻酔をかけるのは脊髄反射への対処」という主張です。「脳死判定には間違いがない・・・」という説明の妥当性については後で検討します。
 先に検討すべきことは、「死体」ドナーに薬物を投与することの妥当性です。薬は、人体に血流がある時に投与されることで全身にいきわたり効果を発揮します。しかし1997年の臓器移植法以前は、心臓が停止した死後の臓器提供しか許容されていなかった。移植用臓器を摘出する目的で、薬を投与される血流のある人体が、死体でしょうか?札幌医大や名古屋大学が、「死体」臓器ドナーに麻酔や筋弛緩剤を投与したというのは、人体に血流のある時点で臓器摘出目的の処置を開始したこと、不適切な死亡宣告でドナーの生存に必須の臓器を摘出したことを示します。

 

■臓器移植法以前の脳死臓器摘出報告例
 臓器移植法以前から、ドナーの心臓が拍動している時点で臓器を摘出する、あるいは脳死判定にもとづき人工呼吸器を停止する、あるいは三徴候死を観察せずに臓器を摘出することが行われてきました。1969年に開催された第1回腎移植臨床検討会(『移植』4巻1号、P17、1969年)で、東京大学第2外科の稲生は、こう喋りました。
Cadaver(死体)の場合ですが、最近アメリカに行っている方からのお手紙によりますと、向こうではいわゆるliving cadaver(生きている死体)という言葉がだいぶ出ているようです。実は私どもが1例ほかの病院でしたのがそれに該当するもので、私たちだけの合言葉かと思っておりました。ところが、アメリカではそれが非常に流行しておりまして、いわゆる living cadaver というものによって成績が著しく向上したということです。今日の会合は同士の集まりと申しますか、あまりジャーナリスティックな問題を取上げないと思いますので、あえて発言させていただくわけですが、今後は、やはり臓器の保存というような問題が現在の状態に留まる限りは、ischemic time(阻血時間)を短くするという意味で、いわゆる living cadaver ということが、表面的にいいか悪いかは別としまして、重要な問題ではないかと思います。私どもの具体例を申しますと、Hirntumor(脳腫瘍)でもう長い間寝ておりまして、1週間ぐらい前から意識が無い。家族も十分了承された上でそういうことがやられたわけですが、そういう意味で、皆様方にはある程度ご理解いただけると思います。社会的になるべくそういう方向に進めていきたいと、私自身は考えております。今後まだ社会的にいろいろ問題があると思いますが、それで比較的よくいきました例をもっておりますので、あえて発言させていただきました

 この当時、東大から腎臓移植の症例報告はありますが、すべて生体間移植です。ドナーのほとんどが血縁関係のない現代でいう病腎移植で、死体をドナーにしたという報告は東大はしていません。もちろん、living cadaver(生きている死体)をドナーにしたということを明確に書くわけにはいかず、仲間内の腎移植臨床検討会で話すだけにとどめたのでしょう。

 脳死状態の腎臓摘出の統計は、1986年の日本移植学会雑誌『移植』21巻2号に「わが国における死体腎提供の現況と問題点」として報告されます。1980年1月から1985年3月までに、92施設のうち、43施設が死体腎摘出を経験し、このうち22施設が脳死状態で腎を摘出していた。16施設がベンチレータ(人工呼吸器)をつけたまま摘出し、6施設がベンチレータを外して直ちに摘出していました。腎摘出314例のうち75例(23.9%)がベンチレータをつけたまま摘出し、21例(6.7%)がベンチレータを外して直ちに摘出でした。この報告は、「ベンチレータをつけたまま摘出」と「ベンチレータを外して直ちに摘出」が「脳死状態における摘出に該当する」としていますが、日本臓器移植ネットワークの時代になると、「人工呼吸器を外して心停止を待ち腎臓摘出」も一般の脳死判定を前提に行うようになりました。1986年の報告では122例(38.9%)が「人工呼吸器を外して心停止を待ち腎臓摘出」でしたので、1980年代前半の時点ですでに、死体腎提供の7割が脳死臓器摘出だったといえます。

 

