おもろい一瞬

2017-02-28 10:48:48 | 独り言
エディット・ピアフの歌を聞きながら、去年送って頂いた詩誌「RAVINE」200号を開いていた。1961年の創刊、55年の歳月を編んで来られた詩人の方々に敬意を表します。私がこの詩誌から感受した「詩の空間」はさまざまであり、折々に言葉の鮮度を味合う空間でもありました。今号の薬師川虹一氏の詩「リンゴの花」を今面白く読んだところです。

    リンゴの花


    いったいわし
    何のために生まれてきたんやろ
    そんなこと考えても
    しゃあないとは判ってるにゃけど
    近頃時々そんなこと考えるんや
    お前そんな時あらへんけ
    終末が近づいて来たんやろか
    近頃季節も変やしなあ

    鉢植えのひめリンゴが
    暑さに負けて枯れたとおもてたら
    奇麗な緑の芽をふき出しよってなあ
    なんと花まで付けよった
    九月やで いま
    狂とるでホンマ今頃花付けて
    どないするちゅうねん
    一体何のため花付けてん
    なんぞしょおむないこと
    考えたんとちゃうけ
    わしといっしょやなあ

人間って瞬間瞬間に色々なことを考えて、考えては忘れている動物だと思います。真剣に考えなければいけないことを途中でやめてしまったり、どうでもいいことをウダウダ考えたり、この都合の良さが正常であるかもしれません。この詩の「一体何のため花付けてん / なんぞしょおむないこと」(しょおもないこと、だと思います・筆者)とは「いったいわし / 何のために生まれて来たんやろ」ではないでしょうか。そんなことを考えた自分を「九月やで いま / 狂とるでホンマ今頃花付けて」と花になぞらえる。人間の瞬間の考え事を遊び心のように揶揄した「わしといっしょやなあ」この言葉の鮮度に平服してしまいました。

陽射しの温かい穏やかな正午です。小腹もすきました
今流れている曲は「ミロール」
 Allez, riez Milord... さあ、お笑いなさい、ミロール・・・・
 Allez, chantez Milord... さあ、お歌いなさい、ミロール・・・・
 La...la...la...la...li... ラララ・・・・ラリ・・・・

                      (CD「エディット・ピアフ」対訳 橋本千恵子/大野修平)

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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共感します (ズー)
2017-03-02 07:51:06
ふと居合わせた見知らぬ隣の人の独り言を聞いているような詩ですね。
なにも力みが無くてすうっと胸に浸みこんできます。
たぶん共感するからです。

そもそも現代詩は難解で言葉の学問になってしまっている。それなりの読解力や想像が働かないと理解できないと、私は思っています。
誰が読んでもわかる詩は、もう語りつくされていて鮮度がないんでしょうか?
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雑句話乱 (tefutefu)
2017-03-02 14:24:55
書く側にも読む側にもある程度の読解力と想像力はあったほうがいいと思います。平たく好奇心と言った方がいいでしょうか。わかりやすい詩にするために説明になってしまうと、行間も間延びして言葉の鮮度が損なわれかねないという気もします。言語の持つ多様性によって、読む側に自由に想像してもらうスペースを残してみるのもひとつの方法と思っています。
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