“棄権”が危惧される中、2日目終了後も練習場に向かった
ボロボロになっても、西郷真央選手は最後まで勇敢に戦い続けました。
山下美夢有選手の優勝で幕を下ろした国内女子ツアー最終戦、JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップは、今季の優勝者を中心に、今季結果を残してきた選手40人だけが出場した特別なトーナメントです。
予選落ちはなく、初日のペアリングはランキング順の2サム。上位の選手ほど遅い組でスタートします。今年から賞金ではなくポイント制のメルセデスランキングが採用され、ランキング2位の西郷選手は、2週前に早くも女王タイトルを決めた山下選手と最終組でプレーしました。
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2022年の西郷選手は、開幕戦ダイキンオーキッドレディスで初優勝した後、10試合で5勝と、他の選手たちを大きく引き離すスタートダッシュを見せました。けれども、その後は失速。シーズン中盤以降、優勝はなく、苦しい戦いが続いていました。
それでもランキング2位を守り抜いたのですから、開幕からのペースがいかにすごかったか分かるというものです。
ただ、調子がいいとは言えない中、好調の山下選手と2人でのプレーは、とてもつらいものとなりました。ショットが定まらず苦闘する西郷選手に対し、山下選手は6アンダー・66。11オーバー・83の西郷選手とは17ストロークの差が開き、調子の良し悪しがハッキリと結果に出てしまったからです。
2日目以降は成績順。下位の選手から2サムでスタートしていきます。40位で最下位の西郷選手は朝一番の組で39位の植竹希望選手とプレーしたのですが、この日も安定したプレーとは程遠く、ショットは右に左に大きく曲がります。前日に続く11オーバー・83で通算22オーバー。首位のイ・ミニョン選手とは33打差、39位の植竹選手とも15打の大差が開いてしまいます。
通常の試合なら、間違いなく予選落ちです。ただ前述のように予選落ちがないため、どんなに結果が悪くとも4日間プレーすることになります。
もっとも、4日間のプレーを避ける手段も、ないわけではありません。決して褒められたことではありませんが、こんな風にスコアがボロボロの場合、ケガや病気を理由に棄権してしまう例は少なくありません。俗に“スコア性棄権”などと言われるものです。
西郷選手がプレーをやめてしまうのではないか、という危惧が、関係者の間で出ていたのも事実です。それでも西郷選手は、2日目終了後もすぐに練習場に向かいました。これなら、本当のケガや病気にならなければ、気持ちだけで棄権することはないだろうと思われる練習ぶりでした。
「原因は全部分かっています。でも、できないんです」
取材を続けていく中で、試合会場という場において、調子のいい選手からは“オーラ”を感じることが少なくありません。個人的な感覚ですが、強烈な存在感を放っているのです。常に周囲に人がいるということもありますが、たった一人でいてもあまり変わらない存在感は、自信を伴ったエネルギーから来るのではないでしょうか。
対照的に、同じ選手でも調子が悪くなると、その“オーラ”が失われることも多々あります。一生懸命その人を探しているときでもなかなか見つけられなかったりします。
見つけてあいさつをしても伏し目がちだったり「話しかけてほしくない」という雰囲気を出していたりなど、さまざまな理由によって、自信を失い、存在感をできるだけ出したくない……。そうした心の中の思いが“オーラ”を消してしまっているのでしょう。
さて、JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップの西郷選手は、4日間で通算35オーバーを叩き、39位の選手と24打も差のあるブッちぎりの最下位でした。それでも、完全に“オーラ”がなくなることはなかったようです。
そのことは、最終日終了後には、シーズン締めくくりの取材に対し、きちんと最後まで受け答えしたことでも伝わってきました。
開幕からショットが落ち着いていなかったこと。優勝した試合でもティーショットは曲がっていたけれども、グリーン周りでスコアがつくれていたこと。首を寝違えて2週間休んだのをきっかけにスイングを変えなくてはならなくなったこと。日本女子オープンから逆球で悩んでいたこと。今はティーショットに恐怖があること。この試合ではドライバーを握っていないこと……。
その上で「原因は全部分かっています。でも、できないんです。何を意識したらいいのか」とも口にしました。
スイング改造、クラブの選択など、さまざまなきっかけで“迷路”に入り込む例は、枚挙にいとまがありません。そこから抜け出した人もいれば、抜け出せずに消えていった人もいる厳しい世界です。
正解は一つではなく、西郷選手が現在しようとしていること、そして向かっていく方向がどうかについても、まだ分かりません。
「やりたくないと思ったのは今週くらいです」
唯一、ハッキリしている事実は、西郷選手は決して逃げずに、最後まで試行錯誤を繰り返したということだけです。
「オフに入れてよかったな、と思います。1回クラブを握らない時間をつくってからやりたいです。(ゴルフを)やりたくないと思ったのは今週(リコーカップ)くらいです」と言い切って、西郷選手はシーズンを終えました。
迷路に入り込み、精神的に追い詰められて、再び立ち上がった選手の口から「ゴルフだけが人生じゃないと思ったら気持ちが楽になった。人生の一部にゴルフがあると思えた」という言葉を聞いたことがあります。言葉の細かいディテールは違っても、大要としては似た話を耳にしたことは、1度や2度ではありません。
西郷選手も含めて、現在ツアーで戦っている若い選手の多くは、ジュニア時代からほぼゴルフ一色の生活を送ってきています。“ゴルフだけが人生”と考えてもおかしくない状況にある選手だらけです。
もちろんそれくらいの気持ちでなければ、プロとして第一線で戦うことはできないのも確かです。それでも、ゴルフは人生の中の一部だということを、心のどこかに留め置いてほしいと思います。逃げるのではなく、しっかりと自分自身と向き合うために。
取材・文/小川淳子ゴルフジャーナリスト。1988年東京スポーツ入社。10年間ゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材する。1999年4月よりフリーランスとしてゴルフ雑誌やネットメディアなどに幅広く寄稿。
小川淳子(ゴルフジャーナリスト)
以上、e golf
セゴドンの復活が楽しみです。
21歳で大きなスランプに陥ってしまい、どんなにして這い上がってくるのか?
神様が与えたドラマが待っています。
初年は、2位が続き、優勝できない症候群でしたが、2年目は10戦のうち5割優勝ということを成し遂げました。
しかし、ゴルフは生き物、狂い始めたら最終戦で+35の最悪の成績です。
来シーズンはどうなるのか?
今、貯めているマグマが爆発するのか?楽しみです。
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