次からは法的脳死判定手続きが開始されてからの、麻酔や筋弛緩剤の投与例です。

■法的脳死・臓器摘出1例目(高知赤十字病院・1999年2月28日)
・高知新聞 「生命の行方 検証・脳死移植12 死は見極められたか(下)」http://www.kochinews.co.jp/rensai99/seimei12.htm 
 2月28日午後3時7分に高知赤十字病院で始まった摘出手術で、ドナーの血圧は急上昇した。手術前に120だった最高血圧が150近くになった。現場の医師は麻酔をかけ、血圧をコントロールした。
 「脳幹の機能の一部が残っていたのではないか」
臓器移植法の在り方に疑問を持つ医師の中に、そう指摘する声がある。逆に脳幹の機能ではない、と否定する別の医師もいる。真相はどうなのか。
 大まかには、血圧は「血管を流れる血の量」と「血管の太さ」で決まる。血圧が上昇するには、心臓が鼓動を早めて血流量が増えるか、もしくは血管が細くなるか、の二つになる。
 心臓生理学が専門の大学教授は次のように言う。
「心臓と血管を神経でコントロールする『心臓血管中枢』は、脳幹の延髄にあることが確認されている。感情によって鼓動が早まる時は、(さらに脳幹より上の)視床下部からも命令が出る」
 ただし、とこの医師は続ける。
「手術中に血圧が上昇したことで、脳幹の一部が生きていたとすぐに断定はできない。副腎(じん)ホルモンの働きや、手術中に神経を傷つけたかどうかなど、脳幹以外のさまざまな要因が血圧には関係している」
 つまり患者の脳幹の機能の一部が残っていたかどうかについては、現時点で明確な答えがない。ただ問題は、機能の一部が残っていた可能性が消えないことである。

 

■法的脳死・臓器摘出2例目(慶応大学病院・1999年5月12日)
・川瀬 斌:「臨床の現場から 脳死判定医が語る臓器移植」(『中央公論』150-160、1999年9月号)
 心臓摘出の部分は日本臓器移植ネットワークに、麻酔代と手術にかかわった医師五人、看護婦3人という最小限の人件費だけをあとで請求しました・・・

・Aikawa Naoki:“A 35-year-old Man with Cerebral Hemorrhage and Pheochromocytoma:The Second Brain-dead Organ Donor in japan”(大脳出血及び褐色細胞腫をもった35歳男 日本における脳死臓器提供第2例)、“The Keio Journal of Medicine”49巻3号p117~p130、2000年
タケダ医師:(肝および副腎近傍の腫瘤を良性か悪性か調べるための生検時に)血行動態は、非常に激しく変動しており血圧はある時は210/120mmHgに上昇し、直後には80/75mmHgまで低下したことが記録されています。 心拍数は一般的にはだいたい100拍/分ですが、手術中には140拍/分まで上昇しています。しかし、こういった事態は、我々が何も対処を行わずにいた間に起こったわけではありません。我々は様々な降圧剤、昇圧薬を投与しましたが、血圧の異常な変動は収まりませんでした。 さらに、脳死の患者さんに対して麻酔が必要かどうかは、興味ある点でしょう。通常は筋弛緩薬のみを投与します。しかし、この患者には血圧コントロールのために一定量の吸入麻酔薬が必要でした。
アイカワ医師:2回目の脳死判定をもって、脳死患者となりました。引き続いて行われた臓器摘出手術やその手技における患者のマネージメントに関わる管理は、いくらかの麻酔薬は使用されますが、「麻酔管理」と呼びません。「ドナーの呼吸・循環管理」 と呼びます。

 

 次の法的脳死・臓器摘出3例目は、筋弛緩剤だけで麻酔はかけなかったという報告です。

■法的脳死・臓器摘出3例目(古川市立病院・1999年6月14日)
・高内裕司:「脳死臓器移植における臓器摘出術のドナー管理」日本麻酔学会第47回大会、2000年、演題番号:O-19.4 http://kansai.anesth.or.jp/kako/masui47/O/10986(このHPは公開終了)
 術中のドナーの全身管理には麻酔薬は用いず、筋弛緩薬(ベクロニウム)の投与で手術侵襲に対する体性反射を遮断した。

 

■法的脳死ドナーファミリーの後悔
 この時期に臓器を提供した家族が後悔していることも報告されています。
・山崎吾郎(日本学術振興会特別研究員):「脳死 科学知識の理解と実践」(『人類学で世界をみる』ミネルヴァ書房、p39~p57、2008年)
 Pさんは、娘を病気で亡くした。その当時、自宅で気分が悪いという娘を急いで救急車に乗せたが、病院に着いたときにはすでに意識もなくなっていた。医者からは脳に大きな血の塊ができており、手術をしてもこれを取り除くことはできないだろうという説明を受ける。当時はちょうど、日本の法律の下ではじめて脳死者が出たと騒ぎになっていた時期であったため、そのことが頭をよぎったPさんは、思いつめたように「ひょっとして脳死でしょうか」と医者に尋ねた。
 医者からは、「そうですね」という返事が返ってきたという。元気だった頃に、万が一のときには脳死からの臓器提供をしてほしいと娘が話していたことを知っていたPさんは、このとき医者に、娘が臓器提供意思表示カードを持っていることを告げた。そして、娘の意思ならばと、臓器の提供に同意したのである。その当時のことを振り返りながら、Pさんはこう話している。
 難しいことはわかりませんけども、脳死っていうのは、死んでいるけれど生身でしょう?だから、手術の時は脳死でも動くんですって。動くから麻酔を打つっていうんですよ。そういうことを考えると、そのときは知らなかったんですけども、いまでは脳死からの提供はかわいそうだと思えますね。手術のときに動くから麻酔を打つといわれたら、生きてるんじゃないかと思いますよね。それで、後になってなんとむごいことをしてしまったんだろうと思いました。かわいそうなことをしたなぁ、むごいことをしたなぁと思いました。でも、正直いって、何がなんだかわからなかったんですよ。

 

■法的脳死・臓器摘出8例目(福岡徳州会病院・2000年7月8日)
・三浦 泰:「脳死臓器提供者の麻酔経験」(『麻酔』50巻6号、p694、2001年)
 ベクロニウム(筋弛緩剤)4mgを静脈注射した。臓器摘出手術の開始直後に一時的に高血圧となったため、ニトロプルシド(血管拡張薬)とイソフルラン(吸入麻酔薬)0.5%を数分間投与した。

 

■法的脳死・臓器摘出11例目(川崎市立川崎病院・2001年1月21日)
・西部伸一:「臓器移植と手術室(一般病院麻酔科の立場から)」(『日本臨床麻酔学会誌』21巻8号、S181、2001年)
 臓器移植法に基づく臓器摘出手術の経験のある施設から適宜アドバイスを得ることができたため、比較的支障なく臓器摘出手術の麻酔へかかわることができた。

・大島正行(日本医科大学付属第二病院麻酔科):<脳死ドナー臓器摘出の麻酔 あらためて感じたコミュニケーションの重要性~「命のリレー」に携わって>『LiSA』(11巻9号、p960~p962、2004年)
 川崎市立川崎病院麻酔科の藍公明先生に電話して、2001年の脳死ドナー臓器摘出の麻酔の実際について教えていただいた。(中略)麻酔については、コーディネーターおよび術者から教えていただけるとのことで少しばかりほっとした。また、脳死とはいえ、ドナーには脊髄反射が残っているため、筋弛緩剤が必要であることも教わった。実際の麻酔では、酸素・亜鉛化窒素・イソフルランとフェンタニル(鎮痛剤)で麻酔管理を行ったとのことであった。

 

なぜ、「脳死患者は反応しない」と知っているアトロピンを投与し、効いたのか?
 次の法的脳死・臓器摘出29例目(日本医科大学付属第二病院・2004年5月20日)では、極めて異様なことが起こりました。脳死判定の補助検査に使われるアトロピンという薬剤があります。この薬剤を投与して脈拍が増加すると、脳死ではないと判断されます。この脳死患者に効かないと周知されているアトロピンが、臓器摘出時に投与されて効いたのです。

 臓器提供施設の日本医科大学付属第二病院の大島正行氏は「脳死ドナーの麻酔管理経験、『日本臨床麻酔学会誌』(日本臨床麻酔学会第24回大会抄録号)、S59、2004年および付属CD\endai\1-023.html」で、こう書いています。「フェンタニル0.1mg、ベクロニウム20mgで麻酔導入し、酸素-イソフルランで維持した。各摘出予定臓器周囲の剥離と臓器の視診、触診後、ヘパリン20,000uを静注し、灌流用カテーテルを挿入した。その際徐脈を来したためアトロピン0.5mgを静注した。脳死後も脊髄反射が残存するため、筋弛緩薬は必須である。胸骨縦切開時の血圧上昇時にフェンタニル、イソフルランを使用した。徐脈時にはアトロピンは無効とされるが、我々の症例では有効であった」と。脳死ドナーの徐脈にアトロピンが効いたことを、わずか6行の抄録に書いていますから、投与した本人も異常さに気づいているのでしょう。

 アトロピンは副交感神経遮断剤で、迷走神経性徐脈に適応があります。心臓迷走神経の中枢は延髄にある。延髄は、脳死判定基準を満たすなら機能が廃絶しており、アトロピンは効かないはずです。脳死判定の補助検査にアトロピンテストを行なう施設もあります。患者の副交感神経系が正常=延髄が機能していて脳死ではないならば、アトロピンを1.0~2.0mg、静脈に注射すると頻脈(毎分35~40拍の増加)が起こります。大島氏ら麻酔の専門医で脳死判定の知識もあるはずで、「アトロピンに脳死患者は反応しない」と知っていたはずです。実際に臓器摘出に関与する前に「アトロピンは脳死ドナーには効かないからほかの薬を使え」と書いた文献を読んでいたと見込まれます。
 大島氏は『LiSA』11巻9号で、こう書いています。「5月18日、脳死判定を行う予定との緊急連絡を受けた。医学中央雑誌で“脳死ドナーの麻酔管理”を検索したが、4件しかヒットせず、慌てて雑誌の特集を入手した。それは大阪大学の林助教授が書かれていた
 では、その林 行雄氏はなんと書いていたか。『臨床麻酔』24巻3号p513~p518では「脳死患者になんらかの不整脈がみられることは珍しくない。(中略)とくに徐脈はアトロピンには反応しないので、直接心臓に対して作用するドパミンやイソプロテレノールを用いる。臓器摘出術の手術刺激に伴い血圧、脈拍の上昇がみられることはよく知られている。そのメカニズムは脊髄反射が関わっているものと思われるが明らかではない。手術刺激に伴うこれらの循環動態の変動には随時セボルフランなどの吸入麻酔薬を用いて対処するのが適当と考える」と書いています。つまり「脳死ドナーの徐脈にアトロピンは反応しないから、ほかの薬を使え」と明確に書いているのです。

 では、どうして日本医科大学付属第二病院は「脳死患者は反応しない」と知っているアトロピンを投与し、効いたでしょうか?脳死ドナーにアトロピンが投与されて効いた現象について、私は「脳死ではなかったことを示すのではないか」と心臓電気生理学が専門の藤田保健衛生大名誉教授の渡部良夫先生に聞きました。結論は「心臓の付近にはいろんな神経がきていて、どのような刺激が起こったのかわからないから断定はできない」とのことで、高知赤十字病院の第一例目における説明と似たようなものでした。
 生理的に様々な可能性を考慮すると、このような説明にならざるをえないのでしょう。しかし、なぜ脳死ドナーには効かないと周知されている薬剤があえて選択されて、実際に効いたのか、という疑問が残ります。
 この時の心臓移植は国立循環器病センターで行われましたから、アトロピンを投与する指示は、国立循環器病センターから来た心臓を摘出する医師の指示だったのでしょう。この移植医は、ほかの脳は正常な患者に対する心臓手術と同じ感覚で「徐脈が起こったらアトロピンを使う」という意識だったのか。しかし欧米への留学で、脳死ドナーからの心臓摘出経験は一定数あるはずです。「脳死ドナーにアトロピンは効かない」という認識は当然あったのではないか。それとも欧米では、アトロピンが効く、実は脳死ではない患者も脳死として心臓を摘出していた経験から、この患者にも効くと判断し、脳死ではないと知りつつアトロピンの投与を指示したのか。
 麻酔科医の対応にも疑問があります。大島氏は、事前に脳死ドナーの徐脈にアトロピンは反応しないと知っていた。それならば、移植医からアトロピンを投与しろとの指示があった時に、「この患者は脳死ですからアトロピンは効かないはずです。ドパミンやイソプロテレノールを使ってはどうでしょうか?」という提案はしなかったのでしょうか?

 

筋弛緩剤のみの臓器摘出

 次の法的脳死・臓器摘出32例目は、ドナーにガス麻酔も予定していたけれども筋弛緩剤だけで済んだ、という報告です。 

■法的脳死・臓器摘出32例目(聖隷三方原病院・2005年2月15日)
・高田知季(聖隷三方原病院麻酔科):「一般病院での脳死判定 実情、考え方」(『臨床麻酔』30巻4号p635~p641、2006年)
 術中管理では循環動態に関して、昇圧を塩酸ドパミンの持続静注と輸液、輸血で、降圧をセボフルラン(吸入麻酔剤)吸入で、脊髄反射などの体動に対してはベクロニウムブロマイド(筋弛緩剤)静注で対応することにした。しかし、セボフルランの使用には至らず安定した循環動態が得られた。

 

 次の法的脳死・臓器摘出39例目はガス麻酔をかけたという報告で、脳死ドナーも様々な生理状態のあることが予想されます。

■法的脳死・臓器摘出39例目(浜松医科大学医学部附属病院・2005年10月14日)
・木下恵理:「本院における脳死ドナー移植の経験」(『日本臨床麻酔学会誌〈日本臨床麻酔学会第26回大会抄録号〉』S208、2006年)
・木下恵理:「本院における脳死の麻酔」(『麻酔』56巻9号、p1119、2007年)
 ドナーの麻酔は少量の吸入麻酔薬と、筋弛緩にて行った。

 

 法的脳死・臓器摘出52例目は、日本国内では初めて、臓器摘出時の麻酔管理記録=血圧・心拍数、投薬量の変化をグラフ付きで詳細に報告しています。

■法的脳死・臓器摘出52例目(札幌医科大学付属病院・2007年2月25日)
・山本清香:「レミフェンタニルを使用した脳死ドナー患者の麻酔管理」(『臨床麻酔』31巻8号、p1353~p1355、2007年)
 筋弛緩剤ベクロニウム5mgを単回投与、5mg/hrで持続投与。長短時間作用性鎮痛剤レミフェンタニルを0.06μg/kg/min持続投与で開始、毎分0.1~0.3μg/kg/minの範囲で循環を管理した。

 

■法的脳死・臓器摘出71例目(獨協医科大学附属越谷病院・2008年5月14日)
・神戸義人:「獨協医科大学での初めての脳死からの臓器摘出術の麻酔経験」(『Dokkyo Journal of Medical Sciences』35巻3号、p191-195、2008年)
 有害な不随意運動を防ぎ、十分な術野確保のためにベクロニウム5mgを初回ボーラス投与し、その後は1mg/hrで持続投与した。麻酔維持は、純酸素とレミフェンタニル0.2μ/kg/minの持続静注投与で行なった。
 臓器摘出術中の血圧上昇に対して“脳死”そのものに対する疑問が議論されているが、現在の脳死の定義に“呼吸中枢の機能廃絶”はあるが、“疼痛刺激に対する循環動態の消失”が含まれていないために現段階では容認されている。

 この『Dokkyo Journal of Medical Sciences』35巻3号は2008年に出版されましたが、インターネット上の公開は臓器移植法改定後になりました。脳死ドナーに麻酔をかけていることを知られることを避けたのでしょう。

 

■法的脳死・臓器摘出82例目(手稲渓仁会病院・2009年11月23日)
・小嶋大樹:「脳死ドナーからの多臓器摘出手術の麻酔経験」(『日本臨床麻酔学会誌』30巻6号、S237、2010年)
 症例は20歳代女性、縊頸CPAにて自己心拍再開後に救急搬送。入院10日目に法的脳死と判定、入院11日目に多臓器摘出術が予定された。
 入室時バソプレシン2E/h投与で血圧127/66、脈拍80であった。導人はベクロニウム0.2mg/kg、維持はベクロニウム0.1mg/kg、レミフェンタニル0.05~0.3γで行った。

 

脳死ドナーに吸入麻酔薬は使わないことをマニュアル化
 さて臓器移植法が改定されました。改定論議の際に、脳死ドナーに麻酔をかけていることが指摘されると、移植医らは「脊髄反射への対応で投与している」と脳死判定は誤らないとの前提で断定的に説明したり、「法的脳死臓器摘出の始まった頃は麻酔をかけていたが、今はかけていない」と事実に反することを言ったり、「麻酔をかけなくとも臓器摘出はできる」と主張しました。
 そして2010年7月に作成された「臓器提供施設の手順書」はhttp://www.jotnw.or.jp/jotnw/law_manual/pdf/plant.pdfは、p32で「吸入麻酔薬は使用しない」としました。
 麻酔は、ガス状にして吸入させる方法以外に、点滴または注射方式で投与する方法もあります。この「臓器提供施設の手順書」の書き方では、近年、頻繁に使われるようになった静脈投与方式のレミフェンタニルは制限していないことになりますが、一般に麻酔科医の間では「脳死ドナーには、どの麻酔薬の投与もご法度、使ってはならない」と周知されるようになりました。2013年5月に開催された日本麻酔科学会第60回学術集会では、大阪大学医学部付属病院麻酔科の林 行雄氏と本田 洵子氏が「脳死ドナーの管理」について招請講演を行いました。主要部分は以下です。 

・林 行雄、本田洵子(大阪大学医学部付属病院麻酔科):「脳死ドナーの管理(臓器摘出にかかわる全身管理)」(『麻酔』62巻増刊号、S44-S51、2013年)
 麻酔管理という言葉を使ったり、麻酔薬を投与するのは脳死の基準を満たしてもドナーが本当は死んでいないということではないか、という誤解を招く危惧がある。実際には麻酔薬を使用せずに循環管理はできるはずであるので、そのように行うべきである。ただ、麻酔科医は麻酔薬を用いての循環管理に手馴れているので、その一つの有力な循環管理の手段を矢うことに抵抗を覚える方もおられるであろう。ただ、循環管理のために麻酔薬を投与することで生じる誤解をたとえそれが医学的に正しいとしても、国民の方々に理解していただくことは現状では容易ではない。“李下に冠を正さず”とするのが現実的であろう。
 低血圧は移植予定臓器にダメージを与えかねない(中略)、血圧の上昇によるデメリットを挙げるなら、おそらく脳内出血発症のリスクではないかと思われるが、すでに脳死であるので、その懸念はいらない。つまり、脳死ドナーでは高血圧によるダメージは軽微であり、血圧を厳密に下げようとすることでかえって低血圧になるリスクのほうを考慮しなければならない。


 以後は、臓器摘出時に筋弛緩剤だけで終えたとする報告ばかりです。

■法的脳死・臓器摘出106?例目(札幌医科大学付属病院・2010年11月26日?) 麻酔62巻6号の報告は、実施日が記載されていないため何例目か確定できませんが、106例目の可能性が高いと思っています。
・田辺美幸:「非侵襲的全ヘモグロビン濃度測定が有効であった脳死下臓器提供の1症例」(『麻酔』62巻6号、p699~p701、2013年)
 60歳代女性、体重52kg。CTでクモ膜下出血とびまん性脳浮腫を認めた。家族に臓器提供の意思があり、第4病日に脳死下臓器摘出を予定。臓器摘出術中の呼吸循環管理は、ロクロニウム50mgを投与して人工呼吸を継続した。執刀後も、麻酔や麻薬は使用しなかった。

 以下が、このドナーの術中経過です。日本麻酔科学会第60回学術集会で林氏が「血圧の上昇によるデメリットを挙げるなら、おそらく脳内出血発症のリスクではないかと思われるが、すでに脳死であるので、その懸念はいらない。血圧を厳密に下げようとすることでかえって低血圧になるリスクのほうを考慮しなければならない」と講演したとおり、低血圧になることは濃厚赤血球やアルブミンの投与で抑制されていますが、高血圧になることは麻酔をかけないからか防ぐのは難しい印象です。

 

■法的脳死・臓器摘出207例目(盛岡赤十字病院・2013年1月31日)
・西嶋茂樹:「脳死下臓器摘出術の管理経験」(『日赤医学』65巻1号、p182、2013年)
 60歳代、ドナーカード所持の女性、くも膜下出血後の再出血による脳死管理経過:術中は麻酔薬と麻薬は使用せず、筋弛緩薬は脊髄反射防止のために使用した。血圧低下時には濃厚赤血球と血液製剤の急速投与で対処して臓器血流維持のためにカテコールアミンの使用は最小限とした。使用した濃厚赤血球6単位、5%アルブミン1750mlであった。

 

麻酔科医の懐疑論=痛み刺激に反応しているじゃないか!

 臓器摘出に協力する麻酔科医自身から、脳死判定に対する懐疑論が出ています。

・田中和夫(大阪市立大学・集中治療医学):「オーストラリアのおけるドナー管理と臓器摘出術」(『ICUとCCU』25巻3号、p161~p165、2000年)
 ドナー管理を行っているときによく経験されることであるが、臓器摘出術中の侵害刺激に対応して血圧が上昇する。このことから“脳死”そのものに疑問を投げ掛ける意見がある。しかし、現在の脳死の定義に“呼吸中枢の機能廃絶”はあるが、“疼痛刺激に対する循環変動の消失”が含まれていないため現段階では容認されるべきであろう。今後の論を待つ必要がある。

 脳死判定時に深昏睡を確認しています。それはどのような方法か、日本臓器移植ネットワーク制作の動画「法的脳死判定の手順」http://www.jotnw.or.jp/jotnw/law_manual/mov/jot_movie2.wmv がありますので、該当の約2分間の部分を見てもらいます。

 上映

 このようにボールペンで指を押したり、目の上を圧迫して反応がなければ深昏睡と判定しています。しかし、こんなお優しい疼痛刺激には反応しないけれども、もっと激烈な患者を傷つける検査を行えば反応する患者のいることが想定されます。2008年3月23日 NBCニュース 'Dead' man recovering after ATV accident http://www.nbcnews.com/id/23768436/#.UxweFrlWHIU によると2007年11月、オクラホマ州のザック・ダンラップさん(当時21歳)は、脳死で死亡宣告されたことが聞こえて「心の中は狂わんばかりになりました」と語っています。臓器摘出チームの到着寸前、従兄妹がダンラップさんの「足の裏をナイフで切る」「爪の下の柔らかい部分を、爪で刺激する」激烈な痛み刺激を与えて反応があることを証明して生体解剖を免れた。その後、社会復帰しました。
 対光反射も同じです。日本臓器移植ネットワーク制作の動画では、小さな光量の弱いペンライトでごく短時間、光を当てて反応の有無を見ています。ところが、より長時間、強い光を当てると反応する患者のあることが報告されています。(この部分の出典はhttp://www6.plala.or.jp/brainx/trick_determination.htmに掲載)
 脳波測定も同じです。頭皮の上に電極を置いて測定できなくとも、頭蓋骨に穴を空けて電極を入れると脳波が測定できることがある。
無呼吸テスト60mmHg超の自発呼吸例 脳死判定の骨格、最も重要な検査とされる無呼吸テストも同じです。脳死判定基準では、人工呼吸を停止して動脈血中の二酸化炭素分圧が60mmHgになるまでに自発呼吸しなければ無呼吸と判定しています。ところが日本大学付属病院では64.7mmHg、72.2mmHg、帝京大学医学部附属市原病院では66.4mmHg、京都大学付属病院では86mmHg、米国ワシントンDCのChildren‘s National Medical Centerでは91mmHg、日本医科大学付属病院では肺胞内二酸化炭素分圧が100mmHg超、米国ニュージャージー州のCooper Hospitalでは112mmHg、公立昭和病院では119.6mmHgで呼吸をしました。しかし、長時間、無呼吸テストを行うと二酸化炭素が溜まり過ぎて昏睡状態を強める。血液が酸性化して、酸素が供給できなくなるため患者を傷つけ生理状態を悪化させます。
 いずれも患者を傷つけるほどの検査を行えば、患者の脳は機能していること、脳死判定が誤っていることが証明されるかもしれません。ただし、患者を傷つけるほどの検査を行えば、当然のことながら脳死ドナーは減る、長時間の無呼吸テストを行えば患者の生理状態を悪化させて移植用臓器にも悪影響を与えるため、臓器摘出目的で脳死判定を行う以上、そのような検査への見直しは行われないでしょう。

 

脳死判定を誤っている可能性
 脳死判定の精度は歴史的に低下し続けています。脳死判定基準を満たしても、心停止(心臓死、全細胞死)を予告できない、脳機能が復活する患者も脳死と判定されています。
 脳死と見込まれる時点から心停止までの時間は、1902年の1例目は23時間、これは脳死概念の発生以前の症例ですが、脳膿瘍で自発呼吸が停止し人工呼吸で23時間にわたり心臓の拍動を維持した症例が報告されています。1970年代になると、脳死と判定された後に心停止まで5日以内、1980年代になると1ヵ月以上にわたる生存例も報告されるようになりました。1985年の厚生省脳死判定基準作成者として名を残す竹内一夫は、2002年に“脳死状態でも積極的に呼吸・循環機能を管理し、栄養管理と感染予防に努力すれば、全身状態が維持される限り心拍動を維持することは可能である。したがって、脳死判定から心停止までの期間は、脳損傷よりも全身状態の維持如何に最も関係が深いと言えよう。”と書きました。
 同じく脳死判定基準の作成に関与した武下 浩は2003年に、“脳死論議の初期、なぜ脳死状態になると、短期間のうちに心停止にいたることが重視されたのか。当時としては事実であり、脳死を人の死とする説明に使いやすかったからである。”と書いています。
 2006年、竹内一夫は、“最近の高度集中治療の進歩によって、以前より長く脳死状態を維持することも時には可能になった。もともと種々の合併症に悩まされる脳死判定から心停止までの期間の長短は、すでに廃絶した脳の機能の問題ではなく、全身的要因に左右されることになる。したがって成人に比べて基礎疾患の少ない小児では、脳死の期間が有意に長いことが知られている。(中略)脳死状態でも循環、呼吸、内分泌機能が良好な状態に保たれていれば、心停止は何とか避けることができる。そして多くの臓器はそれぞれ独自のペースメーカーを持っているので、栄養と酸素が補給されている限り機能し続けることができる。”と書きました。こうした竹内氏の認識に、他の医師は「昔からわかっていたことをようやく認めた」と評しています。

 

脳死判定と心停止の断絶
 これは私の意見ですが、現代では脳死判定基準を満たすことと、心停止(心臓死、全細胞死に至る状態)との関係は断絶していると思います。脳に大きなダメージを受けたことが原因で自力で呼吸をできなくなり、人工的に生命、心臓の拍動を維持していたけれども、結局、心停止に至ったという人ももちろん発生しつづけていますが、すべての患者が漏れなく心停止に至るという状態ではなくなった。脳死判定基準を満たした患者の自然経過が、脳死概念の発生当時と異なってきたといえるでしょう。
 心臓移植までみると、脳死判定の精度低下は、早期から始まっていると指摘できます。なぜ、「脳死と判定された患者は心停止を免れない」とされるのに、その心停止を免れないはずの脳死ドナーから摘出した心臓を移植すると、移植された患者は長期に生存できるのでしょうか。脳死と判定された患者の生命維持に努力し、大量の昇圧剤を投与したけれども心停止に至った患者はいます。しかし、大量に昇圧剤を投与された心臓を摘出して移植しても、機能不全を起こす可能性が高い。このため、過去に心停止して蘇生した経過があったり昇圧剤を大量に投与された患者を、心臓の提供者にすることは慎重に検討されます。移植用に心臓を提供可能な脳死ドナーは、そもそも自然経過では心停止を避けうる患者を含んでいると見込まれます。
 脳死判定後の長期生存例があり、脳死は人の死とする根拠が疑われるなか、脳死判定を継続したい人はこういいます。「脳死判定され1ヵ月以上生存する・心停止に至らない長期脳死症例であっても、結局は心停止に至っているではないか」と。これに対して私は、脳死判定基準を満たした患者の自然経過を検討するには1週間が限度だろう、と思います。1週間以上生存しているならば、元の脳死と判定される原因となった疾患とは別の原因、人為的な治療撤退で死亡する患者が次第に多くなり、自然経過の検討が難しくなることを指摘します。
 脳死と判定されることは、周囲の者にとってはどんな意味があるのでしょうか。医療者は、治療を尽くした、回復不能と判断したから脳死判定を行う。患者家族は、最も重症の脳死と宣告され、「意識は回復しない、近いうちに心停止に至る」と説明される。数日経つと看病疲れもあって家族の心理に変化が現れることが多い。なかには、あきらめる家族もいる。その様子をみて、医療者も治療そしてケアを非積極的に行うようになり、それが心停止をもたらしたり、自然経過を早める可能性があります。
 臓器移植法を問い直す市民ネットワークが編集した「脳死・臓器移植Q&A50」のQ18では、脳死判定された患者に対して、家族に無断で昇圧剤をニセの薬・ダミーに変えたり、人工呼吸器の設定を不適切なものに変更した施設があったこと。臓器提供を拒否したところ、輸液が栄養性の低いものに変えられ、呼吸管理も不十分にされて、身体中むくんで悲惨な外観になって死んだ患者のあったことを載せています。現実の医療現場では、たとえ患者家族が絶対助けて欲しいと思っていても、医療者が無断で死に至らしめる行為を行った、そのような施設もあると見込まれます。その意味で、脳死判定基準を満たした後の患者の自然経過を検討する場合に、1週間が限度だろうと思うわけです。

 

 (次ページに続く


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